第2話 最高の異世界転生

何も考えずに攻撃してしまったが、動かなくなった以上体の構造的には人間と変わらないのか?よくわからんが動かなくなった以上


次の瞬間動かなくなった胴体は灰のように空気中に消えていき深く緑色に光る結晶のようなものと、人間とは似て非なる歪な頭蓋骨が残った。

深く緑色に光る結晶は光を発するというよりは周りの光を吸い込み、反射しエネルギーのように蓄えてるようにも見えた。


「魔石とか素材とか倒した証拠的なアレかな、初の異世界要素だな」


見慣れぬ世界に放りこまれた精神的なストレスとは裏腹に新たな刺激の連続に警戒心は薄れていき、膨れ上がる好奇心を感じていた。

結晶と頭蓋骨を握りしめゴブリンが歩いてきた方向へ足早に歩を進める。

手はふさがっており飛び越えるように足場の悪い森をかき分けていく。

興奮と激しい運動により息が激しくなっていく、それでも進んでいくことをやめられない。

この先に未知の世界が待っているから。


「はぁ…!はぁ…!人影だ…ゴブリンもいるなぁ、4体もいるじゃないか!」


荒々しい息遣いで激しい音をたてながら、現場へ急行する。

転生後初めて見る人には目もくれず、取得した戦利品をゴブリンへ投げつける。

スコン!と音を立て後頭部へヒット。衝撃で吹き飛ばされた2匹は立ち上がろうにも生まれたての小鹿のように立つこともできない。

こちらを視認し、同時に飛び掛かってくる2匹のゴブリン。

小柄で身軽だからかゴブリンの3倍ほどの身長を持つ自分の頭を跳び越すほどだった


      「ああああああああ!!!異世界サイコーーー!!!!」

現代ではありえなかった命のやり取りに、抑制することなく解放できる力に!

全身の細胞が滾るのを感じる!


飛び掛かってくるゴブリンへ更に加速しこちらも飛び上がる。

空中で2匹の顔を鷲掴みにし、まるで地面へ飛び込むかのように

ゴブリンの後頭部へ全体重をかけ叩きつける。

受け身など考えなかったその攻撃により自身も転がっていき木にぶつかった。


人生で最高潮の力をふるった快感に震え、叩きつけた敵の生死も確認せずに無防備に転がっていた。


「大丈夫ですか?」


先ほどの人影の主が声をかけてくる。

なんていい人なんだ、初対面で叫びながら飛び出てきて転がっていった見知らぬ男を心配してくれている。1つ残念な点があるとするならば男性だということだろうか。

どうせなら美少女がよかった。


「そりゃそうだ、そんな都合のいいことあるわけないよね」


急に現実的な考えを持ってしまい、先ほどまでの狂気的な熱が冷めていく。

何も理解できないという顔で寝転がる俺をのぞき込んでいる。

茶髪で若干トサカっぽい短髪、背は俺より少し高いくらいかな170㎝弱だろうか。

顔つきは童顔で若く見え、結構な動揺が見て取れる。そこまで警戒する必要はなさそうだ。


「獲物を横取りしていたらごめんなさい、あなたへの攻撃の意思はありません」

「あぁ、いえ…大丈夫ですありがとうございました、僕も剣が折れて結構ピンチだったんです…。びっくりはしましたけど、助かりました!立てますか?」

「大丈夫です」


ひとまず立ち上がり服についた土埃を払う。結構派手な転がり方をしたが

かくかくしかじかで体には自信があるのでノーダメージだ。

4体分戦利品が散らばっておりしっかり倒せていたことに安心だ、恐らく最初の2匹は処理してもらったのだろう。


「これなんなんですか、この石みたいなのと倒すと残る骨は」


「魔石見たことないですか?基本的に魔物は生命活動が停止すると空気中のマナへ還って魔石が残ります。魔石の光は魔物によって違うんです。」


「なるほど、ヒビ入ってる魔石もあれば耳がありますけど」


「魔石は魔物の心臓です。魔石を破壊することでも倒すことはできますが、倒した後に残りません。

私が倒した2匹は、魔石を傷つけることで魔力が外へ逃げて力尽きたので、魔石に傷がついてます。」


出血みたいなものなんだろうか?

俺が倒した2体は頭部を破壊したから、魔石がきれいなままなのか。


「魔石以外にも魔物によってさまざまな部位が残ります。こればかりは複雑な大気中のマナの流れで決まるので、希少なものもあれば多く見るものもあります。」

「博識っすね」

「冒険者ならみんな知っているくらいのことなんですが…」

この人ゴブリン退治にすごく手馴れていたけど冒険者じゃないのかな?


「さっきこの世界にきたんでなにもしらんのんすよ」

「この世界ってどういうことですか?」


「そういうことです」

「つまりどういうことですか?」


「こういうことです」

「なるほどわかりました」

多分この人は変な人だ、敵意は感じないけど変な人だ。

一度ギルドまで来てもらえれば危ない人かどうかくらいはわかるかなぁ…。


「街まで戻りますが一緒に来ますか?」

「え!泊めてもらえるの!?」

「そんなこと言ってません、黙ってついてきてください」

「やさしいせかい」

転生して早々に良心的な人に出会えてラッキーだった、喜びのあまり少しばかり会話がちぐはぐになってしまったがいい人そうなので許してもらえたみたいだ。

頭が徐々に冷静になってくる、こういう時にあまり浮かれすぎるとよろしくない。

新たな展開に向けて気を引き締め直そう。











    

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バタフライエフェクト 谷本です。 @tanimotoyusuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画