第3章

60話 復活

 ここは立川駅付近にある、通称立川駅ダンジョン。

 そこには闘技場が設置されており、命を奪い合わない試合を楽しむことができる。


 今日もそこで、とある少女達が火花を散らしていた。






☆吉永ノナside


 ノナは闘技場の戦闘エリアで、同じく少女であるエムと対峙たいじしている。

 以前までのエムは、杖を自らの武器として使用していたのだが、今彼女が右手に持っているのはピンク色のオートマチック式の拳銃だ。


 ピンク色ということもあり、どこか魔法少女の武器のようなイメージを受ける。


「新しい武器を試すよ!」


 エムは拳銃をこちらに向けると、トリガーを引いて発砲をする。

 飛んで来たのは実弾……ではなく、赤いエネルギーの塊である。


 ノナはそれを間一髪でかわすと、混沌の剣であるカオスソードを構え直す。


「その銃、見たことのない武器だね!」

「実弾じゃなくて、エネルギー弾を発射するレア物だよ!」


 つまりは、発射方法が変わっただけで、杖のような代物ということだろうか?

 どちらにしても、連射されると厄介だ。


 こちらも新しい手を試すとしよう。

 ノナはカオスソードをこしさやに納めた。


「武器を納めた!? 一体どういうこと!?」

「こっちも新しい手を使うってことだよ!」


 ノナは、この前取得したばかりの新スキルを発動させる。


「スキル発動! 【リサイクル】!」


 本当は叫ばなくてもいいのだが、つい叫んでしまった。

 その叫びでスキル名が耳に入ったエムは、思わずノナに聞き返す。


「リサイクル!?」

「そうだよ! ランダムスキルの書で手に入れた、私の新スキル!」

「で、でも、それって……」


 エムは少し警戒をしながらも、頭上に疑問符を浮かべたような表情をする。

 それもそうだろう。


 【リサイクル】はレア度こそ高いものの、それ以上にハズレスキルとしても有名だ。

 探索者wikiにもそれについて、詳しく書かれている程である。


 肝心の効果は、以下の通りである。


☆スキル名

 リサイクル

☆効果

 ダンジョン内で消費した物体を再度出現させる。

 ※この効果で出現させた物体は10秒後に消滅する

 ※このスキルは1日に1度しか発動できない


 ハズレスキルと言われる一番の原因は、10秒という時間制限がある点だ。

 非常に短い。


 おまけに1日に1度しか使用できないので、これはハズレスキルと言われても仕方がない。

 ダンジョンに入って、最初に入手したスキルがこれであったのならば、スキルに頼らない戦闘方法を模索もさくしなくてはならないだろう。


 だが、ノナの場合は少し違った。


 ノナは勝気な笑顔で口を閉じながらニヤリとすると、右手に粒子が集まり、それは1本の剣となった。

 銀色の2mの剣……名前がないので、シルバーソードと呼んでいたものだ。


 それを見たエムは、一歩後ろへ下がる。

 そんな彼女に対して、ノナは口を開く。


「10秒以内に決着を付ける!」

「10秒!?」


 シルバーソードには、装備した者の能力を、大幅に強化する力がある。

 実際にノナはこの武器を失って、攻撃性能以外も弱体化したことから、おそらく間違ってはいない推理だろう。


 そして、今のノナはあの時よりも大幅に強くなっている。

 強くなったノナに、シルバーソードの力を上乗せだ。


「はああああああああああああっ!!」

「動きが見えない!?」


 10秒しかないので、最大出力だ。

 エムの前方から背後にかけて斬り、さらにその方向から別な方向に移動し、すれ違いざまに斬り付ける。


 これを何度も何度も繰り返した。

 10秒以内に30回は斬り付け、10秒が経過すると、シルバーソードは粒子となり消滅した。


「うわああああああああっ!!」


 と同時に、エムのHPも0となっていた。

 エムはその場に倒れ、地面に右手をつく。


「よし!」


 ノナは右腕で顔の汗をぬぐうと、試合に勝利したことを喜び、爽やかな笑みを見せた。

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