第11話 主人公の話 ~平野平正行 その2~

 理想の主人公とは何だろう?


 強さ、容姿端麗、頭脳明晰……


 昨今の作品は、プラスアルファとして特殊能力が付与される。



 これは、俗に『セカイ系』と呼ばれるエヴァンゲリオンなどの九十年代アニメや漫画における主人公の行動や思いで世界が変わる作品から続く系譜である。


 平凡な主人公(自称)が実は特別な存在でハーレムを作ったり、世界を救ったりする話が王道だ。



 だが、現実はそう甘くはない。


『誰もが主人公』であることは『他者から見れば誰しも脇役』ということである。


 だから、正行が本当に主人公として立ち振る舞うのは、実は最終回近くになる。


 それまでは、様々な経験や言葉を糧に修行する。


 思い通りにさせない。


 彼が思っている以上に苦難や幸せを体験させたい。


 それらが彼の栄養になり、糧になり、少しずつ強くなる。



 これは私も経験しているから言えるが、どこかで、それまで努力していたものが実を結ぶとき、自分でも戸惑うほど快感がある。


 もちろん、作家になるということも、また、甘いことではない。


 それでも、腐らず、諦めず、時々休みながらでも歩き続けると普通の人とはちょっと違った風景が見えるときがある。



 時に間違えや方向が分からなくなるけど、大丈夫。


 先人たちが、道しるべを置いてくれている。


『はい、この地図が頂上に行ける最短ルートの地図だよ!』というのは、危険もある。



 正行は、そんな言葉に耳を貸さず、名前の通り『正しく行って』欲しい。

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