第2話 約束
「もう麻薬の受け子でもやろうかな」
俺はそれからシフトが無い日の放課後、この前と 同じように教室で啓太とバイト先を探していた。
時間がなく、どうしても時給がいいのを選ばないと学業と生活の両立が難しくなるので下手に選ぶわけにもいかない。
そのせいで未だに決まっていなかった。
「マジでやめろよ」
「やる訳ないだろ、なに真に受けてんだ」
「自覚ないかもしれんが、豹舞が言うと冗談に聞こえないんだよ」
「それはまあ、すまん」
そんな感じで話しつつ、俺はバイト募集のサイトをスクロールしていた。
「まだ募集してんだな、これ、てか時給上がってね?」
ふと、この前詐欺だのなんだのかんだの言っていたバイトが目に入った。
時給は何故か1万円に上昇。
「もう、豹舞賭けでここ電話してみたら?」
「いやいや、100%詐欺だぞ?」
「逆に詐欺じゃなかったら最高、詐欺なら速攻で逃げればいい、向こうも詐欺やってるんだから深追いはしてこないでしょ」
「それも一理あるな」
確かに詐欺なら逃げてしまえば何ともない。
相手も犯罪をやってるから警察にも言えないし、一か八かで連絡してみるのもありだ。
「もし電話するならここで電話してな」
「なんで?」
「詐欺師ってどんなふうに誘導するのか聞きたいから」
(詐欺じゃない可能性に賭けてるのに、詐欺前提で話すなよ……)
俺はそう思いながら、時給1万の詐欺バイトに書かれている電話番号を打ち込んだ。
「よしかけるぞ」
「……ああ」
発信ボタンを押し、俺と啓太の間に緊迫した空気は張り詰めた。
「プッ、はいどちら様でしょうか?」
(やばいやばい本当に出ちゃったよ!)
(掛けたんだからそりゃ出るだろ!早く返事しろよ!)
電話に聞こえないくらいのここで啓太とプチパニックを起こしていた。
「どちら様でしょうか?」
「あ、はい!そちらのバイトをしたいと思い連絡した者です」
「承知致しました、では今から住所を言うのでメモをしてください」
「はい!分かりました!」
俺が急いで紙とペンを用意し、言われた住所を書き写した。
「この住所の場所に、いつでも良いのでお越しください、では、プッ、ツーツー……」
電話が終わって真っ先に出た感想はこれだ。
「いや、こっわ」
ただ住所を言われて、そこに来てと言われ、電話終了。
バイトに関して何も触れられなかった。
「お前そこ行くの?」
「辺鄙な場所じゃなければ」
山奥とかなら絶対に行かないが、住宅街とかであれば行ってみる。
どうせ山とか人通りの少なそうな所の住所だろうけど。
そんな思いで俺は言われた住所をググった。
「普通の場所………だな」
あの住所は、俺の家の最寄り駅の住所だった。
待ち合わせとしては特別変な場所じゃない。
バイト場所に直接呼び出さないのは気になるが。
「豹舞マジで行くの?」
「待ち合わせも普通の場所だし、今日試しに行ってみるわ」
「豹舞度胸あるな、俺も一緒に行くよ、お前の勇姿を見届けたい」
「俺が死ぬみたいな言い方するなよ」
「でも、マジで死ぬ可能性あるからな」
「分かってる」
軽口を叩きつつ、俺たちは駅に向かう準備を始めた。
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