23話 海と言えば、スイカ割り!?
7月27日当日。
東京駅で待ち合わせをしているので、ノナはいつものシルバーアクセサリー多めの私服で家を出た。
待ち合わせ場所へ到着すると、同じタイミングでミソギとエムも来る。
「2人共、ナイスタイミングだね!」
「本当だね! えーと」
エムは、隣にいるミソギをチラリと見る。
そういえば、2人は初対面だった。
「
エムは頭を軽く下げ、窮屈にならない程度に自己紹介をした。
そんなエムに対して、ミソギも頭を軽く下げる。
「
クールではあるが、前より断然元気だ。
どこか、中学時代にアニメキャラになりきっていた時のような口調でもある。
きっと、心の中の風紀委員長が蘇ったのだろう。
自分がやりたいことをやるのは良いことだ。
「じゃあ早速、海へ行こう!」
ノナ達は電車へと乗り込むと、目的地へと向かった。
◇
「夏休みだけあって、人が沢山いるね!」
ノナは浜辺にいる大勢の人達を見て、言った。
確かに今は夏休みということもあり、かなりの大人数だ。
こうして景色を見ているのも悪くはないが、折角なので早く水着に着替えたい所である。
早速、更衣室で水着に着替え、再び浜辺を眺めながら言う。
「いやぁ! 水着になっても暑いねぇ!」
15年前と比べて、かなりの暑さだ。
やはり、温暖化が進んでいるのだろう。
「さて、泳ごうか!」
「海って泳ぐものなの?」
「え? ミソギは泳がないの?」
「プールだったら泳ぐけど、海はちょっとね」
ミソギは持って来たスイカを取り出し、右手に乗せる。
スイカ割りということだろう。
「私は後藤さんとこれをやる」
「ええ!? 私もやりたい!」
ということで、人が少ない所に移動し、スイカを指定の位置にセットする。
鉢巻と、金属バットもミソギが持ってきたので、ありがたく使わせて貰う。
「私最初でいい!?」
ノナは、勢い良く右手を挙げた。
「いいけど、後藤さんは?」
「私もいいよ!」
「だってさ、良かったね」
ということで、ノナは鉢巻きで目隠しをし、金属バットを構える。
「バンカイ……」
ノナは1人つぶやき、気合を入れる。
野生のカンでスイカの位置をなんとなく割り出すと、そこに向けて思い切り金属バットを振り降ろした。
「とりゃあああああっ!」
感触は砂であった。
砂に金属バットを振り降ろした感触である。
つまりはハズレ。
「おっかしいなぁ」
鉢巻きを外して金属バットを振り降ろした所を見てみると、スイカの位置と大分違っていた。
「次私でいいかな?」
「どうぞ!」
一見テンションが低そうなミソギではあったが、実はかなりのやる気があったようで、2番手を買って出た。
「覚悟を炎に……」
ミソギは目隠しをすると、金属バットを構えて気合を入れた。
「ふんっ!」
「惜しい!」
ミソギが振り降ろした個所はスイカのすぐ左隣であり、非常に惜しかった。
「最後は私だね」
「エム! 頑張れ!」
エムは目隠しをし、金属バットを両手で構える。
「えっと、私も何かつぶやいた方がいいのかな?」
「お好みで!」
エムはスイカの前に近づき、金属バットを振り降ろす。
「えいっ!」
グシャッ!
エムの振り落とした金属バットは、見事スイカにヒットした。
「やるねぇ!」
「えへっ! ありがとう!」
絵面は良くないが、割れてはいる。
ミソギはスイカを改めて包丁で切ると、それを皿に乗せる。
「どうぞ」
「おおっ! ありがとうっ!」
「ありがとうございます! いただきます!」
赤くて甘いスイカだ。
「では、私からも!」
エムはミソギに対抗して……かどうかは分からないが、サイダーを人数分取り出した。
ノナも持って来た、カット済のパイナップルを差し出す。スーパーで購入したものだ。
「カットされてる奴か」
「丸ごとだと、トゲがあるからね」
そんな感じで、全部食べたら、結構お腹に溜まった。
昼の時間は、ずらしても良いだろう。
「私泳いでくるね!」
ノナは泳ぎに、ミソギはパラソルの下で昼寝を始め、エムはダンジョン配信の準備を始めるのだった。
☆後藤 絵夢side
エムは配信をする為に、ひとまずジャージ姿に着替えた。
ダンジョン外の姿を映す訳でもなく、ダンジョン内へと入ればいつもの衣装になるので着替える必要はないと言えばないのだが、なんとなく水着でダンジョンには入りたくなかった。
「ねぇ」
「え?」
寝ていたと思っていたら、起きていたようだ。
ミソギがエムに呼び掛ける。
「後藤さんってさ、ノナとは深い仲なの?」
「ふ、深い仲とは……?」
どういった仲のことなのだろうか?
深いと言っても、色々あるが。
「勿論変な意味じゃなくて。最近ノナ変わったから。こう言っちゃなんだけど、半年前までは希望を失った社畜って感じだったのにさ。別人と言ってもいいほどに変わったよ。いや、あれが本来のノナなのかもしれないけどさ」
エムは半年前のノナをよく知らない。
出会ったのは最近のことだが、昔は違ったということか。
とてもじゃないが、明るくないノナは想像できない。
「ノナは初めて会った時から凄く元気ですし、いい人でした!」
「そうなの? てっきり、君が何かしら良い影響をもたらしたのかと思っていたよ。本当、何があったんだろうね?」
エムはまだ高校生なので、大人の事情は分からない。
ただ1つ言えることは、人生はいつ何が起きるか分からないということだ。
「ダンジョン配信頑張ってね」
ミソギに背を向けた後に、寝転がったまま彼女は言った。
「あ、はい! ありがとうございます!」
あまりにも急で予想外であったが、応援の言葉はありがたい。
エムはミソギに軽くお辞儀をすると、海岸にあるダンジョンゲートへと向かった。
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