14話 どういうことなの!?

 数日時が経ち、日曜日となった。

 ノナはこの前エムと出掛けた際と同じ服装に着替える。勿論この前購入した漫画を再現した指輪7種類も全て指に装着する。


「いい感じだね!」


 中々にロックな格好だなと、思った。

 部屋を出ると、電車やバスなどを使い、待ち合わせのデパートへと向かった。


 集合場所は、デパートの出入り口。

 そこでミソギと待ち合わせをしていたのだが、ノナはこの時代のミソギの顔を知らない。


 デパートの出入り口に着くと、確認の為にスマホで連絡をとった。


『近くまで来たよー!』


 電話に向かって言うと、近くにいたポニーテールの大人しそうな女性がこちらを向いた。

 おそらくミソギだろう。ノナは通話を切って話しかける。


「ミソギ! ……で、いいかな?」

「そ、そうだけど……。その格好、どうしたの?」

「かっこいいでしょ? ミソギは落ち着いた感じの私服だね!」

「もう社会人だからね……。っていうか、本当にノナどうしちゃったの?」

「どうもしてないよ! ただ、いつもの私服だと地味過ぎたからね! 腕とかにシルバー巻いたりした!」

「ああ……うん。なんだろう……。本当にどうしちゃったの?」


 ミソギは「どうしたの?」的なことを連呼している。

 しかし、それはこちらのセリフだ。


「ミソギこそ、なんか元気がない気がするけど、大丈夫?」


 顔にクマもできている。

 非常に疲れているのが、目で見て分かった。


「ノナはなんか元気だね……。仕事辞めたから?」

「それもあるけど、最近色々あってさー!」

「色々って……? 例えば?」

「そうだなぁ」


 流石に中身だけタイムスリップしたことを言う訳にはいかなかったので、ダンジョン探索者になったことを話そう。

 「色々」の内に含まれており、嘘ではないので問題はないハズだ。


「私、ダンジョン探索者になりました!」

「ふぇぇ!?」


 アニメの萌えキャラみたいな声を出して、ミソギは驚く。


「そんなに驚くこと?」

「だ、だって……ノナ、ダンジョン探索あんなに嫌がってたのに……」

「え!? 私嫌がってたっけ?」

「うん。“もう年だから新しいことはしたくない。ダンジョン探索なんてやっても、現実は何も変わらないから時間の無駄だ。どうせ若い子達みたいに強くはなれないし、今からやっても中途半端で意味がない”って、半年前に言ってたよね?」


 そんなことを言っていたとは。


「気が変わったって奴かな!」


 ノナが自信満々にそう言うと、ミソギは少し顔を下へ向けて言う。


「そう……なんだ。私も同じこと思ってたから、少し寂しいかな……」

「え!? ミソギはダンジョン探索やってないの!?」

「うん……仕事が忙しいからね。それに……」

「それに?」


 何を言おうとしているのだろうか?

 気になる。


「ここだとなんだね。とりあえず、中に入ろう?」

「だね! 何食べる!? 何食べる!?」


 ノナとミソギはデパートの中へと入り、フードコートへ向けて歩く。

 そこへ着くと、ノナはオムライスを、ミソギはハンバーグを購入して椅子に座る。ジュースも購入した。


「いただきまーす!」

「いただきます」


 デミグラスソースが非常に美味しいオムライスだ。

 チェーン店ではあるが、それだけ多くの人に認められたオムライスということなのだろう。


「あ、ノナのそれって……」


 ミソギはノナの指輪を見る。


「それ高かったのに、よく全部買えたね」

「貯金は沢山あったからね! ミソギは買わなかったの?」

「私は老後とかの為に貯めてるからね……。我慢しないと……」

「老後!? その為に我慢するって、未来の自分の介護を今からしてるってこと!?」

「な、何その考え方……。なんか、ノナ、半年前と比べて変わったよね……。仕事も辞めるし……」

「そこまで褒められると照れちゃうなぁ! ははは!」


 ここは、「褒めてない!」という突っ込みが来ると思っていたのだが、ミソギは優しく笑うだけだった。


「ノナはなんか、大人になったよね。私、置いて行かれちゃった」

「え?」


 むしろ、子供になった訳だが。

 それも、15年も前だ。


「むしろ子供になってない!? 自分で言うのも変だけどさ!」


 ミソギは首を軽く横に振る。


「今のノナは、ちゃんと自分の意見を持って、こうしたいっていう自分の意思があるよね。それに、やりたいことに対しても素直に向き合ってる。友達の成長は嬉しいけど、なんだか、ノナが遠くに行っちゃったみたいで、少し寂しいかな……なんてね」


 ミソギは誤魔化すように、優しくクスリと笑った。


(ど、どういうこと!? え!? どう考えてもミソギの方が大人だと思うんだけど! 背も高くなったし! いや、それ言ったら今の私もそうだけど!)


 からかう為に冗談で言ったのかと思ったが、表情を見る限り、その可能性は低そうだ。

 だからこそ、ノナは困惑してしまった。


「私と同じで、ずっと子供だと思ってたんだけどな……」

「えっと、うん! 私の方が全然子供だよ!」


 何せ、実際に中学生の精神が入っているのだ。


「私の方が子供だよ。例えば、彼氏もできないし……。って、これはノナもだったよね。今はどうか分からないけど」

「彼氏!?」


 ノナもそうだが、ミソギも恋愛には興味がなかったハズなのだが。


(一体どういうことなんだ!?)

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