第4話 実技テストの結果

 テストは終わった。校長のサラがまとめた。

「みなさんおつかれさま。校長のサラです。今日の試験はみなさんよくやったと思います。少しコメントしますね」

 サラはふだんは優しいが、テストのコメントはずばずば言う。

「まずディナーのパート。エミーは不器用ぶきようすぎ、もっと練習しなさい。ミアは逆に食べ過ぎよ」

 エミーとミアは、はずかしくて顔を真っ赤にした。


「対テロのパート。もし実弾じつだんだったらテーブルやいすは役に立たないからね。アバターの体を見てごらん。かなり当たっているわよ」

 たしかにアバターの体にはへこんでいるところが何か所もある。

「エミーは突進とっしんするだけで、まるでいのししじゃないの。もう少し頭を使って」

「サラ校長、武器ぶきが無いからしょうがないじゃないですか!」 エミーが言い返した。

「そうね。みんな、このような状況ならどんな武器や防具があると良いか考えてみてね。宿題よ」

「「ええ~ 宿題~!」」みんなの不満の声。


「さいごに救出きゅうしゅつパート。ここはチームワークも出ていてみんななかなか良かったわ。ほぼ百点よ。とかげ(リザード)を使ったのはベストね。みんなも見習って。今日はごくろうさまでした」


 その日、三人で家に帰りぎわ、エミーが言った。

「アレックス、テスト楽しかったね」

「そうだな。テロのパートはむずかしかったけどな」

「ミアの閃光せんこう手りゅう弾は良かったね。持ってきたの?」

「うん、何かないか少し考えたの」

「でもミアは食べっぷりもすごかったな。サラにばっちり見られてたね」

「エミーの分も食べてあげたのよ」

 エミーはくやしがった。

「あー、もう。帰ったらたくさんデザート食べてやる」

「それより手先の練習しろよ」

「明日から! 今日はやけ食いするの!」


 その夜、予定通りデザートをたくさん食べて、シャワーも浴びたエミーは自分の部屋でねころがった。久々にサラからもらったコメントがあんなのなんて……

 エミーはサラと出会ったころのことを思い出した。あれはタレント活動に一生けん命だったけれど、なかなかが出なかった時期だった。


「サマーさん?」 サングラスをかけた女性がエミーに声をかけてきた。

「エミー・サマーさんよね。少しいいかしら。私はこういう者です」

 渡された名刺にはアバターパイロット訓練校 校長『サラ・マイヤー』と書いてあった。


「あなたはパイロットに向いているわ。やってみない?」

「どうしてそう思うんですか?」

「あなたはアイドルになるのに、すごい努力をしてきた。そこがまずポイントよ。加えて、自分では気が付いていないと思うけど、集中力と反射はんしゃ神経がとてもいいのよ、ただ考えが浅いのよね」

 なんてことを言うんだ。


「例えば、あなたはダンスを基本から覚えようとしないくせに、パッと見様見真似みようみまねだけでプロの動きに合わせられる、すごい才能があるわ」

 エミーには、ディスられている様にしか聞こえない。


「あまりうれしくないんですけど」

「少なくともあなたはアイドルよりパイロットの方が完全に向いているわ」

「私アイドルをあきらめる気はさらさらないですけど」

 サラはうなった(この子、けっこうねばるのね)


「エミー、わかったわ。こうしましょう。まず一年間パイロットの訓練をしてみる。そのあとパイロットのアイドルとして『バーン』と売り出しましょう。あなた今でもルックスだけはいいからいけるわよ」

「だけ」は余計よけいだ。でもその話には興味きょうみがある。上級パイロットのアイドルなんて、たしかにすごい。


「わかったわ、少し考えさせてください」

「良かった。決めたら連絡ちょうだいね」

 翌日エミーはサラにOKの連絡をしたのだった。今思うと、うまくサラにはめられたなと思った。一年間、訓練をつづていく内にアイドル自体にあまり興味が無くなってきたからだ。パイロットの訓練はたいへんだけど、仲間と一緒にいることが楽しい。一人前のパイロットになりたい。そんな気持ちになっていた。

 ベッドでそんな事を思い出しながら、エミーは眠りについた……

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