初めて見た煌めき。

 カラフルな照明があちこちに光って、眩く照らす。内装は暗い色合いで、光の存在を引き立てていた。内装の色や光も相まって、夜の街みたいだ。

男女がワイワイお祭りのように騒いでいる。

「この音楽心拍数上がらない?」

「分かる〜今日もここ最高」

「最高だよな!」

「春先に見るステージは堪らないぜ!」

 初めての未知の世界だった。このような空間は、学校のイベントぐらいで、近所になかった。私の理解者で大親友の於菟おとちゃんが好きそうな所だ。今度、ここへ案内したら、紹介したいな。

 私は、歩いていると、店員さんに声をかけられた。

「君見ない顔だね?もしかして初めて?」

「は、はい」

「ここはライブハウスだよ。歌いたい人が申請してステージに立つ所でね、このライブタイムでは凄く盛り上がるんだよ」

「そうなんですね」

「うんうん、あとここは交流の場としても機能してるよ」

「なるほど」

 一種のコミュニティとしても成立しているのか。前の所では、静かな寺がそれだったからギャップが大きい。いや、本来はここに近いかもしれない。寺もお祭りの拠点になることもあるから、同様か。

「ここの近くは受付だからね〜〜。ライブ鑑賞の際は、ドリンク代込みのチケット代を払う仕組みだよ。ドリンクについては、オレンジジュース・コーラ・水・麦茶の4つから選ぶことが可能でね」

「分かりました!」

 反射的に私は、案内された受付で小銭を払った。良心的な値段で、『ultriseウルトライズ』のお釣り分で無事足りている。余分に持ってきて良かった。また、特別サービスとしてチョコチップクッキーもつけてくれた。

 店員さん曰く「鑑賞だけでもエネルギー使うから、その補給!」とのことらしい。

「楽しんできてね〜!ゴミ箱は指定された所にあるよ!」

「はい!」 

 私は、店員さんにお辞儀し、目の前に入ったベンチに座る。チョコチップクッキーは、歩いた身体にちょうど良い糖分補給だ。焼いたチョコ特有のカリカリ感が美味しい。ここで食べると違う感じがして、面白い。

(ダンス面白いなあ)

 ダンスを眺めるのは好きだった。私は目立つことが好きじゃない為、こうしている方が良い。そっちの方が気分的に楽だ。笑われることもないし。

 ダンスが収まり、後ろにかかっていた曲が止む。すると、バッと紫色のライトが放たれた。煙がモクモクと立ち、ヘッドフォンをかけた金髪の少女が現れる。

 少女は、芝居じみた声音で高らかに伝えた。

「本日の宴はここからよ!ついていきなさい!」

 右腕を高く海賊のように掲げていて、冒険者のようだ。大勢の客が歓声を上げた。その歓声に性別は関係ない。

「流石リラ様!」

「リラ様に血を吸われたい〜!」

「俺の血も吸ってくれ〜!!」

 少女はリラ様というらしい。私と違って堂々と振る舞っている。人前に立つのが苦手な私からすれば、凄いことだった。羨ましくて、堪らない。私も、リラ様のようになれたらな。

「ふふ、この吸血鬼の姫ヴァンピールプリンセスリラ様の開く宴を楽しんでちょうだい!」

リラ様が不敵な笑みを溢して、告げる。合わせて、紺色のゴシックワンピを揺らす。どうやら、次の出演者のことか。

「次のステージは、KEIよ!」

「「キャァァァァ!!」」

会場を轟かせるような、甲高い声が響いた。女性に人気があるらしく、一部は恋したような表情にもなっている。その様子に私は戸惑う。

(そんなに人気なんだ……)

KEIという人は見たことなくて、どんな人なのかも私は知らない。あとアイドルのライブに行った経験がないこともあった。

そう思っていると、リラ様が報告する。台詞に合わせるように、電子音混じりの音楽が流れた。

「さあ、KEIの登場よ!」

「今から、いごく動くで」

ステージ上に、特独の訛りで返す青年が現れた。青みがかった黒髪の短髪、赤紫色の澄んだ瞳が目に入った。髪に流星群を思わす銀のメッシュが入っていて、己の存在感を示しているように見える。

涼しげな整った顔立ちをしており、モデルにいそうだ。

「………!」

その姿で、あるキャラが頭に過ぎる。

ultriseウルトライズ』にスバルくんみたいだった。スバルくんこと星園 スバル素晴はダンスの実力者で、主人公ライカのライバルである。スバルくんは敵視しつつ認めており、読者人気が高い。

(本物みたいだ!)

 スバルくんとの容貌は全く違っているけど、どこか一致しているように思えた。ケイゴさんは指をパチンと鳴らし、スタートする。足を踏み出して、一回転からの2回のステップ、重心が崩れておらず、体幹がしっかりしていることが窺えた。

(凄い……!)

小刻みのステップに、ジャンプ、腕を上げるアピールと作中に出てくるダンスをこなしている。 時々、ふっと笑みを投げていて、ファンの応援も返しているのだ。観客内でキャーと歓声が上がり、まるで本物のアイドルのようだった。

「………カッコいい」

私は、KEIさんから目が離せなかった。彼をもっと目で追っていたいと心が震えている。大袈裟と揶揄られるだろうけど、舞を愛する男神みたいに思える。まあ、アイドルも偶像という意味があるから、間違ってはいないか。

 KEIさんは、ステージの照明を受けて、煌めく。

「……っ」

 私の心臓は小さく高鳴る。ひゅっと息を飲み、緩む口元に手を寄せた。体温は会場に合わせて、高くなっている。凄い、凄い。異性にアイドル的な目でときめくことは滅多にないから新鮮だった。

 音楽が切れて無音になり、ダンスは止まる。

「ブラボー!!!!!!!」

「流石だよ!」

「最高!」

  観客から、褒め言葉が嵐のように吹き出した。とっても賑わっており、人気が伺える。でもKEIさんはどこか晴れない表情だった。何か思うところあるのだろうか?

 ダンスが下手なようには見えなかったけど……。

 

 すると、視界に唖然としたリラ様がステージ横にいた。

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虹色スペクトルバイブス 香澄すばる @Subaru_glass

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