第23話 ファルコンの悪あがき

 その頃ヘブンではエメラルドとサファイアが話していた。


「ヘブンに来たのがファルコンの連中でしょ。名前何て言ったっけ?」

「ジェイスとハウザー」

「ゲームに負けたんだから、自首してもらおうよ。償いその一よ」

「スターバックに言おうか」

「そうしましょ」


 エメラルドが説明するとスターバックは素直に聞いた。

「いいんじゃないか。 元々僕はそのファルコンのリーダー、ザック・ランバートにダウンロードするつもりだったし」

 ザック・ランバートの事だ。しかし一緒に聞いていたジェイスが渋る。

「無罪放免にしてくれないと困るぜ」


 サファイアが辛口で突っ込む。

「何言ってんのよ、悪さしたんだから逮捕されるのは当たり前じゃない。刑務所入ったら、またスターバックにアップロードしてもらえばいいじゃないの。 無罪放免なんて虫が良すぎるわ」

 スターバックが案を示した。

「分かった。分かった。まず僕がザックにダウンロードして三人とも自首させる。その後、警察側と交渉して保釈か何かしてもらうよ。これでいいだろ」

「分かってんじゃないの」



 ◇ ◇ ◇



 十五分ほどさかのぼり、地球。

 ファルコンのメンバーがフロートクルーザーと呼ばれる大型の浮上車両で大学に向かって飛んでいたところ、警察車両が五台ほどブロックした。どちらも空中十メートルほどの高さで停止している。

「ちっ、邪魔が入ったな」

 ハウザーが愚痴ると、ザックが命じた。

「アバターを用意しろ、少し遊んでやろう」


 警察車両からはヴィンセント・カーライルのアバターがレーザ

ーソードを片手に出てきた。それを見たジェイスが笑った。

「おい、ヴィンセントが出てきたぜ、珍しい。国でトップレベルのパイロットとやり合うのは久しぶりだな」

 ザックも同意した。

「楽しくなりそうだ」


 ヴィンセント(のアバター)がフロートクルーザーに向かって叫んだ。

「ザック、あきらめろよ。データはすでにコピーできた。もう意味が無いぞ」

 クルーザから三人のアバターが出てきた。ヴィンセントは驚いた。

ザックのアバターだけが身長が三メートルほどあり、ばかでかい。(こいつは軍用の特注品だな)


 ザックが答えた。

「ヴィンセント、久しぶりだな。たまにはフィールドワークもするんだな」

「ああ、そのでかい体、少々やっかいそうだな」

「新品でね。試すのにちょうどいい」

「もう、意味が無いって言ってるだろ。自首しろ」

「ほう、時間的に無理だと思ったんだが、まあいい。データ消去はあきらめるが、逮捕されるつもりは無いね」

 その時、ファルコンの後方に別の車が到着し、アレックスのアバターが出てきた。ヴィンセントが叫んだ。

「アレックスも来たぞ、鳥の巣のトップだ。お前は囲まれている。あきらめた方がいい」

 ザックは拒否した。

「嫌だね。俺たちは常に自由だ。少し遊んでやるよ」


 そう言うと、ザックの巨体がソードを切りつけてきた。片やジェイスとハウザーはアレックスの方に向かって行った。

 ザックとヴィンセントの対決はソードだった。ザックはその巨体を生かしたパワーで、ヴィンセントは芸術的とも思える身のこなしとスピードで、互角に刀を交じらわせた。

「ヴィンス、相変わらずの腕だな」

「ザック、その巨体は反則だな。どこに作らせたんだ」

「軍事機密さ」


 一方アレックスはジェイス、ハウザーと一対二で苦戦していた。 しかし捜査官達がドローンや警察のアバターを出して加勢すると次第に攻勢になり始めた。ハウザーが言った。

「アレックス、お前腕はいい。俺らの仲間にならないか? 鍛えてやるぞ」

 しかしアレックスがそんな悪の誘いに乗るはずがない。

「ふざけるな、悪党どもが。そろそろ観念しろよ」

「まあ、今回はこれくらいにしてやるよ。またな」

 ジェイスはそう言うとハウザーとクルーザーに向かって飛んで行った。

 ザックも隙を見てクルーザーに飛んで行った。

「ヴィンセント。また会おう」

 こうしてファルコンの三人はクルーザーで立ち去ろうとした。

 ちょうどその時、ヘブンではスターバックが地球のザックに意識を乗移る作業を進めていた。ジェイスは既に融合が終った。

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