24話 これがダンジョン配信だ!
エムはダンジョンゲートを
かなり広く、光源はどこにあるのか分からないが、なぜか明るい。
要するに、いつものダンジョンである。
「よっし! 皆! こんにちは!」
黒く、カメラが付いている球体をセッティングすると、それは宙へと浮かび上がる。
ドローンカメラという奴だ。
ダンジョン内では、このように配信をするのが一般的である。
コメントに関しては、半透明のディスプレイに表示される。常に視界の右端に表示されているので、邪魔にはならない。
勿論、オフにすることも簡単だ。
・エムちゃん待ってたよ!
・いつも通りかわいいね!
・今日も無理せずやっていこう!
コメントが半透明ディスプレイに表示される。
あらかじめ枠を取っておいたので、待機をしてくれた人達もいるようだ。
「さてと、今日はとある海のダンジョンに来ています! 目指せ! 攻略!」
配信と言うこともあり、声を張り上げるエム。
それに対し、コメントも好意的なものが多く寄せられた。
「クラァッ!」
「おっと! クラゲスライムが出ました! 【ファイアボール】!」
杖から、火球が発射され、それがクラゲ型のスライムにヒットするとそれは粒子となって消滅した。
「やりました!」
弱いモンスターではあるが、倒せて嬉しいと言う感情と共に、その言葉をカメラに向けた。
◇
エムはダンジョンを進んでいく。
ここのダンジョンはフロアが1階層しかないが、その代わりフロアが長めである。
モンスターと戦闘をしない時は、雑談をしながら進んでいく。
・エムちゃんってさ、そういえばどのくらい強いの?
「どのくらいかぁ。ミニレッドドラゴンならなんとか倒せるかな!」
・ミニレッドドラゴンって何?
・小さいレッドドラゴン
・弱そう
・弱くないぞ? 確かにフェンリルよりは弱いけど
・ミニって名前だけど、相当強いよな
そう、努力を重ね、ついにミニレッドドラゴンを倒すことができるようになったのだ。
これで、中級探索者を名乗っても許されるだろう。
・じゃあ、今度レッドドラゴン討伐配信してくれ
・確かに見たい!
・無茶言うな
・死ぬぞ
レッドドラゴンはかなり強いモンスターだ。
最低でもベテランの探索者が2人いないと、かなりキツイとされているモンスターである。
当然、エムはそのリクエストに答えることはできない。
「ごめん……」
・いやいや、冗談だから!
・エムちゃん真面目なんだから、無茶ぶり駄目よ
・自分のペースで!
・自分のペースがいいよ(^_-)-☆
・↑ノナおじの真似は草
「ノナおじ?」
おじ、ということはおじさんのことだろうか?
ノナという名前に引っ掛かったが、ノナはおじさんではない。
(誰のことだろう?)
変な名前ではないし、ノナと言う名は他にもいるだろう。
それに、本名とは限らない。
・ノナおじって?
・なんか顔文字使ってるおじさん。かなりの数のVTuberの配信を荒らしたらしい
・おじさんなの?
・多分
・そのせいか、最近配信界隈では顔文字使ってると、ネタでノナおじ扱いされるな
荒らしは良くないが、顔文字に関してはそこまで悪いとは思わない。
最近できた友達が、好んで使用するからだ。
確かに同学年で使っている人は見たことないが、ノナは年が離れているので、おそらく絵文字のように、顔文字が使われていた時代があったのだろう。
◇
エムはモンスターを倒しながら先へと進んでいき、やがてボス部屋へと辿り着いた。
・おめ!
・おめでとう!
「皆、ありがとう!」
ボス部屋へと続く大きな扉を開き、そこへと入ると扉はバタンと勢い良く閉じた。
エムから離れている所に粒子が集まり、それは1つのモンスターを形作る。
(ここのボスは、ビッグクラゲスライム……! サンダーボールが効果的だね!)
心の中で予習をしていたのだが、目の前に出現したモンスターは、エムの予想した形とは違っていた。
そのモンスターはエムに向かって、雄たけびを上げる。
「えっ!? 何あのモンスター!?」
・これは仕込みか?
・いや、違うだろ
・エムちゃんの言う通り、このモンスター何?
・上級モンスター、デスゴブリン……
・そいつ強いのか?
・確実にミニレッドドラゴンよりも大幅に強い。というか、やっとミニレッドドラゴン倒せるくらいの実力だと普通にやばい
デスゴブリンと呼ばれたそれは、普通のゴブリンよりも大きく、2m程の大きさだ。
筋肉の量も凄く、頭から噴火したかのように血が噴き出しており、それが地面に絶え間なく流れ続けている。
基本ダンジョンのモンスターは血が流れないので、あれは血のような何かなのだろう。
大体あんなに血が流れて、無事なハズがない。
「や、やってみるよ!」
ここまで来たら、いくら相手が強そうでも、やるしかない。
エムは【ファイアボール】を発動し、杖から火球を発射する。
火球はデスゴブリンにヒットするが、効いているのかは微妙で、こちらへと向かって来る。
・効いてなくね?
・強い技で一気に倒すしかない!
・そういえば、エムちゃんってファイアボール以外あんまり使わないよな
(あれを使うしかないみたいだね!)
エムは杖を両手で構えると、そこに意識を集中させる。
「【メガファイア】!」
先程よりも大きな火球が、杖から発射される。
そこまで早い攻撃ではないが、動きの遅いデスゴブリンにならヒットするハズだ。
「ゴブァ!」
「え?」
デスゴブリンは「邪魔だ」と言った感じで、火球を右手で払い除けた。
・ちょ、マジでやばくないか!?
「ひっ……!」
エムは腰が抜けてしまう。
これではこの前と同じではないか。
それに、今は配信者になったというのに、これでは駄目だ。
「皆……! 死亡シーンは見せないから安心して!」
血は出ないにしろ、断末魔などを聴かせる訳にはいかない。
エムはダンスマを操作し、球体の宙に浮かぶドローンカメラをこちらへ呼び寄せようとしたその時であった。
「ブアアアアアアアッ!」
ゴブリンの断末魔が響き渡る。
一瞬の出来事だった。
「槍……?」
槍と見間違える程に細く、一般的な槍よりも長い剣がボス部屋の扉の方から飛んできたと思ったら、デスゴブリンと同じラインに浮かんでいたドローンカメラを破壊。
そのまま、その先のデスゴブリンを突き刺し、その勢いで剣とデスゴブリンは壁にまで吹き飛ぶ。
結果、デスゴブリンは剣と一緒に壁に突き刺さる形となった。
そして、なぜかその一撃で粒子となり消滅した。
「倒れた……? あんなに強そうだったデスゴブリンが一撃で……?」
エムは扉の方を向くと、そこには勇者のような、露出度の低いアイドルのような、どこか高貴さを感じさせる衣装を身にまとった女の子が得意げな表情で立っていた。
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