3話 〇〇動画流星群
かみ殺すと、言ってみたものの、果たしてこの時代にこのネタが通用するかどうかは不明だ。
「グルルルルルル!」
フェンリルはノナの方を向き、威嚇をするかのように、うなり声を上げた。
「どうしよう!?」
かっこつけてはみたものの、ダンジョン内での戦闘を行ったことはなく、どうしていいか分からないというのが正直な所だ。
絶望的な状況だが……。
「これはピンチだね……!」
ノナは、ニヤリと笑うと、その様子を見て女の子がつぶやく。
「笑ってる……? どうして……?」
女の子の表情は、あり得ないようなものを見るような表情だ。
そんな女の子に対して、敵が目の前にいるというのに、ノナは言う。
「ピンチの時こそ、燃えるってものでしょ!」
「少年漫画の主人公ですか!? というか、明らかにやばい状況なのに、喋ってて大丈夫なんですか!?」
「何言ってるの! 戦闘中はあることないこと色々喋るのが、少年漫画のお約束でしょ!」
とは言ったものの、どのように倒せばいいのだろうか?
ノナはショートソードをフェンリルに向けて両手で構えると、叫ぶ。
「ま、やってみるしかないよね! 卍か……」
「グルァ!」
言いかけた所で、フェンリルがノナに向かって体当たりをすると、ノナは壁まで吹き飛ぶ。
あまりの衝撃だったので、ノナは思わず友達にツッコムノリで、フェンリルに向けてツッコミを入れてしまう。
「っておいいいいいいいい!! 人がかっこつけてる最中に攻撃するっておかしいよね!? というか、ふっ飛ばされてスーパー激痛だよ! って……あれ? あんまり痛くない?」
なるほど。ダンジョン内では、痛覚がかなり感じにくくなっているのかもしれない。
ノナは立ち上がると、再びショートソードを右手に持ち、それでフェンリルを斬る。
出し惜しみはせずに、ここでスキル【ダブルインパクト】を発動させることにした。
「ぬぉぉぉ! ダブルインパクトォ!」
刃が当たった瞬間、更にもう一発分のダメージがフェンリルに与えられる。
「グルァッ!」
「やったか!?」
と思ったが、軽く怯んだだけだった。
「もしかして、フェンリルって、滅茶苦茶強い!?」
女の子が叫ぶ。
「こままだと死んじゃいます! ポーションを使ってください!」
「ポーションって、なんだっけ? というか、それってどこで手に入れるの?」
「持ってないんですか!?」
「いやぁ、実は数分前にダンジョンに入ったばかりで……」
ノナは照れ笑いをしながら、右手で頭の後ろをかいた。
「え……?」
女の子はドン引きしたかのような表情で、ポツリとつぶやいた。
すぐに表情をキリッとさせると、立ち上がろうとするが、腰が抜けているのか立ち上がれない。
女の子は頷くと、ノナに向けて2本の瓶を投げる。
「これ使ってください!」
ノナは飛んできたそれらをキャッチした。
「これは何?」
「緑色の方がポーションで、もう1つが……説明している暇はありません! ダンジョンに入って間もないのでしたら、効果があるハズです!」
「おお! ありがとう!」
まずは緑色の液体を飲むと、体力が回復したような気がした。
もう1つは、何やら虹色の体に悪そうな液体が入っている。
味はマズそうだが、そんなこと言っている場合ではない。
ノナは虹色の液体を飲み込むと、脳内に声が響く。
正確には声ではないような気もするが、脳はそれを声と認識している。
そんな感じだ。
『アーツ:【
「アーツを取得!?」
名前からして強そうなアーツだ。
どんな技なのか、名前からイメージするのは容易だ。
ただし、チャンスは1度きり。
「ふふ!」
ノナは勝ちを確信した笑みを浮かべた。
1度きりではあるのだが、なぜこうも自信を持てるのか?
それは……。
「少年漫画の主人公なら、こういう場合、勝ちは確定しているからね! きっとアニメなら、この辺りでOPが挿入歌として流れ出すハズだよ!」
ノナは剣を構える必要はないのだが、構えてから大声でアーツの名を叫ぶ。
「流星群!!」
ノナが叫ぶと、彼女の頭上高くから、青白い光が光線のようにフェンリルに向けて、多数発射される。
流星群なので、隕石のようなものが相手に向かって降り注ぐ技かと思っていたのだが、そこは少しイメージと違った。
キュイィーン!
「グルルァ!?」
オートで標準を合わせてくれているのか、全てフェンリル目掛けて光は降り注いだ。
フェンリルはかわそうと逃げ回るが、次々と降り注ぐ光を全て避けきることはできずに、多数被弾してしまう。
「やったか!?」
砂煙が収まると、そこにはフェンリルが立っていた。
が、向こうもかなり疲れているようで、そのままどこかへと行ってしまった。
「や、やった! なんか凄そうなのに勝っちゃったよ!」
「凄い……奇跡だ……」
ノナは女の子の元に駆け寄る。
「大丈夫? 立てる?」
「ありがとうございます」
女の子はノナの手を取り、立ち上がる。
「いやぁ、なんか申し訳ないね! 多分あの虹色の液体、重要なアイテムだったんでしょ?」
「え? ああ、はい、まぁ。ですが、気にしないでください! 改めてありがとうございました!」
「えへへ! そういえば、なんか私だけタメ口なのもあれだし、タメ口&呼び捨てでいいよ! って、名前も名乗ってなかったね! 私は……」
名を名乗ろうとした、その時だった。
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