2話 ダンジョン
ノナは電車に乗ると、つり革に掴まり、辺りを見渡す。
(ほとんどの人が携帯電話を触ってるなー)
携帯電話がそんなに楽しいのだろうか?
まぁ、未来の携帯電話だ。おそらく、何か面白い機能でもついているのだろう。
(私も電車の中でP-SPで音楽聴いたりするし、多分そんな感じだよね。イヤホンしてる人も多いし。なんかコードがないけど、多分あれだよね、無線的な?)
目的の駅へと突くと、電車から降りてしばらく歩く。
道に関しては、元の時代と比べると変わっている所も多いが、そこまで大きくは変わっていなかった。
そのおかげで、無事に実家に到着した。
「というか、私って今もここに住んでるの?」
現実を直視したくはないが、今のノナの体は15年後の肉体だ。
つまりは、今年29歳だ。1人暮らしをしているかもしれない。
というか、過去から来ました。と説明をして、驚かれないだろうか?
もしここにノナが住んでいないとしたら、いきなり帰って驚かれる可能性もある。
「やめておこう……」
幸いにもまだ外は明るい。
とりあえず暑いので、デパートに入ると、携帯電話を触る。
ロックが掛かっている。
パスワードは分からないので、それっぽいのを試そう。
何回目で成功するのだろうか?
そう考えていたら。
「よしっ! 開いた!」
一発で携帯電話の画面ロックを解除することに成功した。
パスワードは、ノナの誕生日だった。
「これ、なんか色々あるんだけど、触って大丈夫なのかな?」
様々なアイコンが画面に並んでいる。
慎重に触らなくては。
「色々できそうだし、便利そうではあるんだけど、使い方が分からないなぁ。あっ! そうだ!」
ノナは名案を閃いた。
携帯電話ショップへ行くと、ノナは立っている店員に話しかける。
「すみません! これって、どうやって使うんですか?」
「は、はい?」
「あ、いきなりすみません! この携帯電話で何ができるんですか?」
ノナは、右手に握りしめた自らの携帯電話を左人差し指で差しながら言った。
「!? しょ、少々お待ちください」
店員は驚いたような表情をすると、奥へ行き、戻ってきた。
「こちらへお座りください!」
「はい!」
ノナは質問責めをすると、今の時代の携帯電話はスマホとも呼ばれていること。それとインターネットやゲームなど、これ1つで色々できることを学んだ。
「ありがとうございました!」
「いえいえ! あ、そうです! 新機種でおススメがあるんですけど、今お時間ありますか? 今でしたら新しいプランもありますよ!」
「すみません! プランとかよく分かりません! 全部お母さん任せなので!」
「へぁっ!?」
店員はポカーンと口を開いて固まってしまった。
「本当にありがとうございました!」
「あ……はい」
ノナはスマホショップをあとにした。
◇
ノナはデパートの椅子に座りながら、インターネットで検索をする。
しばらくすると、【ダンジョン】という文字が目に入ってきた。
「ダンジョン!? ゲームみたいじゃん!」
調べてみると、この時代には、実際にダンジョンというものがあるらしい。
中へ入ると、モンスターがいるなど、ゲームでおなじみの光景が広がっているとのことだ。
「よしっ! ここの近くにもあるっ! 行くぞー! 日曜だしいいよね?」
ノナはデパートから出ると、そこから徒歩1分の所にあるダンジョンへと向かった。
ダンジョンの入り口の外観は、紫色の歪んでいる空間のような感じだ。
ワープホール的なものだろうか?
「よし! 入るぞ!」
他の人達もワープホールのような所へと入っていく。
ノナも決心をすると、その空間の目の前に立ち、前進する。
「おお! 広い洞窟だ!」
ダンジョンへ入り、辺りを見渡すと、かなり広い洞窟であった。
理由は分からないが、非常に明るい。
おそらく、ダンジョン内の特殊なエネルギー的な何かだろう。
「って、あれ!? 戻ってるじゃーん!」
先程まで、大人の姿のノナであったが、中学2年生の姿になっていることに気が付く。
髪型もこの時代ではロングだが、元の時代と同じく、セミロングに戻っていた。
「若返りの効果があるのかな!? とにかく、やったー!」
ノナは飛び跳ねて喜んだ。
理由は分からないが、元の中学生の姿に戻ることができた。
とりあえず、これだけでもダンジョンに入ったかいがあったというものだ。
しかし、ダンジョンから出たら、また大人の姿になってしまうのだろうか?
まぁ、考えていても仕方がない。
とにかく折角ダンジョンに入ったのだ。楽しまなくては損である。
「というか、見た目もだけど服も変わってるね」
こう言ってはなんだが、RPGで村人が着ているような、ハッキリ言って戦闘には向いてなさそうな服だ。
ここがゲームのようなダンジョンなのであれば、装備などもここで調達しろということなのだろうか?
「ステータスオープン!」
別に言わなくてもいいらしいのだが、慣れないとウインドウが出現しない時もあるようなので、口に出して言った。
ステータスに表示されているのは、「装備」、「武器」、「スキル」、「アーツ」だけである。レベルは隠しステータスなのか、はたまた存在しないのか、見当たらなかった。
装備:村人のシャツ、村人のズボン
武器:ショートソード
スキル:ダブルインパクト
アーツ:なし
どうやら、本当に村人装備だったようだ。
これで戦えるのだろうか?
「えっと、スキルとアーツってなんだったっけ? このダブルインパクトっていうのが私のスキルみたいだけど、押してみれば分かるのかな?」
ノナは、【ダブルインパクト】の項目をタッチした。
【ダブルインパクト】
物理ダメージを与えた時に発動可能。追加でもう一撃分のダメージを与える。
1日に1度のみ使用可能。
「なるほど! 1回攻撃が当たっただけで、2回当たったことになるんだね! これは便利だ!」
最初から覚えているスキルが平等かは分からないが、もしランダムだとしたら、かなりの当たりではないだろうか?
ただ、1日に1度というのが気になるが……。
「きゃあああああああああああああ!」
女の子の叫び声が聴こえた。
ノナは、声がした方向へと走る。
「ちょっとちょっとー! 私初心者なのに、悲鳴なんて聴いちゃって、どうすればいいのか分からないんですけどー!」
聴かなかったことにするのも後味が悪い。
結局走り続けるしかなかった。
「うわ! デカイ狼だ!」
「た、助けてください!」
大きな狼に、カラフルな制服姿の少女が襲われていた。
あの狼は、フェンリルという奴だろうか? 何かのゲームで似たようなモンスターを見たことがある。
「に、逃げてください!」
先程は助けてと言ったのに。
「そ、そんな装備じゃ駄目です!」
「そうかな?」
「かみ殺されちゃいます!」
女の子の目からは、水滴が流れている。
体は震えている。これは助けるしかないだろう。
「かみ殺される? 私がそいつを……かみ殺す!」
ノナは、アニメキャラの真似をしていた友達の真似をしながら言った。
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