第1話 遅刻者
今日は高校の入学式。
母親は仕事なため、代わりにいとこに来てもらいつつ、ウチは待ち合わせしている幼馴染を待っていた。
『ごめーんっ!遅くなった!』
小走りで駆け寄って来た彗夏―安藤彗夏は、左手にはひびの入ったスマホ、右手にはスナック菓子を持っていた。
…こいつ寝坊したな?
「寝坊か」
『ち、ちちち違うよ寝過ごしたの』
「それを寝坊っていうんだよバカ野郎」
『うるさぁい!』
彗夏は朝にめちゃくちゃ弱く、よく起こしに行った覚えがある。
ちなみに家はウチの真ん前。
『クラス見てきてくれた?』
「うん。ウチらは離れたよ。彗夏は3組だったな。ウチは1組で…」
『よぉお二人さん、彗夏クラス離れちゃったねー』
「…こいつウチと一緒」
『えぇっ!私だけ違うのぉ?!』
こいつ―宮本爽也もウチらの幼馴染で家が近い。
ここの3人は小中と同じ学校で、みんな小さい頃からバスケをやっている。
ウチの友達の中で、父親がいないことを知っているのはここの2人だけだ。
―
あの後分かれてそれぞれクラスに向かった。
爽也は友達のところへ行くとかなんとかでウチは1人で向かっていた。
そういえばまたウチと同じ苗字の人見かけなかったなぁ。
ウチの苗字はめちゃくちゃ珍しい。
神楽(かぐら)なんてそうそういないだろう。
ウチの父親が長野出身のせいだな。
そう思いながら席でスマホをいじっていた。
『はい皆さんはじめまして…』
チャイムの後、朝のホームルームとやらが始まり、ウチらは入学式の流れの説明を受けていた。
その時、ドアが勢いよく開いた。
『…おはようございまーす。』
眠そうに入ってきた遅刻者…多分女子たちはみんなこの時恋に落ちただろう。
思いっきり反則のブロンドの髪とピアスがついたその生徒はウチと爽也は見たことがある奴だった。てか爽也からしたらこいつ幼馴染だったような…。
みんなの視線が彼に注がれている。
これは…。
ウチの中でこのクラス終わったなという思いが頭をよぎった。
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