45話 斬ってみた!

 フェンリルがギリギリの所で召喚に応じてくれたおかげもあり、ノナの体はフィニッシュせずに済んだ。


「キュイ!」


 ケリュネイアがフェンリルに合図をするように鳴いた。

 フェンリルはそれに頷く。


『ああ! やろうではないか! 我も強そうな相手を目の前にして、ワクワクして来た所だ!』

「キュエエエエエエエエッ!」


 すると、2匹のモンスターは互いにぶつかり、更には高速移動を繰り返す。

 ノナの目で追うことは、かなり難しい程の速さで移動している。


 たまに「バチッ」とした音も聴こえるので、アーツの打ち合いもしているのだろうか?

 かなり高度な戦いを繰り広げていることが分かる。



・ヤ〇チャ視点

・何が起きてるんだ?

・というか、普段エムちゃんねる見てないんだけど、やっぱりエムってケリュネイアより強いの? なんか、ケリュネイアの方が強そうなんだけど

・ブラッディデスゴブリン倒したし、多分エムちゃんの方が強い

・けど、テイムした時は友情テイムだったよな

・友情テイムって?

・戦わないでテイムすること



「あれ!? フェンリルってこんなに強かったっけ!?」


 シルバーソードにより、ノナのステータスも上がっていた疑惑が浮かび上がる。

 思った以上に、ノナが強化されていた可能性は高そうだ。


「ひ、ひぇぇ……」


 あまりの戦いに、エムも涙目になりそうだ。


「キュイ? キュイキュイ!」

『確かにそうだな。もっと広い所でやるか』


 ケリュネイアが何を言ったかは人間には分からないが、フェンリルの言葉を聞く限りだと、もっと広い所で戦おうという誘いのようだ。


 ドガーン!


 2匹により闘技場の壁が破壊されたかと思うと、そのまま2匹はどこか見えない所へと行ってしまった。



・どっか行ってて草

・結局1対1か



「えっと、気を取り直して!」

「そうだね!」


 何事もなかったかのように、ノナは剣をエムは杖を構える。


「そろそろ決着を付けようか!」

「うん! そうだね! とっておきのアーツで勝負を決める!」


 エムは杖を投げ捨てると、収納袋から刀を取り出す。


炎刀焔エントウホムラ!」


 エムが取り出したのは、刀身が赤い刀であった。

 そして、彼女はアーツを発動させる。


「爆裂アーツ!! 【煉獄れんごく】!!」

「そ、それは!?」


 エムが持つ刀の刀身が炎に包まれる。

 そこまでの炎で刀身を纏ったのであれば、杖でも良かったのではないのかと思える程だ。



・出た! 致死率100%のアーツ!

・今まであれ受けて生き残ったモンスターいないよな

・ノナおじ終わったな

・勝ったな

・さてと、そろそろ祝いの酒を用意しておくか



「【逆再生】」


 負けが予想される中、ノナが言った。

 スキルを発動させたのだ。


 見た光景であれば、最大10分まで対象を逆再生できるスキル、【逆再生】だ。


 エムがどんどんと逆の動きをし、よく分からない言葉を発する。

 逆再生なので、当然だろう。


 10分まで巻き戻せるので、ケリュネイアを召喚する前まで逆再生することにした。



・何が起こってるんだw

・エムちゃんどうしたの?



 ケリュネイアも後ろ向きに、どこからともなく走って来ると、エムの右手の上に乗っている召喚石に吸い込まれるように消えていった。

 ノナは剣を構え、エムへ走りながら【逆再生】を解除した。


「出ておいで! ケリュネ……」

「させない!」


 ノナはカオスソードでノナの右腕を斬り付け、召喚石を弾いた。


「きゃっ!」

「ぬおおおおおおおおおおおお!」


 怯んだエムに向かって、剣で何回も斬り付ける。

 上半身に何度も何度も物理的なダメージが与えられ、HPゲージがどんどん削られていく。


「トドメ! 【流星群】!!」


 上空から流星がエムに向かって降り注いだ。


「きゃあああああっ!」


 アーツの発動が終了し、砂煙が晴れる。

 エムの頭上のHPゲージは全て削られていた。



・エムちゃんが負けた!?

・嘘だろおい!

・何が起こったのかさっぱりだ

・多分アーツかスキル

・時間を巻き戻す感じの能力かな?



『おい、ケリュネイアはどうした?』


 フェンリルが、戻って来た。


「逆再生で召喚石の中に戻って貰ったよ!」

『折角良い勝負をしていたのだがな』

「ははっ! ごめんね! 私も勝ちたかったからね!」


 フェンリルは少し物足りなさそうに、どこかへと去っていった。


「ありがとう! フェンリル!」


 ノナはフェンリルに向けて、手を振るのだった。



「なんか、すぐに負けちゃった……とっておきのテイムモンスターも見せられなかったし……」

「心配しないで! ちゃんと出してたよ! 逆再生で時間を戻しただけだよ!」


 エムは「ええ!?」と驚いた後に立ち上がると、2人は互いに向き合い、握手を交わした。


「ね? 皆! ノナは強いでしょ?」



・確かに強いけど

・エムちゃんも十分に強かった

・互角じゃね?

・ノナおじの方が強いだろ

・ノナおじも強いけど、ブラッディデスゴブリンを一撃は無理だろ



「あー、あれは別な武器使ってたからね!」


 リスナーのコメントに対し、ノナは答えた。



・そんなに武器で変わるか?

・どんな武器だよw

・ともあれ、ハッキリしたことがある

・うむ

・どっちも強い



「だってさ! 良かったね!」

「嬉しいけど……あれ? そもそも本来の目的って……」


 エムはすっかりと忘れていたようだが、本来はダンジョン警察に推薦されない為の試合であった。だが、見事に強さが証明されてしまった。

 ダンジョン警察は強制ではないので、断ればいいのでは? と思ったが、エムは軽くショックを受けていたが、そんなことよりも皆の前で試合をできたことの嬉しさの方が大きいようであった。



・いい勝負だったぞ!

・まだスパチャできないのが惜しいな

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