第26話 主人公たちの目上の人の話 ~猪口直衛 その3~

 猪口直衛は清濁を併せ持つ。


 と、いうより「バランス重視」なのだと思う。


 ただ、本性はちょっと違うと思う。



『正邪の行進』で猪口は「誰かと友達になりたい」という趣旨の発言をする。


 彼は自分の弱さを明確に知っている。


 過大評価をしない。


--自分は裏社会では弱者である


 この事実を認めている。


 故に意識的か無意識的か、強さを武器や力に頼るのではなく、それらを持つ魅力的な人間たちとのネットワークでカバーしようとする。



 打算の場合もあるし、本音の場合もあるだろう。


 ただ、心許せる人間には本音をぶつける。


 自分の弱さもさらけ出す。


 それで死んでも、後悔しない。


 

 それこそ、猪口だけの強さだろう。


 信じる相手なら徹底的に信じる。


 その相手が悪だろうが善だろうが関係ない。


 そして、頼る。


 その代わりに相手が頼ってきたら全力でそれに応える。


 ギブアンドテイクとはちょっと違う。


 

 適度な距離感を猪口は適宜見つけ、常に相手と自分のいい位置を図る。


 時に遠くから見守り、時には寄り添う。


 常に裏方のような役割が多いが、実は、主人公にしても面白い人物だと思う。


 問題は、この彼を活躍できる話を私が今だ、構想すらできないことだ。



 また、彼の背後関係も複雑なので、これも整理したい。


 

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