17話 スタンピード
『話すことができるようになった理由……それは我が意思を持ったからだ!』
「意思!?」
ダンジョンのモンスターは、人間を見つけ次第、襲い掛かっている者が多い。
となれば、全てのモンスターが意思を持っているのは当然だと思うのだが。
「どういうこと!?」
『簡単なことだ。ダンジョンに生息しているモンスターは、本能は備わっているが、基本的に意思というものは持ち合わせていない。テイムとやらで、絆を深めると徐々に意思というものが生まれては来るらしいがな。要するに人間と何らかの関係を築いて、初めて意思というものが生まれるという訳だ』
凄く分かりやすく、説明をしてくれた。
「けど、それって喋れるようになったのと関係あるの?」
テイムのことは、ダンジョンのことを調べている時に、軽くではあるがノナも調べた。
しかし、テイムをするとモンスターが人語を話せるようになるという情報は見当たらなかった記憶がある。
『関係があるかは、正直不明だ!』
「フェンリルも分かってなかったんだね……」
『まぁな!』
「というか、人間となんらかの関係を築くと意思が生まれるってことは、誰かにテイムされたの?」
『されていない! 我はお前を倒したいという復讐心から意思を得たのだ! つまり、宿敵という関係だ!』
「ちょっと待ってよ! どうして私のことをそんなに恨んでいるの?」
『そんなの簡単だ! 我があそこまで痛手を負ったのは初めてだからな!』
「あ、そうなの?」
あの時は探索者になって間もなかったハズなのだが。
それほどにまで、アーツ【流星群】が強力だったということだろう。
『今度こそお前を殺すぞ!』
「ちょっと! こっちは初心者なんだよ!?」
『問答無用!』
フェンリルがノナに向かって走り、ジャンプをすると、上空から噛みつき攻撃を仕掛ける。
ノナは剣で薙ぎ払うと、フェンリルは吹き飛ぶ。
『なぬうううううう!?』
「おお! この剣強いね!」
この剣があれば、少しは戦えるかと思っていたが、想像以上であった。
『こ、小娘!』
フェンリルは立ち上がる。
斬られた所は、グロテスクに出血している訳でもなく、青白いエフェクトのようなものが少しキラキラしており、どこかゲームのようだ。
「大丈夫?」
『く、くそっ! 覚えていろ!』
フェンリルは、どこかへと逃げるように去っていった。
なんとか死なずに済んだ。
「攻撃食らわなくて良かったぁ! この装備じゃ流石に耐えられそうにないからね」
エムはフェンリルに勝てなかった。
あのベテランっぽい装備のエムがそうなのだ。彼女がかなり強いモンスターだと言うことは、ほぼ確定だろう。
そんなモンスターからの一撃を食らわなくて、本当に良かった。
「装備とかって、どこに売ってるんだろう?」
こういう時は、冒険者ギルドに行って聞いてみよう。
ノナはデパートのダンジョンから出ると、少し遠いが、冒険者ギルドのあるスカイツリーへと向かった。
正確にはスカイツリーの前にあるダンジョンで、その中に酒場のような冒険者ギルドが設置されているエリアがあるのだ。
ノナはそこへ行き、受付の人にたずねる。
「装備ってどこで買えますか?」
「装備でしたら、ここの冒険者ギルドを出て、あっちの方へ少し歩くと防具屋と武器屋がありますよ。そのエリアもモンスターは出ませんので、安心してお買い物ができますので、ぜひ楽しんでくださいね」
「ありがとうございます!」
ということで、防具屋のあるエリアへと歩みを進める。
相変わらずここのダンジョンはスタッフの管理が行き届いており、弱いモンスターしか出現しない。先程からスライムばかりだ。
と思っていたのだが。
「グオオオオオオオオオオッ!」
「うわっ! なんだ!?」
赤いドラゴンが、30匹くらいこちらへと向かってきた。
幸い平日なので、周りに人はいない。またまたシルバーソードに頼るとしよう。
ノナは、収納袋から再びシルバーソードを取り出した。
2mと長いので、周囲に人がいる時はあまり豪快に振り回せない武器ではあるが、今は大丈夫そうである。
ノナはドラゴンの群れに向かって、何回も薙ぎ払う動作を行う。
「とりゃああああああああああああああっ!」
中々に耐久力があるドラゴンだったのか、振り回して10回くらい攻撃を当ててようやく倒せることができた。
初心者向けに整備されているダンジョンだからこそ、こういったことが体験できるのだろう。本来であれば、ドラゴンはおそらく強いモンスターなのだろうが、今のドラゴン達はそうではなかった。初心者向けドラゴンということだろうか?
ドラゴンが粒子となった後、ドロップアイテムが入ったキューブが次々と地面に転がる。
それに触れると色々と出てきたが、1つ1つ調べるのが面倒だったので、とりあえず全て収納した。
ノナはシルバーソードも収納袋にしまうと、目的地へと向かう。
防具屋と武器屋があるエリアへ到着すると、展示されている防具を眺める。
「重そうだなぁ」
銀色の鎧を前にして、ノナは店員に聴こえないようにつぶやいた。
「防具は迷うから、とりあえず、髪でも染めようかな」
どうやら、このエリアでは美容室もあるようなので、染めて貰うことにした。
「髪染めてください!」
「ご希望のカラーは?」
「シルバーで!」
「銀髪ですね!」
ノナのセミロングの髪の毛は、美容師の力で見事銀髪へと変わる。
かなりファンタジーっぽい髪色になったと、ノナも鏡を見て感じた。
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