16話 新武器ゲット!

「完結まで一気読みできて、最高!!」


 ミソギと遊んだ翌日、つまりは月曜日。

 ノナはネットカフェで、昼間からジュースを飲みながら漫画を読んでいた。


 どのような漫画を読んでいたのかと言うと、元の時代で好きだった漫画だ。

 今は2024年。つまりは2009年から数えて15年後なので、多くの漫画は連載を終了している。


 そんな漫画を一気読みする為に、ネットカフェに来ているという訳だ。

 ちなみに先週も同じような感じで、ネットカフェで漫画を読んだり、アニメを見たりして過ごした。


 そろそろダンジョン探索も本格的に始めよう。

 ノナはネットカフェをあとにすると、近くのダンジョンを調べたが、少し気になった場所があったのでそこへ先に行くことにした。


「ここ、私の秘密基地だったんだよね」


 森の中にある、草の生えていない少し広い空間を秘密基地ということにしていたのだが、そこも草だらけとなっていた。

 15年も経てば、変わるのだろう。


「凄い草だねぇ」


 現在は草だらけの、そこの空間へと足を踏み入れると、次の瞬間には洞窟の中にいた。

 洞窟なのに、なぜか明るい。


 そして、ノナの体は中学生の姿になっており、服装も派手な私服ではなく、村人装備となっていた。


「こんな所にダンジョンがあったんだ!」


 こんな所にダンジョンがあるとは。

 ネットを見ても、ここにダンジョンがあるという情報は出て来なかった。


「ってことは、私が最初に発見しちゃった系!? やったー!!」


 と喜んだのだが、そこにはモンスターもおらず、1分ほど歩くと行き止まりだった。


「つまんなっ!」


 もっと、広大な自分だけの冒険を味わえると思っていたのだが、そんなものはなかった。

 だが、ここでノナはとある物の存在に気が付く。


「ドロップアイテムが入っているキューブだ」


 行き止まりの所に落ちていた。

 ノナはキューブに触れると、中から武器が出てきた。


 その武器とは……。


「け、剣!?」


 2m程の細長い剣だ。

 両手でも持ちやすいように握りの部分がへこんでいるだけで、ほぼ真っすぐな銀色の剣であった。


 人によっては槍と見間違うかもしれないが、先端は剣らしく鋭くとがり、両側に刃はしっかりと付いている。


「見た目に反して軽いっ!」


 2mの剣だ。本来であれば、バランスを崩さないように持つだけでも、キツイだろう。

 しかし、なぜか重さに関してはスマホくらいの重さしかない。片手で持っても、簡単に振り回すことができた。初期装備のショートソードよりも、振り回すのが容易であった。


「あれ? なんか揺れてない?」


 ダンジョンが大きく揺れている。

 地震である。


「これ出た方がいいよね! とにかく、この剣は長いから、今日の所は収納袋に入れてっと!」


 後で丁度いい大きさの鞘を見つけなくては。

 ノナはダンジョンから脱出する為、出口へと走る。


 ダンジョンから出ると、ダンジョンへと繋がるゲートは消滅してしまった。

 あのままダンジョン内にいたら、どうなっていたかは分からないが、おそらく良いことはなかっただろう。


「危なかったぁ!」


 それにしても、手に入れた剣の実力を確かめていない。

 剣の名前さえも、まだ確認していないくらいだ。


 ノナは予定を変更して、最初に行ったデパートのダンジョンへと向かうと、そこで先程の剣を収納袋から取り出した。

 地味な巾着袋からの登場なので、あまり格好良くはない抜刀動作だ。


「いやぁ! これはシンプルだけど、中々に派手だね!」


 シルバー一色の剣だが、その長さからかなり目立つだろう。

 ノナはショートソードの代わりに、今度からこの剣を装備することにした。


「ステータスオープン!」


 すると、現在の装備などが書かれたウインドウが出現した。


装備:村人のシャツ、村人のズボン

武器:名もなき剣※自分で名前を決めてください

スキル:ダブルインパクト

アーツ:流星群


「名前がないの!? 急に言われてもなぁ……う~ん。こういうのって後で変更できなさそうだし、後で考えようっと!」


 今の所は仮として、シンプルにシルバーソードと呼ぶことにした。

 そんなノナの目の前に、スライムが現れた。水色のスタンダードなスライムである。


「さてと、スライムでこの剣の実力を確かめてみようかな!」


 ノナは右手でシルバーソードを持ち、スライムを横に薙ぎ払うように斬り付けた。

 重量はスマホと同じくらいの剣なので、振る速度も速い。


 スライムは一撃で粒子となって消滅した。


「やば……!」


 前のショートソードとは比べ物にならないくらいの攻撃力だ。

 それに、このリーチの長さに重量。ダンジョンに詳しくないノナですら、それが強いものだということは、理解した。


「後は格好良く抜刀できれば言うこと無しなんだけどなぁ……」


 流石にこの長さの剣を収納できる鞘は早々見つからない上に、見つかったとしても戦闘じゃない時は邪魔になるだろう。

 今は収納袋を鞘代わりにするしかない。


「とにかく、偶然とはいえ、いい武器を見つけた!」


 後は村人装備をどうにかしたい所だ。

 ダンジョン内では、エムのように髪の毛も染めてみたい。


 そんなことを考えていると。


『小娘! この前はよくも我に恥をかかせてくれたな!』


 声が響いた。

 実際に耳に入るのではなく、脳内に響く感じだ。


 言葉だけ聞くと、男性っぽい言葉使いではあるが、実際脳内に響いているのは女性の声である。


「だ、誰っすか?」

『我だ!』


 ノナの目の前にやって来たのは、白銀の毛を持つ大きな狼であった。

 つまりは。


「フェンリル!?」

『いかにも!』

「な、なんで喋ってるんすか!? あっ、でも! 少年漫画ならこういう敵は、最終的にデレて仲間になる感じのパターンだし、もしかして仲間になりたいとか!?」

『仲間になどならぬ! それと、喋れるようになった理由か? いいだろう! 冥途めいどの土産に教えてやろう!』

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