第2話 久しぶりのダンジョン

第2話


「久しぶりに来たなぁ、此処………」


此処は新宿ダンジョン。


東京において、初心者の探索者達がよく集まるダンジョンだ。


ダンジョンというのは、上層、中層、下層、極稀に深層というのに分かれているのだが、此処には中層までしかない。


それに弱いモンスターしか出ないので、初心者に途轍もなく優しいダンジョンなのだ。


まぁ、初めて潜った時に、全然潜れずに帰ってきてしまった苦い思い出が有るのだが……


「うぅ、やっぱり人が多い………」


初心者向けのダンジョンなせいなのか、人が多くて怖い。


話しかけられ事は無いだろうが、視線がちょっとでも向けられるだけで、恥ずかしく感じてしまう。


「うぅ、勝てるかなぁ………」


初めて来た時に勝った剣を構えるが、上手く使える気がしない。


というか、俺って基本的に武器を扱う才能が無いんだよなぁ………


昔やってみた時は、ちょくちょくすっぽ抜けたりしたし………


『ピギュ♪』


あ、スライムが来た!


あの時はロクに倒せなかったけど、今日は頑張って────


『にゃん!』

『ピギュゥ───』

「えぇ………」


倒そうとしたら、シロが先に手をシュッってしただけで倒してしまった。


えぇ、ウチのペット強過ぎ………


一発でスライムの身体が吹っ飛んで、中にある魔石だけの状態になったんだけど………


ちなみに、魔石というのはモンスターを倒すと手に入る魔力の塊であり、色々な用途に使われる物だ。


まぁ、スライムの魔石は小さいので、1つ10円くらいしか稼げないのだが………


『にゃん。』

「あ、ありがとう………」


シロが魔石を咥えて渡してくる。


いや、時々ネズミやスズメを咥えて持ってくる時みたいにしなくても………


───まぁ、可愛いから良いか!


「つ、次は俺にやらせてくれよ?」

『うにゃん!』


よし、どうやら理解わかってくれたらしい。


よし、今度こそ俺が───


『ブルルン!』

「アレ、コイツは───」


どう見てもスライムじゃないよな?


うん、半透明で柔い身体には見えない。


どちらかと言うと、凸凹した岩の様に見えるのだが………


『フシャァァァァ!!!』

「どうした、シロ!!??」


シロがこんなに背中の毛を逆立たせて威嚇するなんて───


………つまり、コイツはヤバい奴なんだな!!


直ぐに逃げ───


『ブルルン、パッ♪』


うわっ、何か光っ───


☆☆☆☆☆


シロside


『此処が新宿ダンジョンとやらか………』


確かに弱っちい奴等の修練場としては的確な場所だろう。


難易度が高いダンジョンを視察した事は有ったが、こういう所を視察した事は無かった。


丁度いい機会だろう、主人と一緒に隅々まで見て回るとするか………


『おや、雑魚が来た………』


主人の前にスライムが来た。


仕方がない、まず私が見本を見せてあげるとするか。


魔猫拳キャスパリーグ・スピア。』


う〜ん、本来はこんな雑魚に使う技じゃ無いのだが、折角の見本だ。


派手にやらないと………


『よし、どうやらちゃんと見本になったらしいな!』


主人も次は自分の番だと、ウキウキしてる様だ。


なら、ちゃんと私も見守らないと───


ん?


『お前、ブルトリア・ロックだな!!』


失せろ、お前の様な愉快犯な雑魚に用は無いんだ!!


私の主人にちょっかいかけて見ろ!!!


───殺してやるからな!!!!


『やなこった!見知らぬ奴に何を言われても怖くねぇの、ヴァ〜カ〜♪』

『貴様ぁああ!!!』


あのクソ岩、私達を何処かへ転移させやがった!!


この創造神がわざわざ忠告したのに、聞く耳を持たぬとは………


コレだから、最近の奴は………


仕方がないなぁ………


『───魔猫一閃キャスパリーグ・ストラッシュ。』


───自らの行為を悔いて死ね。


『よし、コレで奴は彼処で魔石となってるだろう。今私が考えなきゃいけないのは主人の事だ。』


飛ばされた先がマトモな場所なら良いのだが………


続く

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