前のエピソード――49話　受けるネタを教わってみた！

「今日はありがとうね！」

「うん」

　ノナはミソギに手を振ると、その部屋をあとにした。

◇

　次の日。

　以前のノナおじと呼ばれたアカウントは色々と荒れてしまったので、ノナは新しくアカウントを作成すると、配信をする為の設定を始める。

　ミソギが色々と教えてくれたので、よく分からない設定でも難なく攻略することができた。

　最初は投げ銭や広告収入を得られないので、本当にただ配信するだけだ。

　ノナはスカイツリー付近にあるダンジョンへ行くと、まずはそこでドローンカメラを購入した。

　リアルな通貨ではなく、ダンジョン内通貨のGで購入できるので、結構高かったが購入することができた。

「なるほど、これをダンスマと連携させて、撮影するのか！」

　ドローンカメラが浮かび上がった姿を見て、ノナは感心する。

　しっかりと、こちらを映してくれるではないか。

「よし！　じゃあ、早速アイコンを撮影しよう！」

　TUBEのチャンネルのアイコンは初期設定のままだ。

　なので、それを撮影するとしよう。

　本当はフェンリルをアイコンにした方が受けが良さそうな気もするが、ほとんどの探索者は自身の顔をアイコンとしている場合が多いので、ノナもそうすることにした。

　自分の顔をネットに晒して良いのかと疑問に思ったが、どうやら素顔をネットに晒すのはそこまで珍しいことではない時代のようで、15年でここまで変わるのかと驚いた。

　ダンジョン内の中学生の姿のノナは、この時代には存在しない顔なので、大丈夫だとは思う。

　撮影が終わると、それをアイコンにし、配信場所へと移動する。

◇

　初配信のダンジョンは、あまり人がいない所がいい。

　そう考えたノナは、電車で都心から少し離れた場所へ行くと、そこでダンジョンで配信を始める。

「配信始まってるかな？」

　配信を開始したが、コメントがない。

　エムの配信には、コメントがあったのだが。

「ちゃんと配信できてるのかな？」

　画面を確認してみると、誰も見ている人がいないようで、ただ一人で喋っている状態だ。

　だが、ミソギも言っていた。

～回想～

『何人来るかな！？　コメント一杯だったら読み切れないかも！』

『あんまり期待しない方がいいよ。TUBEは皆が見ている人気のある配信や動画を表示させる場合が多いからね。つい錯覚しがちだけど、同接が数人でもいて、コメントが飛び交うだけでも結構凄いことなのさ』

『そうなの！？』

『うん』

～回想終了～

「やるしかないね！」

　まずは、どうすれば良いのだろうか？

「皆！　こんにちは！　初配信です！　今日はダンジョンを探索します！」

　挨拶も済んだので、ダンジョンを進んでいく。

「あっ！　スライム！　スライムだ！」

　ノナは腰のカオスソードを引き抜き、それで斬り付けると、スライムは粒子となって消滅した。

「いえーい！　やったね！」

　誰も見ていないが、とりあえずリアクションを取っておいた。

　アーカイブに残る為だ。

・初見

「うおおおおおお！　初見さんだ！　お茶どうぞ！　( ^^) _旦~~」

　同時接続数が1になっている。

　そして、すぐに2となる。

・ミソギ：それちょっと古い

『ミソギも来た！』

・なんか前少し話題になってた人？

『話題になってたかどうかは分からないけど、他の人の配信には出たよ！』

・やっぱりノナおじだよな。今はもう誰も話題にしてないけど

「ひ、ひどい！　いや、いいのかな？」

　ノナは一瞬突っ込みたくなったが、すぐに納得したような表情で首を傾げた。

　元々あまり良くない感じで広まったので、良いことなのかもしれない。

　今度はダンジョン探索者のノナとして、有名になりたいものだ。

・最初は自己紹介動画を出せばいいかも？　頑張って！

「応援ありがとう！　動画かぁ！」

・ミソギ：後は自分らしくかな

「自分らしくかぁ」

◇

　ノナはその後すぐに配信を終えると、自己紹介動画の撮影に入った。

　あまり編集はせずに、ほぼそのままアップロードをする。

　ノナにとっては動画サイトと言えば、ニコ動な所もあったので、ニコ動にも自己紹介動画を投稿した。

　結構やっている人もいるみたいだが、それでも自分らしいと感じたので良いだろう。

　後はドナルド動画のMADをひたすら歌って、それを動画としてアップロードした。

　これらは数日かかった。おかげで８月も既に中盤だ。

「動画サイトに関してはこれでOK！　後は！」

　大型匿名掲示板7chにスレを建てた。

1.名無しの探索者

ノナです(｀・ω・´)

動画投稿とか配信やってます(>_<)

2.名無しの探索者

誰？

3.名無しの探索者

ノナおじ！？

4.名無しの探索者

生きていたのか！

5.名無しの探索者

というか、TUBEで活動始めたのか

知らなかったな

　その後は、あまりノナのことを知らない「誰？」といった感じの書き込みが続いたが、活動を始めたことを知らない人もいたみたいだったので、スレを建てた意味は大いにあっただろう。

「自己紹介動画も……200再生！　有名な人に比べると少ないけど、最初に比べれば上出来だね！　ドナルドのMAD歌ってみたは、多くても8再生か……」

　チャンネル登録者も10人に増えていた。

　2桁は少ないと最初は思っていたが、ミソギ曰（いわ）く。

～回想～

『チャンネル登録者何人くらい増えるんだろう？　せめて、1週間で100人は行きたい！』

『あんまり高望みしない方がいいよ。同接の話をした時もそうだったけど、TUBEは人気のある配信や動画を優先的におススメに出して来るからね。実際はチャンネル登録者が0の人っていうのは、かなりの数存在しているんだよ。特に自分自身をメインコンテンツとしたチャンネルはね。だから、もしもチャンネル登録者が0でも悲観（ひかん）することはないよ』

～回想終了～