　過日、俳優であり声優である田中敦子さんが六十一歳という若さで他界した。

　追悼料理も作ってみた。

　役者でも、作家でも、とかく、早く成功したいというものは多い。

　でも、そういう人に限って長続きしない。

　理由は簡単だ。

　現実は早々甘くできていない。

　意外な話だが、作家にしろ俳優（声優）にしても一度、道を諦めたものが多い。

　かの、ハードボイルドの巨匠である北方謙三氏も何度もコンテストに応募しては落選して「俺には作家性がない」と思いつめ、「最後に好きなもの全部詰め込む」と書いた作品が、大作家への一歩となった。

　ほかにも、本業より収入のいい副業が多忙で、なんとか個人でスケジュールを組んで収録に参加した俳優もいる。

　実際、本当に作家一本で食べられる人は昔よりも今のほうが少ないはずだ。

　なぜなら、他のユーチューバーや他業種のほうが儲かることを知ったから。

　もちろん、例えば株のトレーダーなんて一晩で大豪邸が建てられるほどの金が手に入ったと思ったら翌日には借金まみれ……なんてこともある。

　でも、登山と同じで、みんなが下山する中、時々は休んだり道に迷ったりしながらでも進んだ先に振り返ると、「ああ、こんな遠くまで来たんだ」と感慨にふけることもある。

　だから、色々な作家が言う。

『その道を楽しみなさい』

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