35話 第1章エピローグ

☆吉永 ノナside


「本当に強いね!」


 アーツも効かない。

 物理攻撃も効かない。


「何が効くんだろう?」


 と悩んでいたら、突然2m剣、シルバーソードが金色の光を身にまとった。





















『アーツ、【ゴッドスレイヤー】を獲得しました』

「え!?」


 脳内に声が響き渡る。

 前にも流れた、無機質な声だ。


「ゴッドスレイヤー!?」


 ノナは頭の中で念じた。

 念じることにより、アールやスキルの効果を知ることができるからだ。


☆アーツ名

ゴッドスレイヤー

☆効果

名もなき剣の能力により、生み出されたアーツ。

相手の全ての耐性を無視し、例え神であろうと無に帰す。


※名もなき剣の能力=自分より強さが上、または勝利を見出せない相手と戦闘を行った場合、相手を倒せる効果を持つアーツを生成する。

※名もなき剣の能力により生成されたスキルは、1度使用すると再度使用不可。


「長いっ!」


 ※の部分も合わせて読むと、つまりはこういうことになる。


 一言で言い表すのならば……


「ご都合主義! 少年漫画だとありがちだね!」


 しかし、勝てない相手がいた場合に勝てるアーツを生成するのは、流石に反則だ。

 この剣があれば、どんな戦いであれ勝てるのだ。もはや、戦いになっちゃいない。


 いや、使用できるのは1度きりだ。

 これを外したら負ける。


 ピンチな状態だが、それがいい。

 少年漫画の主人公になった気分で、実に燃える。


「はあああああああああああっ!」


 ノナは叫ぶと、剣にまとわりつく黄金のオーラが更に光り輝き、背中には2枚の黄金の翼が生成された。

 大ジャンプをし、思い切り剣でドラゴンを斬り付ける。


「いっけえええええええええええええええええええ! 【ゴッドスレイヤー】!」





























「グオオオオオッ!?」


 一瞬の出来事であった。

 ノナがシルバーソードで、ドラゴンの体を右斜め上から斬り付けたのだ。


「グオッ……!」


 ノナは着地をすると、ドラゴンを見る。

 粒子になり、徐々に消えていく。


「ワレハ……カミ……ユエニ……シナヌ……コノスガタハ……ケシン……ナリ」

「そうなの!?」

「アア……ソレニ……ワレハ……カミデハナイ……ジツハネ」

「え?」

「イセカイノ……ジュツシダ……カミニナリタクテ……カミニナッタフリヲシテイタ」

「え、神じゃないの?」

「ソウ……ダ……ダ……ガ……ワタシハユウシュウダ……ソンナワタシノケシンニカッタジツリョクハ……ホンモノダ……オマエハ……コノマエトウバツサレタ……マオウヨリモツヨイ……モウニドト……コノセカイニハアラワレナ……イ……サラバダ……ツヨキ……ショウ……ジョヨ……」

「最後に聞かせて! どうして神になりたかったの!?」


 消滅しながら、ドラゴンは答える。






















「ナントナク……カッコイイト……オモッタ……カラダ……」





































 あれから2時間後、救助隊が来て無事に東京タワーのダンジョンから脱出することができた。

 今はダンジョン外のカフェで、コーヒーを飲んでいる。


「どうしたの? ノナ」

「最後にあのドラゴンが言ってたあの言葉……」


『ナントナク……カッコイイト……オモッタ……カラダ……』


 ノナはそれを思い出し、神妙な表情で下を向く。


「あれは一体……」


 そんなノナに対して、頭に軽いチョップを放つミソギ。


「何シリアスになってるの!?」

「いやだってさ! なんとなくってどういう風になんとなくなのかと思ってさ!」


 神妙な表情はすぐに終わり、我慢していたかのように爆笑をする。

 というよりも、実際に我慢をしていた。


「深い意味はないと思うよ。多分中二病だったんでしょ」

「でも、異世界って言ってたよ? ここじゃない世界のことだよね? そんな世界にも中二病ってあるのかな?」


「さぁ? でもきっと、多分どこの世界にもそういうのはあるんじゃないの? というか、ノナも中二病じゃん」

「私はそういうのないから! 邪気眼とかそういうのもないし! 闇の力も持ってないし!」


「でも中二病って、そういうのだけじゃないけどね」

「そうなの?」

「うん」



「そういえばさ、色々あって続き話せなかったけど、結局今のノナって中学生なの?」


 ダンジョン外の体は普通に大人だが、ミソギの言う通り、中身は中学生である。


「実はね。引いた?」

「いや、引きはしないけど、びっくりはした」

「信じてくれるの?」

「信じない理由はないしね。それより、ノナはあの虹色の光線を受けた後、どうなっちゃったの? 元の時代にでも戻ってた?」


 ミソギの言う通り、虹色の光線を受けた後、気が付いたら元の時代に戻っていた。


「うん! 元の時代に戻ってたよ!」

「やっぱり? なんか、ごめんね? 私の為に戻って来てくれたんでしょ?」

「実はね!」


 ノナはドヤ顔で答えた。


「本当に良かったの?」

「私がそうしたかったから、いいの! ただ、この時代の私に対しては、少し悪いかなって思ってるけどね」


 この時代のノナの体を乗っ取った形になっているので、時間を奪っているようで、なんだか申し訳がない。


「そんなことないと思うよ」

「そうかな?」

「うん。この時代のノナ元気なかったし、後少し借りておいても罰は当たらないと思うよ」

「う~ん」


 悩んだが、悩んでも仕方がないので、他の疑問をぶつけてみた。

 ミソギであれば、分かるかもしれない。


「そういえば、虹色の光線を受けた時、元の時代には戻ったんだけど。なぜか元々この時代に飛んだ日の数日前だったんだよね」

「そうなの?」


「うん! なんでか分かる?」

「もしかすると、実際は元の時代に戻っていなかったとか?」


「どういうこと?」

「ムゲンツクヨミ的な?」


「なんだっけそれ」

「この時代に来てから、まだ読んでないの?」


 おそらく、何らかの漫画のネタバレをされた可能性がある。

 とは言っても、時間が経過しすぎて、もうネタバレも何もないのかもしれないが。


「読みたいの色々あったからね!」

「そう。簡単に言えば、幻覚。そういう夢を見せられていたのかもしれないね」


「ってことは、あのまま私があそこにいる選択をしたらどうなってたの?」

「その世界で生きるか、それとも徐々に精神が消滅していくとか……?」


「怖っ! 危なかったよ!」

「仮説だけどね」


 どちらにしろ、あそこでミソギを助けない選択をしていたら、良くない方向に後悔をしていただろう。

 おそらく、これで良かったのだ。


(この時代の私、後少しだけ体を借りるね)


 と、ここでノナは思い出す。


「そういえばさ、仮説と言えば、もう夜だけど結局世界滅亡しなかったね!」


 結局何もなかった。

 予言なんて、基本はそんなものだろう。


「どうだろうね。もしかすると、あのドラゴンの大群が現実世界に出ようとしていたって可能性はない? だって聞いたことないからね。モンスターの攻撃でダンジョンゲートができるなんて。普通はモンスターはダンジョンゲートをくぐれないけど、あのゲートならもしかして……」

「ああいうことって、あんまりないんだ!」

「あんまりというか、ネットにも書かれていなかったからね」

「それは確かに危険だったかもね……。でも、最後のドラゴンはともかく、群れのドラゴンは防御力が高いだけであんまり強くなかったけどね!」


 硬かったが、ゴリ押しで攻略できた。


「いやいや、ノナが強すぎるんだよ」

「そう? そうかも!」


 ただ、ノナが強いというよりも、あの剣が強いのかもしれない。

 あの剣との出会いに感謝である。


























「ノナ、これからも私と友達でいてくれるかな?」

「勿論さぁっ!(ドナルドの真似) でも、急に改まってどうしたの?」


「ノナのおかげで、大切なことを思い出せたような気がするからね。だから、そんなノナとこれからも友達でいたいからさ」

「おお! 私結構かっこつけてるからね! その甲斐かいがあったってことかな!」


「かもね。後でこの時代のノナが戻って来た時、今のノナくらいかっこつけていいって、伝えておくよ。人に何言われようと、かっこつけていた方がかっこいいからね」













第1章 完






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