第17話 主人公の父親の話 ~平野平秋水 その4~

宇宙的恐怖コズミックホラー』という言葉がある。


 現代の神話『クトゥルフ神話』の根幹であり、人間の善悪や価値観は宇宙規模の神々などからすれば無に等しい。



 しかしながら、私個人の価値観からすれば同じように人間も恐ろしい。


 私は安易な人間賛歌が苦手であるし、たぶん、嫌いだ。


 以前、エッセーである『暇人の集い』で「金八(先生)なんて大嫌いだ!」と書いたのは、その辺にあるようだ。



 私は過去にいじめを受けてPTSD心理的外傷という傷を負い、複数の精神薬を飲まないと辛くなる。


 それより、さらに過酷なのが、戦場でのPTSDだと聞いた。



 そもそも、日本は幸い、約半世紀以上、直接的には戦争に参加していないし、戦死者もいない(はずだと思う)。


 だが、国内外のドキュメンタリーや直に戦争を体験した人の話を聞くと、人間としての常識や善悪が狂う。


 戦場から生きて帰っても深刻なPTSDを発症し、家族に当たったり社会に出られなくなる。


 

 人間の恐怖。


 ヒューマンホラーというべきか……



 正行が人間の善を信じるのならば、秋水は対して人間の悪を信仰しているのだと思う。


 彼は元腕利き傭兵である。


 人間の善が如何に脆く、醜く、悪がどれだけ強大かを知っている。



『悪というのは善意という舗装がされている』という言葉を師匠は教えてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る