15話 漫画のセリフでかっこつけてみた!

 元の時代のミソギは、ノナと同じく彼氏のことなんて考えたことがなかった。


「ミソギ、彼氏欲しいなんて言ってたっけ?」


 ノナは困惑した表情で笑いながら、ミソギに問う。


「え!?」

「あ、いや、ほら! ミソギって私と同じでそういうのに興味なかったからさ!」

「い、いつの話……?」


 顔を引きつらせながら、ミソギは答えた。


「えええええええ!? 何々!? ミソギも男の子とらぶちゅっちゅしたい年頃になっちゃったのー!?」


 ノナは両腕を真上にあげ、椅子からひっくり返りそうなくらいに驚いた。


「いや、当たり前だし……」

「そうなの!? なぜ!?」

「なぜって、もうそういう年齢だし……。ノナもそうじゃん……」

「そうなの!? 人って変わるもんだねぇ!」


 あまりの驚きに、つい口に出してしまう。


「それは変わるよ。ノナだって変わったじゃん」

「そうかな!? あ、そうか! そうかもね!」


 精神は中学生なのだ。

 この時代のノナを知っているミソギにとっては、変わり過ぎだと感じているだろう。


「ノナは彼氏諦めたの?」

「う~ん。あんまりそういうのに興味が持てないんだよねぇ」


 ダンジョン探索や元の時代に戻る方法を探すなど、やりたいことが色々とある。

 それに、元の時代に戻ってもそんなことをしている場合ではない。やりたいことが沢山あるのだ。


「というか、どうして彼氏なんか急に?」

「別に急にじゃないけど……。ただ、どうしてって聞かれると、どうしてだろう?」


 ミソギは優しく笑いながら、下を向く。


「って、自分でも分からないの!?」


 いつもボケに回っているノナであったが、思わず突っ込んでしまった。


「深く考えたことなかったけど、どうしてだろう? でも親にも、「後悔するから、そろそろ結婚相手探しなさい」って言われてるし、それが一番の理由かな? 後は彼氏作らないと、変な人だと思われるし……」

(じ、次世代のロボットになっただと!?)


 元の時代のミソギは、しっかりと自分の意思で「かみ殺す」と叫んでいたのだが、今のミソギからはあまり自分の意思が感じられなく、風紀委員長からロボットになってしまったのかと、心の中で突っ込んだ。

 それに、変な人だと思われて嫌だと言う点に引っ掛かった。


「というか、ミソギって昔は変わり者だって言われて喜んでなかった? 私もそうだけど、こう、人とちょっと違うのがなんかいいというか、遠回りに変人を自称していたような気がする! だから、まぁいいんじゃないの?」

「昔はそうだったね。今思うと完全に中二病だったよ」


 ふと懐かしむように、ミソギは微笑んだ。


「中二病ってなんだっけ? まぁいいや! ただ、今のミソギは、なんか後悔する原因を作っているような……。う~ん」

「え?」

「いや、悩まなくていいことを誰かに言われて悩んでるんでしょ? それこそ後々悩んでたことを後悔しそうじゃない? って言っても、私も後悔したことあるけどね!」


 ノナはこの前体験した後悔した出来事を話した。

 ある日突然、好きだったラーメン屋が閉店してしまった出来事だ。


「つまり、二度と私はそこのラーメンを食べられなくなっちゃったんだ……」


 思い出すだけでも、ため息が出る。


「他にも色々あるよ? 例えば、突然日課のように見ていた動画が消えっちゃったりだとか……後は……って、後悔ばかりかっ!」


 思わず自分自身に突っ込む。

 今日はなんだか、突っ込んでばかりな気がする。


「ま、とにかくさ! 『生きていれば後悔することなんて山のようにあるんだ! 後悔しない生き方なんて無理ってもんよ! 後悔しまくるのは確定な人生なんだ! だったら、自分の好きなことをして思う存分後悔しようぜ!』」


 ノナは内心思った。


(決まった! 私かっこいい!)


 実はこのセリフ、漫画から引用したセリフである。

 どこかの中古屋で立ち読みした本だったので覚えていないが、今こそが使い時だと思ったのだ。


「どう? 今のセリフ、凄くかっこよくなか……」


 「かっこよくなかった?」

 そうノナが言いかけた所で、ミソギが涙目で言う。


「私さ……したいことしてもいいのかな……?」

「え? 何が? わざわざ泣きながら確認を取ろうとするってことは、まさか犯罪!?」


 それは流石にマズい。


「犯罪は駄目だよ!?」

「はは……違うよ。私、色々やりたいことあって……まだやってないゲームとかっ! 目指していたけど諦めちゃったこととか! 後はダンジョン探索とかやってみたい!」

「えっと? したいこと我慢してたの? どっか怪我してたの? ゲームを我慢してたってことは、手を怪我していたとか?」


 ミソギは軽く首を左右に振る。


「ううん。ノナは相変わらずだね」

「そうかな? というか、相変わらずって? 最近の私は暗いんじゃなかったっけ?」

「あ、そうだった! ごめん! なんだか昔のノナを思い出しちゃって」

(鋭いっ!)


 フードコートで食事を終えた2人は、ゲームセンターへと向かった。


「取れない!」


 UFOキャッチャーでぬいぐるみを取ろうとするのだが、中々取れなく、結局取れなかったが、良い思い出にはなった。

 その後2人はデパートを出るとバスに乗り、目的地に着くと、別れ際に会話をする。


「今日は楽しかった。ノナ、ありがとう」

「なんか元気になったみたいで良かった! 今度ダンジョンに行こうね!」


 本当は今日行きたかったのだが、明日仕事ということで、また今度ということになった。

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