第99話 問い 流行りものに乗るのはいいの? 悪いの?

 書き物界でも「流行ブーム」というのはある。



 過去、思い出すのは『トラウマブーム』だ。


 旧新世紀エヴァンゲリオンによって内面世界を書くことが、過去の自分の傷を見せることが『カッコいい』みたいな風潮が出来た。


 そのエヴァに感化されて『トラウマ文学』というものも生まれた。


 

 元々、古くは夏目漱石の「こころ」や芥川龍之介「杜子春」のような『生きるとは何か?』『人間関係とは何か?』などと問うものは多かった。


 だが、トラウマ文学は犯罪を、たとえ殺人を犯しても『トラウマがあるから無実』という免罪を作ってしまった。


 結果、戦後の日本で初にして大量の死傷者を出した「地下鉄サリン事件」は起こった。



 今は、中国の後宮ブームらしい。


 たぶん、「薬屋のひとりごと」の派生であろう。



 自分は、その手のブームになぜか乗れず、というか、乗る気すらしない。


 仮にブームが来て、私が一発当てたとして、続くかどうか不安だ。


 老い先短いのなら、なおさら、『今』売れないと世に名前が出ない。


 

 ただ、世の常でブームが去ると、客も一気に離れる。


 ボーリングブームのころは大量のボーリング球が余り、碁のブームが去れば盤や碁石は部屋の隅である。



『画面の向こうを見なさい』


 そう言ったのは刀研ぎ職人の清水さんだった。

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