第4話【君を見つけた】(動物園編)
「と~うちゃ~く!」
「
早朝から電車でそこそこの距離を移動したのに、妹は一切、疲れたそぶりを見せない…若いってすごい。
「さあ!お兄ちゃん!早く見てまわろうよ!!」
「待った!こういうのは事前に、絶対に観たいポイントを押さえるんだ」
「わ~っ!!あれ、すごいよ!!おサルさんいっぱ~いっ!!」
って、聞いてないし…。
まあ、入り口からこんなに気合いが入っているとわくわくもするか。
「…よし、こうなったらとことん楽しむぞ!!
「うんっ!」
「兄ちゃん、ちょっとトイレ行ってくるから。絶対にここから動いちゃダメだよ」
しばらく動物たちを見ているうちに、便意に襲われて、やっと見つけたトイレだ。
もっと、あってよ。
……しかし、混みすぎでは?
「…ふぅ」
固形石鹸は使いづらいよ。
…それにしてもこの動物園、サル山、爬虫類洞窟、水棲生物展示…、流石に有名なだけあってバラエティーに富んでいる。
なんだ、結構面白いじゃん。
さて、
「お待たせ!ごめん、遅くなった!おじさんがお腹くだしてたみたいでトイレに
…
待つように言いつけた場所から、妹が消えていた。
…近くのコーナーに興味を持って、少し移動しただけかも。
そうだとしても、この人ごみの中から小さい子ども一人を見つけ出すのは難しいだろう。
そうだ!園内アナウンス!
アナウンスに向けて移動しながら呼びかけよう!
「お~い!!
声を限りに叫ぶが反応がない。
そもそも俺の発声では大声を出したつもりでも、大勢に届けるには不十分かもしれない。
「
返事はない。
どうしよう、もしもなにか危険な目に巻き込まれていたりしたら…。
「
大声一つも出せない己の肉体を憎む。
「…
…情けない、咳き込んだのと同時に涙まで。
…でも、探さないと。
「…お兄…ちゃん…」
声を聞いて後ろを振り向くと、
「
「ううん、わるいのは
「無事でよかった」
「お姉ちゃんがたすけてくれたの」
「ああ、ありがとうございま…って!!
こんな偶然って…。
そこにいたのは隣の席の
「
制服じゃないから、全然気づかなかった…。
英語が印刷されたキャップにスタイルのよさが際だつ半袖+カーディガン。
ズボンは…それはもうショートもショートで、ほっそりとしてハリのある生足があらわになっていた。
ショルダーバッグも全体の雰囲気を締めるのに一役買っている。
色味は青と白で統一されていて、爽やか
極めつけはサングラス…漫画でイケメンがつけてるタイプの茶色丸型グラス…。
やっぱり、
スポーティーで…かっこよくて…かわいい。
「…お兄ちゃん?」
「…はっ!」
「…あのさ、見すぎな!」
ベンチに座って話を聞くと、
そういえば、エサで猫を釣ってたな。
「で、迷子の女の子を見つけて、一緒に兄貴を探してあげてたら、それが俺だった…と」
「あたしもびっくりしたよ。ていうかあんた!こんなかわいい妹さんを泣かせんなよな」
「はい、反省してます…」
「お姉ちゃん、いいの、悪いのは
「…それで
「あたしはサファリゾーンに行くつもり」
「お姉ちゃん…いなくなっちゃうの?」
「
「わたし、お姉ちゃんとお兄ちゃんといっしょに動物さん見たい!!」
「だめだよ、
「あたしはいいよ、こんなかわいい子と一緒に動物を観れるなら癒し効果2倍だし」
「お兄ちゃんはお姉ちゃんといっしょはいや?」
「そ、そんなことはないよ!むしろ、あ、いや」
「いや、いやなの?」
「違う!この場合のいやは言葉を
いつも通りの妹とのやりとりに、いつもはない笑い声が交じる。
「ぷっ、あははは、仲良し兄妹なようでなによりだ、ふふっ」
どうして、どうして君はそんなにも…。
普段目にする制服とは異なるファッション。
イレギュラーなシチュエーション。
自然体で笑う彼女を前にして…、俺はきっと冷静ではいられない。
読んでいただきありがとうございました!
面白い!続き読みたい!ヒロインかわいい!
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