55話 バトル部門、1回戦第1試合
無事に本選出場が決まったノナとフェンリル。
森林のフィールドの端に設置されている扉を
「予選突破おめでとう!」
エムが先に戻っていたようで、少し強気な笑顔をノナに向ける。
「エムも予選突破したの!?」
「うん! なんか空のドラゴンから攻撃されたけど、ケリュちゃんに乗ってなんとか逃げられたからね!」
どうやら、あのドラゴンがフェンリルだということは、分かっていないようだ。
『あれは我だ!』
ノナの隣にいたフェンリルが、エムに対して自信満々な声で言い放った。
「そうなの!?」
『そうだ!』
「ドラゴンに変身って……フェンリルも色々な種類がいるんだね」
このフェンリルは、大量のドラゴンからドロップしたアイテムや、自称神のドロップアイテムを取り込んでいるので、もはや普通のフェンリルではないのだろう。
「ケリュちゃんも負けないよ!」
「キュイイイン!!」
鹿のモンスター、ケリュネイアもフェンリルに対してまるでライバル宣言をしているかのように、鳴く。
この前は【逆再生】により、モンスター同士の戦いは決着が付かなかったので、それが今日付けられることになる。
もっとも、お互いに決勝戦まで残れたらの話ではあるのだが。
「決勝で会おう!」
「ノナ、待ってるよ!」
ノナとエムは、電光掲示板に表示されているトーナメント表を見て言った。
8人のトーナメント方式で本選は行われるのだが、お互い一番端同士なので戦うのならば決勝ということになるのだ。
とは言っても、ケリュネイアは自称神の力を取り込む前とはいえ、フェンリルと互角の戦いを繰り広げたモンスターだ。
おそらく、決勝戦まで勝ち上がれる確率は高いだろう。
◇
別なドアを潜り、闘技場エリアへと移動する。
闘技場エリアは、天井がないコロシアムといった感じで、観客席は大勢の人達でにぎわっている。
このエリアも、実際のダメージを受けないエリアなので、相手のHPゲージを減らし合って戦う方式だ。
『命令はいらんからな』
「うん! 勝ってね!」
機嫌を損ねるのも良くないので、ノナはフェンリルの言葉を肯定した。
だが、流石に奇襲を仕掛けられた場合などは、呼びかけをしようなどとは思う。
肝心の対戦相手はブラックドラゴンだ。
実際にそのような名前かは不明だが、ブラックドラゴンと呼ぼう。
ちなみにテイマーは、クール系のボーイッシュな女性で、かなり頭が良さそうな雰囲気を放っている。
おそらく、常人では考えられない作戦を用意しているに違いない。
「ブラック、相手はフェンリルだ。ドラゴンであるお前の敵じゃない。作戦は分かってるな?」
「グラァ!」
対戦相手の話声を聞いたフェンリルは、少し不機嫌そうな声でノナに言う。
『随分と我を下に見ているようだな』
「フェンリルも十分強いんだけどね」
ドラゴンの種類にもよるのだろうが、あの自信から言って、本来はブラックドラゴンの方が強いのだろう。
そもそも、よくそのような強力なモンスターをテイムできるものである。
それを言ったらフェンリルもそうだが、彼女の場合は人語が話せるので、そういった意思疎通ができたというのもあった。
そもそも、一応テイムモンスター扱いにはなるが、このフェンリルの場合は正確にはテイムモンスターではない。
利害の一致で手を組んでいるだけだ。
どちらかというと、人間の仲間や友達と似たようなものなのかもしれない。
◇
「試合開始です!」
両者準備が完了し、指定の位置に立つと、審判により試合開始が宣言された。
「ブラック! 攻撃だ!」
「グラァ!」
相手は火球を飛ばしてきたが、フェンリルはそれを横に大きく移動し、かわす。
「ブラック攻撃だ! もっと攻撃だ! 沢山攻撃だ! パワー全開攻撃だ!」
「グラァ!」
フェンリルはかわしながら、口から刀を吐き出し、それの持ち手を口に咥えた。
火球の合間をかいくぐって、その刀でドラゴンを斬り付けようとする。
「かわせ!」
「グラァ!」
ブラックドラゴンは、フェンリルの攻撃が速すぎたのか、かわすことができなかった。
「根性で耐えろ!」
「グラァ!」
ブラックドラゴンは指示に従い動かず、斬撃を食らい続ける。
「頑張って耐えろ!」
「グラァ!」
流石はドラゴンといった所であろうか?
HPは削れているのだが、中々に倒れない。
フェンリルも龍化できれば良いのだが、まだパワーが回復しきれていないようだ。
予選であれだけ派手に暴れたのだから、無理もないだろう。
「ブラック! 殴れ!」
「グラァ!」
反撃を指示する相手のテイマーだが、フェンリルはそれを余裕でかわす。
「もっと殴れ! オラオラオラオラオラオラオラだ!!」
「グラァ!」
最後の斬撃を、フェンリルはドラゴンに放つ。
「超頑張って根性で耐えろ!」
「グラァ!」
その指示を聞くことはできず、HPが0となると、ブラックドラゴンはその場で倒れる。
「ブラックドラゴン……よくやった。お前らも強いな、決勝まで行けよ」
「はい! 優勝します!」
こうして、無事に1回戦を突破した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます