第7話 弁当
「豹舞、お前抜け駆けしたのか…」
教室に着いて、速攻で俺は啓太に問い詰められていた。
「うん、豹舞君抜け駆けしたよ〜」
「ふわぁ!?」
すると突然、凛桜が後ろから抱きついてきて背中に肋骨の感触が。
正直、柔らかいどころか骨が当たって痛い。
「うんうん、女の子に向かってそれは失礼だと思うよ?」
「ちょっ!息!」
抱きつかれた体勢のまま首を絞められている。
胸が小さいなんて一言も言ってないのに、エスパーかよ。
「豹舞ぁぁ!!」
「いや、違うんだ、これは」
「なにも違わねぇだろぉ!」
凛桜が俺にじゃれついてきてるのを見て、啓太が血涙を流して叫んだ。
「豹舞君は私の命の恩人だから!なにがあっても豹舞君以外は選ばないよ!」
「どういう事だぁ!豹舞ぁ!」
「それは俺も知らねぇよ!」
凛桜が俺たちの交際を浸透させるための演技だとは言えど、恥ずかしい。
たださ、もう少しマシな嘘なかった?
「命の恩人だから!」は適当過ぎるって。
どっちかと言えば、あの高時給で雇ってもらえた俺からすれば凛桜が命の恩人だし。
「ね!豹舞君っ!」
「あ、ああ、そうだな」
めちゃめちゃ嘘だが、ここで頷かないと俺のクビが飛ぶため変なツッコミはせずに流した。
ーーーー昼休み
「1日まだ終わって無いのに猛烈に疲れたんだけど」
俺は人の居ない、自習室に座って凛桜と話していた。
いつも通り教室で食べようかと思ったら、男子が俺に親でも殺されたかの様な目を向けてきたので、自習室に逃げてきたのだ。
「あとさ、凛桜、もう少し上手な嘘付いてくれ、このまま下手な嘘付かれ続けるとカバーするのが難しい」
「豹舞君は命の恩人のやつ、本当に嘘だと思ってるんだ?」
「そりゃ、凛桜救った記憶ないもん」
「ふ〜ん」
伏せ目がちに凛桜がそう言った。
「てかさ、俺今気づいたんだけどさ、弁当無いんだけど」
「大丈夫!私が持ってきた!」
そう言って凛桜が桜柄の弁当箱と黒い弁当箱を取り出した。
「はい」
「おお、ありがとう」
すると凛桜は黒い弁当箱を俺に手渡してきた。
そして俺は一緒に渡された箸を手に持って弁当箱を開け、固まった。
そう、見た目がエグいのだ。
流石にご飯は普通に白米なのだが、おかずは真っ黒ソースのかかった何かと真緑色のソースがかかった何か。
多分だが、立花さんが作った料理ではない、となるとまさか……
「私が作ったんだけど、どう?」
凛桜だったぁぁ!
胸以外は全て完璧だと思っていたが、尋常じゃない程の料理下手なのが発覚した。
「う、うん、美味しそうだぞ」
「そう!なら良かった!」
そこでふと俺は思った、いつ俺の弁当作ったの?と。
俺は今朝、凛桜に叩き起こされた。
つまり、絶対に朝弱いであろう凛桜が朝早起きして作ったという事だ。
そして俺は凛桜が朝早起きして眠そうな目を擦りながら料理をしてる姿を想像した。
(なにがあっても全部食わないと…)
これは主従関係のあるなし関係無く、食べないとやばい。
「じゃ、じゃあ頂きます」
逃げるのは不可能なので、俺は早々に手を付けた。
俺は真っ黒なハンバーグを箸に取って、恐る恐る口に運んだ。
そして口の中でとんでもない味が炸裂……しなかった。
「美味い……マジで美味いな!?」
「でしょっ!」
この見た目で、美味いだと!?
この黒、原因がまさかのデミグラスソースだった。
そして急いで緑色の物も手につけると、ほうれん草のソースが大量にかかった焼き魚だった。
「うん、やっぱり欠点はあれしか無いんだな」
「あれってなぁに?」
「いえ、なんでもありません」
ふと口にしてしまったが、危うく凛桜をブチギレさせる所だった。
危ない危ない。
「そういえば、豹舞君、頑張ってね」
「なにを?」
「男子たちの目の敵にされてたじゃない?」
「誰のせいだと思っとんじゃ!」
今度は俺がキレる番だった。
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