52話 テイマーズグランプリ
結局決めても呼びそうにもなかったので、特にファンネームを決めずにダンジョンを進んでいく。
「ただモンスターを倒すだけだとあれなので、私のスキルを紹介します!」
・おお!
・そういえば、ノナおじのスキルちゃんと把握してなかったな
・試合で勝つ為に、あえて公開しない配信者もいるくらいだけど、ノナちゃんはいいの?
「そういうの気にしてないし、別にいいよ!」
まずは、スキル【ダブルインパクト】を見せよう。
ノナはスライムを斬り付け、それを発動させる。
ダメージが1撃で2回分入るスキルなのだが、オーバーキル過ぎたのか、あまりスキルの紹介にはなっていない。
・シンプルだけど強いな
・そのスキル他の人が使ってるの見たことあるけど、1日1回しか使えないんじゃなかったのか?
・それでも、ボス戦とかだと有用だろ
・パーティー戦だと、バフかけて攻撃→ダブルインパクトで結構持っていける
と、コメントではダブルインパクトについて、様々な意見があった。
結果的に一緒に戦ったということはあるが、パーティーは組んだことがないので、いつかは組んでみても面白いかもしれない。
さて、次のスキルは面白スキルだ。
「【逆再生】だよ!」
このスキルは視界に映った任意の空間、対象を最大10分間まで逆再生することのできるスキルだ。
・何そのスキル
・初めて見たわ
・俺はこの前のエムちゃんの配信で見たから知ってる
・見たい
ということで、実際にやってみることにした。
ダンジョンの壁を軽く剣で斬り付け、それに向かってスキル【逆再生】を発動させる。
すると……
・すげえええええ!!
・動画を逆再生しているみたいだ
壁が元通りに戻っていく様子を見て、コメント欄に驚きの声が寄せられた。
「MADとか作るのに役立ちそうだよね!」
・他にもっとあるだろw
・そもそもMADで逆再生するなら、編集ソフトでやればいい話
・これ逆再生している途中に攻撃したらどうなるんだろう?
「最後のコメントは……どうなるんだろう?」
逆再生が中断しそうな感じはする。
検証してみる必要もあるかもしれない。
とは言っても、両スキルとも1日にしか1度しか発動できないので、本日は検証ができないのが残念だ。
ノナはそのことを、皆に伝えると、ダンジョンを進んでいく。
最終的にボス部屋まで行ったが、ボス自体はあまり特徴のない少し大きなゴブリンで、難なく撃破することができた。
「皆ありがとう! ちゃんとこうして皆と話しながら配信できて良かったよ!」
・乙!
・前の配信のアーカイブ見たけど、ほとんど1人で喋ってたからなw
・↑それが普通。大物配信者で感覚麻痺し過ぎ
・とにかく乙!
・楽しかった!
配信を終了しようとしたノナであったが、ここでリスナーからとあるコメントを貰った。
・テイマーズグランプリには出場しないの?
◇
配信終了後、自宅にて。
「テイマーズグランプリかぁ」
ノナはリスナーの皆から、それについて詳しく説明して貰った。
【テイマーズグランプリ】とは、テイマー……つまりモンスターをテイムしている探索者達が競い合う大会のようだ。
部門は2つあり、1つは【バトル部門】だ。
バトル部門は、文字通りテイムモンスター同士を戦わせて優勝を目指す、いわゆるポッケモンバトルのような部門である。
ここでポイントなのが、テイマー側は命令しかできないという点だ。
そしてもう1つが【レース部門】である。
こちらはモンスターの背中にテイマーが乗り、1位を目指すというものだ。
妨害などもありで、マーリオカートのような競技である。
ただし、モンスターの背中から落ちたらその時点で失格なので、必ずしも速い者や強い者が勝つとも限らないようだ。
「皆はフェンリルで出場したら優勝狙えるって言ってたけど……」
果たして協力して貰えるのだろうか?
かなりプライドが高そうなモンスターなので、例え協力してくれるとしても、無条件とはいかなそうだ。
「でも、優勝狙えるなら出場したいしなぁ」
明日フェンリルの元に話をしに行こうと、ひとまずこの日は眠りについた。
◇
そして次の日、いつものデパートへ向かい、その隣にあるダンジョンへと足を運ぶ。
このダンジョンにフェンリルは住んでいるのだ。
「フェンリルー! いるー?」
ノナは叫ぶが、返事はない。
もしかすると、別なダンジョンにいるのかもしれない。
と思ったら、フェンリルが犬のようにこちらへ走って来た。
『騒がしいな』
「おお! いたいた!」
ノナはフェンリルに、テイマーズグランプリの件を話した。
「お願い!」
『却下だ! なぜ我がお前の下につかねばならんのだ!』
「だよね……」
『だが……条件次第では考えてやってもいいぞ?』
「条件って?」
『後少しで新たな力が手に入れられそうなのだが、この前みたいに強力なドロップアイテムを食わせてくれないか?』
この前、フェンリルにはドラゴンからドロップしたアイテムを大量に食べさせた。
なので、またそのようなドロップアイテムを望んでいるということだろう。
「この前のと、同じのでもいい?」
この前食べきれなかった分は、まだ残っている。
『もうあれと同じものは体が受け付けん』
「マズいってこと?」
『そうではない。特別美味くもないが、なんというのか、あれ以上あれを食っても強くはなれない感じがするんでな』
色んな物をバランス良く食べたいということだろうか?
で、あれば……
「これとかどう?」
ノナは収納箱から虹色のビー玉のようなものを取り出し、右手の平の上に乗せた。
★
【あとがき】
最近執筆の時間は、未完結だった作品を完結させたり、短編を量産したりしていました。
特に短編は色んな種類の物を書いたので、興味のある方はユーザーページから飛んで読んでいただければ幸いです。
現時点で書いた短編は、おそらくどれも1作品につき10分もかからずに読めると思いますので、気になったものだけでも良いのでぜひ!
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