第18話 地球奪還成功!

 シェルターの中でスターバックとジェイス、ハウザーが話していた。

「どうやら管理センターのやつが、場所を突き止めてやってきた様だぞ」

「スターバック。データは全部抜き出したのか?」

「ああ、終わった。もう地球は返してもいい」

 するとジェイスが提案した。

「俺たちはどうなるんだ? 逮捕されるか?」

「良く分からないな。拘束される可能性はあるだろうけど」

 スターバックが答える。

「あまりやばくなさそうだから表に出ようぜ。交渉しよう」

 ジェイスが言う。


 三人は表に出た。マークがスターバックに向かって言った。

「スターバックさん。コールマンさんの惑星をお持ちですね」

 ジェイスがスターバックの代わりに言った。

「借りただけだよ。スターバックはそう伝えておくのを忘れたみたいだがな」

 サファイアが叫んだ。

「この泥棒! 早く地球を返せ!」

 マークがサファイアをなだめてから、ジェイスに言った。

「ジェイスさん。本人の許可をとらずに持ち出してはいけませんね。『地球』はそちらの建物にありますね?」

「おそらくね」

 サファイアが怒った。「ふざけてる」


 今度はエメラルドが口を開いた。

「スターバック。あなたならわかると思うけど、『地球』は私にとってとても大切な物なんです。このようなことをしないで下さい」

 スターバックは内心うろたえたが何とか表情は崩さず冷静さを装った。一方、平然としているジェイスがマーク達に訊いた。

「地球は傷一つつけずにお返しするよ。ただし、いくつか条件がある」

 サファイアがまた切れた。

「なんで盗んだものを返すのに条件をつけるのよ。あんたおかしいんじゃない?」

 ジェイスは平然と続ける。

「地球をどうするかは俺たちが決める。もし条件を飲まないなら、地球は破壊する。地球を返す条件は二つだ。俺たちを無条件で解放すること。無条件でだぞ。もう一つは何か俺たちが喜ぶことをしろ。価値のあるものをくれるとか歓迎パーティでもいい」

 ハウザーがぼそっと言った。

「おまえ、がめついなあ。依頼人からも報酬もらって、二重取りだろよ」

 サファイアが叫ぶ。

「ふざけないで! ちょっとこっち来なさいよ。徹底的に話し合いましょう」


 それから5分間、ジェイスとサファイアが話し合いをした。なかなか折り合いがつかなかったが最後にサファイアがあきれて言った。

「XD(エックスディー)で戦って決めましょうよ。 そっちが勝ったら、条件を飲むわ。でもこっちが勝ったら無条件で返却、プラス罪をつぐなってもらうわよ。」

 ハウザーがサファイアに訊いた。

「XDって何だ?」

「ゲームよ。エクストリームドラッグスターの略。友達と時々やってる」

 スターバックも補足した。

「バーチャルで音速の乗り物を操作して障害をかわし銃で撃ち合ったりする過激なアトラクション型レースだ。対戦形式でもできる」

 ゲーム好きのハウザーが言った。

「面白そうじゃないか。やろうぜ」

 ついに、地球を奪い返せるかどうかを特殊なゲームで決めることになった。セッティングを行い、ゲームをやったことがないジェイスやハウザーの予備練習も終わった。スターバックが言う。

「いいよ。始めようか」


 サファイアとエメラルドがゴーグルなどの用意をしながら答えた。

「こちらもいいわよ」

 五人は並んで椅子に座り、バーチャルゲームを開始した。

 ジェットコースターを巨大にしたコースがうっすらと見える。最初は空に向かって5本のレールで並行して昇って行く。

 頂点からありえない加速度で五機が落下し始め、ゲームが始まった。

 超高速になった時点で五つのコースはランダムに交錯し始め、銃の使用ができるようになった。そしてあちこちから障害となるゾンビが飛び回り始めた。

 サファイアは余裕でゾンビ達を撃ち落とし、時折スターバックらに撃ち込んだ。 スターバックは器用にかわすが、ジェイスとハウザーの機体は少しずつ損傷し始めた。エメラルドはなるべく撃たれないようなコースを実直に進んでいる。

 やがて、ジェイスとハウザーは相次いでサファイアに撃墜され、新しい機体で復活した。

 スターバックだけは粘って姉妹と競っていた。

 逃げ一筋だったエメラルドが突如スターバックに狙いを定め、激しい銃撃戦の上、見事にスターバックに致命的な一発を放った。スターバックの機体はかなりの損傷を受け、スローダウンしてしまった。

 そしてジェイスとハウザーは二度、サファイアに撃墜され、三度目はサファイアの巧みな操縦で、仲間同士で衝突してあえなくリタイアとなったのだった。

 レースとしてはエメラルドが悠々の一位、銃撃戦を楽しんだサファイアが二位、ぼろぼろになった機体のスターバックが三位であった。


 五人はゴーグルを外した。サファイアが髪を振った。

「はい、お疲れ様。あなた達下手だけど仕方ないわね。初心者だものね」

 ハウザーが少し悔しがった。

「お嬢ちゃん、わざとゆっくり飛んで、銃撃戦に持ち込んだろ。汚ねえな」

「楽しかったでしょ。またやりましょ」

 続いてエメラルドがスターバックにきっぱりと言った。

「地球はすぐ返してちょうだい。それから後で地球にダウンロードしてもらうからね。トラブル解消を手伝ってもらうから、よろしくね」

 スターバックが溜息をついた。

「わかったよ。敵わないな」

 最後にサファイアが思わぬ一言を付け加えた。

「お姉ちゃん、私も地球に入るよ。たぶん一番詳しいから。役に立つよ」

 やはりこの子、今までも何度も地球に入っていたのね。

「いいわ。ちゃんと手伝ってね」

 こうして地球盗難事件は一件落着となったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る