番外編②【夏梅果耶のとある休日】

朝6時30分にスマホのアラームが鳴って目を覚ます。

私は"ストップ"をタップすると、ベッドから降り、カーテンを開けて、まだほの暗い空を見上げながら伸びをした。

最近、やたらと寝覚めがいいのは、夜、寝る前に安眠効果のあるルイボスティーを飲んでるからかしら。


「あ、おはよう。果耶かやねえ

運動部に所属している中学一年生の弟は、休みの日も朝練に駆り出されるので、いつも私より先に起きて、自分でお弁当を作っている。

「おはよう、今日は何のおかずなの?」

「んーとね、前にお隣さんからもらったメロンの皮の漬け物でしょ、で」

「ストップ!メロンの皮の漬け物?!」

「うん、レシピ調べたら色々あって試してみてるんだ!残り冷蔵庫にあるから、食べてもいいよ」

「あ…ありがとう」

女子力の塊みたいな弟が運動部に入ると聞いて、最初は驚いたが、本人が頑張っているのを誰よりも近くで見ているので、なるべく支えてあげたいなと思う。

「それで、先輩とはどうなのよ?」

「う、うーん。まだ見向きもしてくれないかな。そもそも、こっちが勝手に好いてるだけだから」

「そう…」

果耶かやねえはどうなの?」

「え!?」

宍嶋しししまさん?って人が好きだってこの前、言ってたじゃん」

この前っていつよ!?

嘘でしょ!?私そんなこと言ってた?!

「ほら、ぶどうジュース作って飲んだ日に。ジュースなのに酔っぱらいみたいになるんだから、果耶かやねえって怖いよね」

「……。さ!今日も部活、頑張ってね♡」

「あ、流した」



弟を見送って、私は冷蔵庫からメロンの皮の漬け物を取り出す。

「美味しそう…。」

箸でまんでいただいてみる。

芯のあるメロンの皮と、そばつゆが混ざって、香り高く歯ごたえもいい。

皮には固い部分もふにふにとした部分もあって、お行儀ぎょうぎが悪いと知りながらも舌で遊んでしまう。

「っあ、気持ちいい」

奥歯の方で甘噛みをしたり、前歯でこまめに刻んでみたり。

「…はっ、んっ…宍嶋しししまさぁん、ふあぁっ、すきぃ」




…………。

さっきの私、なんか変だった!!!!

ぶどうジュースといい、メロンの漬け物といい果物酔いする人なの!?

そんな人いるの?!

…でも、本当に美味しかった。

……たまには昼ごはんでも用意しといてやるか。

いつも疲れて帰ってきてもすぐ、料理してくれる弟に。

先輩との恋路こいじが上手くいくような、縁起えんぎのいい料理を!

「レシピ、レシピ~」

何作ろっかな~、あ!かわいいライオンのキャラ弁!これにしよ!






「おかえりなさい!!」




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