第14話【迷い猫、成る】(LIVE編)
【
毎週金曜日の夜に放送されているラジオ番組だ。
2年前、俺はいつも通りにベッドで寝転がりながら番組を拝聴していた。
いつもと違ったのは、お悩み相談のコーナーで俺のメールが読まれたことだった。
「えー、14歳、中学2年生のラジオネーム【なりねこ】さんからいただきました。『わざかみさん、こんばんは』はい、こんばんは『ボクには友だちがいません。ボクは受け身で流されやすく、気づいたらどこのグループにも馴染めず、一人ぼっちになっていました。休み時間やペアで行う授業が辛いです。どうすれば変われますか』んー、そうか」
まさか、読まれるとは!!!
物凄くあたふたしたが、集中して耳をすました。
「どうすれば変われますか、ね。う~ん…無理に変わらなくてもいいんじゃないかな、受け身で流されやすいってことはさ、きっとそれだけ人のことを尊重して話を聞いてあげてるってことだと思う。それってなりねこくんがとても優しい子だからなわけで…」
わざかみさんが甘い声で丁寧に言葉を紡いでくれているだけでも辛い日々が報われた気がした。
「そう、実はね、次回の放送が特別な回なんです!ギター持ってきて弾き語りをしてしまおうというね。なりねこくん、僕、曲作ってくるよ、君のためにね」
今、なんて言った?
曲作ってくるよ?……俺のために?
翌週の金曜日の夜__。
俺はラジオの前に正座して、待機していた。
オープニングにトロスの【夜星、。】が流れ、タイトルコールから今週も番組が始まる。
「
いきなり、俺の名前だ…!!
心臓がはち切れそうなくらい、勢いよく脈打つ。
「なりねこくんに捧げます。新曲【また旅に】」
【また旅に】は最初、俺のために作られた。
その後、人気が出てアルバムにも入る名曲となった。
今回のLIVEのセットリストには入っていないのかと思ったが、まさかクライマックスを
『
ああ
14の
ラジオで演奏されたとき、歌い終えたわざかみさんはこう言った。
「最後に一つ、君にアドバイス!自分ではなくて"周りの環境"を変えてみるのもありなんじゃないかな、新しい場所に飛び込んだとき、そこにいた人に引っ張られて、結果的に自分が変わるってこともあります。僕は大学でギターの黒江くんからバンドやらないか?と誘われて人生が変わったからね」
環境…、人と仲良くなれなかった俺が転校して、自分とは真逆な強気で芯のある性格のライラさんと出会い、一緒にトロスのLIVEに参加している。
「みんな、歌ってください」
「『
大合唱が起きた、会場全体がビリビリと振動しているのが分かる。
エネルギーの集合体が共鳴している。
『
ラストのサビが訪れる直前に、俺は自分の中の過去、コンプレックス、痛み、その全てを吐き出すかのように、
ダメだ、止めないと!止めないと!!止めないと!!!止めないと!!!!止めないと!!!!!
頭がボーッとしてきた。
幼い頃に一度、父が長期出張をして、とてつもない寂しさに襲われたときにもこうなった。
これはそのときと同じ感覚だ。
過呼吸になっている。
それは分かってる。
でも、止められない。
倒れる____。
……あ、あれ?
…呼吸ができる……。
…俺は…、倒れてない…?
まだ意識が不明瞭な中、目を開くと、………
が…、優しく、両手で包みこむようにして、俺を抱きしめていた。
…………は、その体勢のまま、俺の背中を両手で
…………ありがとう…ライラ…さん…。
「アネクドートロスでした、ありがとうございました。
また次の"旅"でお会いしましょう!僕たちのよき未来を祈って」
…わざかみさんの声だ。
「掴みとれーっ!!!!!!!!」
マイクを通さない、突き抜けるようなハイトーンが"魂"に訴えかけてきた。
涙で前は見えなかったが、それでも俺は懸命に天高く手を伸ばし何かを掴んだ。
強く握りしめたその手の力を
それは、ギターのピックだった。
「Thank you!」
読んでいただきありがとうございました!
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