第25話 主人公たちの目上の人の話 ~猪口直衛 その2~

 猪口直衛とは、改めて考えると、性格が定まっていない。


 

 というより、「ふわふわ」としたものでいてほしいと思う。



 猪口にとって正義も悪も価値はないと思う。


 あるとすれば「法令順守」なのだ。


 

 実際、警察官が警察官になるための宣誓において「正義」とか「悪」という言葉はない。


 あるのは「法令順守」という文言がある。



 猪口にあるのは、この「法令順守」ということと表と裏のパワーバランスである。


 悪がのさばる世界ではだめ。


 でも、善だけの世界も息苦しい。


 その分銅として、猪口、引いては、彼の後ろにいる警察の上層部は平野平家などを使いバランス調整をする。



 その中でも異質なのが『石動肇』という男。


 伝説と化した傭兵『平野平秋水』通称、霧の巨人の最初で最後の弟子。


 唯一無二の友人。


 最高の相棒。


 これらの肩書に見合う実力。


 ただ、彼は権力を嫌う。


 反発をする。


 反論をする。


 言うことを聞かない。



 このような人物に対して猪口はどう思っているのだろう?


 たぶん、こう思うだろう。



「彼は、大変興味深く面白い」


 

 言うことを聞く人間は多くいたが、自分に真っ向から反論する人間がいなかった猪口にとって(それは、彼が有能な指揮官であった部分にも由来するが)実に愉快なのだと思う。


--さあ、この局面をどう乗り切る? 紳士風情の伊達男


 なんて。

 

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