第21話 青い光 サファイアモード
クレイが捜査官の一人に言った。
「キーは? アナのアンドロイドはあとどれくらいで到着する?」
「後五分程度です」
「よし、ではファルコンの位置はわかるか?」
「大学までは二十分くらいの位置かと。追跡チームが追いつきます。別の警察チームも待ち伏せできそうです」
「よし何とかなるな」
まもなくアナのアンドロイドを乗せたサーシャの高速フローターが到着した。サーシャのアバターが話す。
「クロエ社長お待たせしました。隣はクレイさんですね。フィル、サラ。お久しぶりです。フィル、大丈夫でしたか?」
フィル・ライアンが答えた。
「ああサーシャ、ありがとう。早かったね」
「最高速で来ました。では作業をどうぞ」
フィルはアナのアンドロイドの手首にコードを接続し、作業を始めた。しばらくしてフィルが言った。
「よし、データの退避が完了した。これで無事解決だ」
そして、ジェット機も到着して、サーシャ本人とリン、カイルが出てきた。互いに紹介し合ったあと、全員が撤収の準備を始めた。
少しして変な音が聞こえて来た。ミアが遠くを見ながら言った。
「まだ解決していないようよ、あれ見てよ」
皆がミアの指さす方向を見ると、黒だかりの飛行物体の大群が近づいてきた。どうやらファイアーフライも多数引き連れている。
「あれは……」サラが言った。
「防衛軍の無人機よ、なぜあんなものが……」
先行した大型ドローンが威嚇射撃をしてきた。
「こちらに攻撃してくるみたい。隠れよう」
クレイが叫んだ。
「ガイガーの仕業だ、手錠を繋がれる前にどこかに連絡していた」
クレイは車の中に拘束されているガイガーの元に駆け付けた。
「あの軍隊は何だ?お前が呼んだのか?」
ガイガーはにやりと笑って言った。
「そうだ。おもしろくなってきたな」
クレイが皆に言った。
「攻撃してくるぞ、警察車両で逃げるんだ。エミー、ミア。アバターでできるだけ防御してくれ。俺もやる」
サーシャが言った。
「私も手伝うね」
クレイが止めた。
「君は競技パイロットだろ、危ないから引っ込んでて」
「戦闘もおそらくあなたより上手よ。まかせて」
そう言うとサーシャはさっさとアバターを発進させた。続けてリンとカイルも言った。「私達も加勢する」
クレイが叫んだ。「リンとカイルはまだだめだ」
しかし二人はクレイの言葉を無視した。クレイ、エミー、ミア、サーシャ、リン、カイル、総勢六体のアバターが防衛空軍と対峙する形になった。
大量のドローンに対して六体のアバターが熾烈な戦いを始めた。アバター達は目にも止まらぬ速さで動きでソード(刀)でドローンに切りつけ、銃で撃ち落としていった。
サラとクロエはその様子を車から眺めた。
「サラ、圧巻ね。あなたの教え子達はすごいわ」
「あら、クロエ姉さん。あなたのところのサーシャこそ、飛び抜けているわよ。誘っても来ないはずだわ。鳥の巣のレベルをはるかに超えている」
第二群、第三群が来るのが遠目に見えると、サーシャ、リン、カイルは第一群の残りをクレイ達にまかせて第二、第三群に向かって飛んで行った。
エミーとミアはサラ達が乗った車両を守って、なるべく敵群から離れていった。
クレイはそれを追おうとする第一群を阻止しようと一人で奮戦している。
大量の無人機がひしめく第二群と第三群の中でサーシャは縦横無尽に撃墜しまくっていた。
リンとカイルもサーシャの技を徐々に身に着け、戦闘効率が上っていった。リンはソードを片手にカイルに叫んだ。
「カイル、楽しいね」
カイルは銃を撃ちながら答えた。
「楽しいけど、数が多すぎてきりがないぜ」
サーシャもハッスルしすぎたせいか、いい加減疲れてきた。
「面倒くさいから、一気にやるか」
そう言うとサーシャ(のアバター)は目を瞑って上空へ上昇し始めた。リンとカイルは目を見張った。その体が青く光り始めた。
「何あれ」
リンが呟いた。カイルはあっけにとられている。
上空に達した青い光を放つサーシャは目を開き、突然驚異的な速さで敵機を排除し始めた。
今まででも十分高速だったその動きはさらに二倍、三倍の速度となり、とても目で追える動きではなくなった。青い光が無限の動きをしているだけだった。
レーザーソードは長く伸び、刃の動きも速くなり、全く見えない。敵機は、瞬く間にその数を減らし、ほとんど全滅した。みなサーシャの驚くべき変化を見守るだけだった。
サーシャはリンとカイルのところに来て、言った。
「今のね、サファイアモードって言うの。覚えておいてね」
「サファイア? 確かにきれいな青色だけど……」
「いや、速すぎだろ」
第二群、三群はサーシャが片付けた。
第一群の方はどうなったのだろう?
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