53話 テイマーズグランプリ当日!
『なんだ……これは……』
「ドロップアイテムだよ!」
『何やら凄まじい力を感じるのだが、一体どこで?』
「内緒! でも一個しかないから早い者勝ちだよ!」
これはあの時手に入れたものだ。
あの激戦の後、実はドロップアイテムを入手していたのである。
◇
「いっけえええええええええええええええええええ! 【ゴッドスレイヤー】!」
「グオオオオオッ!?」
◇
自称神との戦いの後、消滅したそのドラゴンは、1つのドロップアイテムを落としていった。
それがこの、虹色の玉であった。
「えっと、怪しい物を食べさせるのもあれだからやっぱり言うけど、これは異世界の術師の化身のドロップアイテムだよ」
『異世界? 異なる世界ということか? 本当にそんなものが存在するのか?』
「フェンリルはフェンリルなのに、異世界を信じないの!?」
『信じない訳ではないがな。我からすれば、ダンジョンの外も立派な異世界だ』
確かにそうだ。
「ただ、こうも色んな世界があるとなると、中々混乱してしまうというものだ」
「そうかな?」
であれば、ノナが過去から来たことを話したら、どんな反応をするのだろうか?
今はまだミソギにしか話していないが、いずれは彼女にも相談をしてみてもいいかもしれない。
何かしら、元の時代に戻る方法を知っている可能性もある。
そんなことを考えていると、フェンリルが口を開ける。
「折角だから食ってもいいか? 我は強くなりたいんでな」
「どうぞ!」
フェンリルの舌の上にそれを差し出すと、彼女はそれをゴクリと飲み込んだ。
『うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
フェンリルの体は虹色に輝き、それが収まる頃には……
「見た目は何も変わってないね」
『中身は大幅にパワーアップしている!』
「神のドロップアイテムだからね」
正確には神ではないが、それでも異世界の魔王よりは強いらしいので、物凄い力が手に入ったというのも自然な話だろう。
「で、新たな力は手に入ったの?」
『ああ! 人間に変身できるようになったぞ!』
「それだけ!?」
『それだけとはなんだ! これがあれば、ダンジョンにあるレストランに入れるんだぞ!』
「あー……、確かにモンスターの姿だと入れないかもね」
人間と一緒であれば入れるだろうが、フェンリルはプライドが高いので、ノナに頭を下げたりしたくはなかったのかもしれない。
『勿論、それだけじゃないぞ! 大幅にパワーアップもした!』
「それはいいね!」
シルバーソードがない今、もしかするとノナよりも強いかもしれないが、それは言わないでおこう。
◇
8月の末、テイマーズグランプリ当日。
テイマーズグランプリの会場である、八王子に電車で向かい、そこから少し歩いた所にあるダンジョンゲートを潜る。
ダンジョン内部に入ると、ダンジョン内とは思えない空間が広がっていた。
東京にあるビッグサイトのような内部で、ドアがいくつか設置されている。
おそらくこのドアの先に、会場や運営の部屋があるのだろう。
後はダンジョン探索者が大勢いて、皆がそれぞれモンスターを連れて歩いているのも普段中々見ることのできない光景だ。
「あ!」
その探索者の中に見覚えのある顔を見つけると、向こうもノナに気が付いたのか、こちらへ小走りで寄って来た。
「ノナ! 今日はライバルだね!」
鹿のモンスター、ケリュネイアを連れている女子高生、
「ケリュネイアはこの前の戦いから、かなりパワーアップしたからね! 今回は負けないよ!」
エムに合わせるように、彼女の隣にいるケリュネイアが小さく鳴く。
「こっちだってね!」
パワーアップしたのは、フェンリルも同じだ。
自称神のドロップアイテムを取り込んだので、かなり強化されていることだろう。
「じゃあ、次はフィールドで会おうね! 行こう、ケリュちゃん!」
「キュイイイン」
ケリュちゃんというのは名だろうか?
エムはノナに後ろ姿を見せると、歩いてその場を去る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます