第22話 エミーの戦闘
第一群の方はクレイがその確かな腕で、フィル達の車に近づくのをある程度防いでいた。抜けてくる敵機はエミーとミアが次々と叩き退けた。
クレイが大声で叫んだ。
「ファイアーフライの大群と、変な大型機体がそっちにいったぞ、爆撃機かもしれないから気をつけろ」
エミーが言った。
「ミア、近くのファイアーフライを落として。私はあの大型機体を処理する」
エミーがどう処理するか機体を下から見上げていると、端の穴のようなところから、ポトポトと何かが落ち始めた。エミーにはそれが忌々しいものだとすぐに認識できた。
「まさか、ヘビ?」
ミアがまずいと思い叫んだ。エミーはへびが苦手だ。
「エミー、サイドワインダーよ。落ち着いて一匹ずつ撃ち落とせばどうってことないわ」
「ギャー」
エミーの耳にそのミアの声は全く入らず。くねくねと降下してくるサイドワインダー一匹につき粉々になるほどの銃弾を撃ち込み、その自慢の銃撃の速さを無駄に浪費していった。
「ヘビ! ヘビ! ありえない」
操作しているエミー本人も顔がこわばり、視点が合っていないのをサラとクロエが心配そうに見つめた。落ちてくる数がどんどん増えてきた。
「ギャーッ」
エミーはパニックになった。彼女の悲鳴の方がうるさい。
「エミー、落ち着いて」
ミアがエミーの両肩を掴んだ。エミーは銃の出力を最大にして、機体毎吹っ飛ばそうと機体の中央に集中照射した。
「エミー、そんなことしたら機体が割れて……」
ミアが言った瞬間中央部から機体が三つに割れて中央から大量のサイドワインダーがエミーのアバターの頭に向かって落ちてきた。
「ギャーッ」
エミーは三度目の悲鳴とともに銃を乱射した。
サラ、クロエ、ミアは目を伏せて、そして恐る恐るエミーのアバターを見た。
そこにはサイドワインダーが複数頭に付きまるでメドゥーサとなって固まっているアバターがいた。
そしてサラ達の傍には泡を吹いて気を失なって倒れているエミーの姿があった。ゆすっても起きる気配がない。
そして、ヘブンではやはり同時に気を失ったエメラルドがいたのだった。
今や車両の周りはサイドワインダーで溢れ、さらにはクレイの刀をすり抜けてきたドローンやファイアーフライが押し寄せてきた。
フィルがサラに叫んだ。
「サラ、おまえがエミーのコントローラを使え。まだ操作できるだろ」
突然の指示にサラは慌てた。
「えー? もうしばらくやっていないから、自身無い」
「できるはずだ、時間が無い。やってくれ」
「うー。この歳で実戦とは…… わかったわ」
サラはエミーのグラスとコントローラを装着し、エミーのアバターを操作し始めた。幸いヘビが特別苦手ではないので、昔とった杵柄で、近くのサイドワインダーから順に処理していった。
数分かけてある程度処理したサラは言った。
「手がつった。もうだめ、クロエ代わって」
今度はクロエが驚いた。
「私は何十年もやっていないのよ。無理無理」
「できる。私より昔は上手だったんだから。社長、部下の責任取って」
「それとこれとは別よ」
そう言いながらもサラの手は痺れてもう無理なので渋々、コントローラを受け取った。
クロエはかなり下手ではあったが、残っていた数えるほどのサイドワインダーと、動きがやや遅いファイアーフライを片付けた。
そうこうしている内にクレイが戻ってきて、エミーも意識が回復し始めた。
クレイが言った。
「攻撃型の機体はほぼ撃ち落とした。後は例の同じ大型機体が数機近づいているが、サイドワインダーくらいしか入っていないはずだ。軍も頭悪いよな、あんなもの何千匹も持ってきてどうするんだ。計算間違ってるんじゃないか?」
それを聞いたエミーはなぜか今度はパニックにならず座った半目でエメラルドに念じた。
「エメラルド、何とかするのよ。わかってるよね」
ヘブンではやはり意識が回復し目が座った状態のエベレストを見つめる妹のサファイアがいた。
エメラルド同様にダウンロードコントローラを片手に持って姉の異常な顔を見つめた。
「お姉ちゃん、顔が怖い」
エメラルドは別人のようになって地球に、神の立場で特別な操作をした。
「何するのお姉ちゃん、それってやばいやつ!」
地球の上空で、空に黒い点のような穴が開いた(!)その中心が真っ赤になっていった。
同時に、車やアバター、周囲のあらゆる生物が各々の大きさに見合ったバブルに囲まれた。防御用のカプセルのようだ。軍の機体は覆われない。選別されている。
フィルが叫んだ。サファイアもヘブンで叫んだ。
「神の兵器だ。目を瞑れ」
その直後、赤い点から信じられない強力な円錐のビームが発射され、一瞬で半径五キロメートルの円内を消滅させた。バブルに守られた生物以外は全て吹っ飛び、草原、林だったところは一瞬で土、石だけの浅いクレータと化した。敵機体も一掃された。エメラルドは禁断の武器を使ったのだ。
その後バブルに守られた生物は五キロ圏外にスーッと移動してから解放され、クレータに残るは人間とアバター、車だけだった。
「お姉ちゃん、やっちゃったね……💦 地球人、気が付くわよ、栽培されているって」
地上では、クレイが呟いた。
「今の……なんだ? ものすごい威力」
クロエも、
「核爆弾? じゃないよね」
エメラルドに命じたエミー自身も、この有様には目が点になった。
「エメラルド。いくら何でも、これは無いよね……」
心の中でエメラルドが答えた。
「ごめんなさい……」
やがてサーシャとリン、カイルがやってきた。リンがエミーに声をかけた。
「これ、どういう事?」
「わからない。けど敵は一掃された」
次にサーシャがエミーに声をかけた。
「大丈夫? エミー・サマー。顔色が悪いよ」
「え、ええ」
「私サーシャ、何回か会ったことあるけど覚えているかな?」
「もちろん」
リンが言った。
「この人すごいのよ。アレックスやエミーよりも動きが速くて。特に何とかモードだと目で追えないくらい」
カイルが補足した。
「サファイアモード」
「そう、青い稲妻だね」
エミーがはっとしてサーシャを見つめた。(同時にヘブンではエメラルドがコントローラを持った妹をやはり見つめた)
「あなた、まさかサファイア?」エメラルドの意識で訊く。
「ばれちゃった」
「いつから?」
「一年くらい前からかな? パイロットって面白くって」
「サーシャが、まさかサファイアだったなんて」
「へへ」
リンとカイルには今一つ話の内容がわからない。
「サーシャって本当はサファイアって名前なの?」
エミーが言った。
「少し違うけど、そう言う事。クレイ達のところに集まりましょう」
そのクレイはフィルと話していた。
「ファルコンの方はどうなっているんだろう。データは回避したから、もう無視してもいいくらいだが」
「アレックス側とヴィンス側の挟み撃ちになるはずだが…… 確認してみる」
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