第97話 内にいては外を見、外にいては内を見ろ
昔、それこそ、私が子供の頃。
ある男が、明治辺りにイギリスに渡り、日本との橋渡しになり、大役を果たすと政治などとは一切距離を取り、異国の田舎で余生を過ごしたそうだ。
ある時、日本から来た留学生が彼のことを知り家まで押しかけてきた。
彼は近くの小川で釣りをしながら煙草を吹かしていた。
今後の日本や世界を考える留学生に彼はこう言ったそうだ。
「君が内にいるときは外を見なさい。外にいるときは内を見なさい」
十歳にも満たない私だったが、この言葉だけはよく覚えている。
やがて、私は成人して間もなく菜根譚にハマる。
そこでは、世界と自分が繋がっていることを知る。
学生諸君に対しては無駄だろうが、社会人(正確には満十八歳以上)になると選挙権というものが与えられて、投票所に行って自分の思想や考えに基づいて議員を選ぶことができる。
作家の中には「崇高な作家精神において世俗は邪魔」という人もいるが、専任のように霞しか食べていないのならともかく、人は、少なくとも読者は世界で生きている。
それを知らずに、また、逆に世俗に染まりすぎて作家精神を失ってもいけない。
外の喧騒にいるとき、自分は何を考え、どう実行し、何を感じたか?
内の悩みを抱えているとき、社会は何を施し、何を要求し、自分は何ができるかを考える。
今から一世紀前の彼は、今の日本人をどう見ているのだろう?
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