第6話 地球はエメラルドの作品だった!

 また夜中、頭に例の声が聞こえてきた。エメラルドだ。

「お疲れ様、エミー。一週間どうだった? 良かったでしょ。動きが早くなって」

「みとめるわ。今日はよく聞かせてね、色々と」

「いいわよ。なんでも聞いて」


「まず、エメラルド、あなたは一体何者なの?」

「私はヘブンという惑星わくせいにいるわ」

「そんな星、聞いたこと無いわ」エミーが言うと、エメラルドは苦笑した。

「私達は少し進化していて、テレパシーとか体を借りることができるの。それから大事な事を話すわね。言いにくいんだけど、この地球は私が作ったの。自然にできたものではないのよ」


「地球を作ったですって? 頭がおかしいんじゃない?」とエミー。

「それが事実じじつなの。私達ヘブンの文明はレベル7。あなたたちの地球はレベル5。私はヘブンで初めてレベル5の惑星を作ったのよ」

「人工的に惑星を作る? こんな巨大なもの、あり得ないでしょう」

「本当の地球のサイズは直径三十センチメートルくらいよ、スイカくらいの大きさ」

「え、ちっさ! どういうこと?」

特殊とくしゅな容器を使えば惑星をすごく小さくすることができるの。自宅で簡単、惑星わくせい栽培さいばいってわけ」

「私達、地球ごとあなたに栽培されているって事?」

「イエス。私が作って育てたのよ」

「うそ、絶対うそ。地球は四十五億年とかたっているはず」

「時間の制御もできるのよ。地球に関しては、最初の一億年を一週間くらいで経過させるペースで育てたわ」


 エミーは頭が混乱こんらんしてきた。

「えーと、地球はあなたに作られたもので、本当はとても小さい……ねえ、そのスイカサイズの地球は本当はどこにあるの?」

「私の部屋、目の前にあるわよ。あいかわらず美しいわ。」

 エミーは怖くなってきた。エメラルドの部屋の中に地球があって、その中に私たちがいる。まるでアリのように飼育しいくされているってこと?


「エメラルド、地球を作った目的は?」

「簡単に言うと、すぐれた人間を育てるためよ。くわしくはまた今度ね」

「ヘブンってどんなところなの? どんな人類?」

「おおまかには地球に似ているよ。というか地球をヘブンに似せたんだけどね。言葉とか文化もヘブンにある程度合わせている。だからこうやって普通に話し合えるのよ。さて、一通り話したところで、じゃあ続けてあなたに入り込んでいてもいいかな?」

「了解しました」


「やったあ。円満えんまん合意ごうい。これからもよろしくね、エミーちゃん」

「円満かなあ……。まあよろしく、ヘブンのエメラルドさん。ああそうだ、最後に一つ聞いてもいい?」

「いいわよ。何?」

「あなたは苦手な物ってある?」

「うーん。ヘビかな?」

「やっぱり。私もよ」


 ―― ヘブンにて エメラルド視点してん ――


 エメラルドは初めて地球の人間と長時間話す事ができていい気分になった。目の前の容器に入った地球はきらきら輝いている。エメラルドは表彰式ひょうしょうしきのことを思い出してにんまりとした。司会の声が思い出される。


「さて2位の発表です。今年はしい。天才スターバック氏です。3連ぱならず。さて誰が天才に土をつけたのでしょうか?」

 私、天才を初出場でしりぞけたんだ。すごいよね。

「それではいよいよ、今年のシムプラネットコンテストの最優秀賞を発表します。エメラルド・コールマンさんの『地球』です!!」

 司会者が告げると、れんばかりの拍手喝采かっさいが起こった。エメラルドはステージ上で少しはにかんでお辞儀じぎをした。


 エメラルドが至福しふくの表彰式を思い出していると、妹のサファイアが部屋に入ってきた。

「お姉ちゃん、何ぼけーっとしてるの? 夕食の時間よ」

「わかった。ありがと」

「ねえ、地球からアップロードする人間を選んだ? 私、かっこいい男子がいいな」

「まだよ、候補こうほを絞ってるところ。それにもう少し成長させてからにするつもり、まずは女性よ」

「えーつまんない。四,五人ぱっと選ぼうよ。めぼしはついているわ」

「めぼし? あなた勝手に地球にダウンロードしてるのね」

「へへー。ちょっとね。固いこと言わないの」

「もう。パスワード変えるかな。あまりいじらないでね」

「はいはい。わかりました」


 サファイアは、姉のエメラルドがいないときに実はかなり地球に入り込んでいた。アバターについても姉以上に詳しい(だってひまなんだもん)。 エメラルドはそのことは知らなかった。

 シムプラネットの表彰以来、ヘブンでのエメラルドの生活は楽しく充実したものであった。しかし、しばらくして大きな事件に遭遇そうぐうすることを今の彼女は知る由も無かった。

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