第22話 お叱り
僕達がのんびり話していると、周りにいた群れが警戒し、僕はエディに抱えられて地上へと来た。
巣の下にはカーバンクルがのんびりと欠伸をし、その隣には砂ノ神セトゥルスがラクダに体を預けて寛いでいる。
ラクダはオアシスでもよく見かけていたため、懐かしく思えた。
「漸く来たか。あと少しで、巣に触れるところだったぞ」
砂ノ神セトゥルスは、片目を開けてニヤリと笑う。
そんな砂ノ神セトゥルスが嫌いなのか、エディは嫌そうな顔を隠さず、カーバンクルに巣の守護を命じた。
すると、カーバンクルは小さな体を大きく変化させていき、炎を纏って砂ノ神セトゥルスに牙を向けた。
「さすがカーバンクルだ。名を与えられていないどころか、群れに入れてもらえてないにも関わらず、これほどの力を見せるとはな。だが、俺はこれでも神だ。特に、俺は召喚に特化していてな……炎ノツガイにも見せてやろうか」
そう言った砂ノ神セトゥルスは、僕の方をチラリと見ると、僕を不死鳥の姿に変えてしまい、嫌な声が頭に響く。
気持ち悪い!エディ、助けて!この声、僕は嫌だ!
「ピャッピャッピャッ!」
「ふむ……さすがに、炎ノツガイを従えるのは難しいか」
「ルリュには無駄だよ。俺がどれだけ時間をかけて、ルリュを俺のものにしたか……ルリュ、もう大丈夫。怖かったかい?」
エディに呼ばれれば、僕は元の姿に戻り、エディの炎が僕を包んでくれる。
「怖かった!気持ち悪かった。あの声、嫌い」
「気持ち悪いとは失礼だな。まあ、仕方ない。今回は俺が悪かった。だがな、こんな事をされたくなかったら、いい加減他の巣も作れ。仮でもいいのだろう?」
……忘れてた。
これはまた、僕達が悪い。
だからエディも怒ってないんだよね?いつものエディなら怒ってる。
「ルリュの目が覚めないと、巣作りはできなかったんだよ。確かに、楽しく喋ってはいたけれど、早く巣を作ってほしいのなら、ルリュが長く眠る理由でも調べてもらえるとありがたいかな」
違う、やっぱり少し怒ってた。
それでも、僕達が悪いところもあるから、穏便に済ませようとしてるんだ。
「分かった。俺も炎ノツガイを大切にすると言っておきながら、やり過ぎてしまったからな。そのあたりは他の神々とともに調べておこう」
そう言って、砂ノ神セトゥルスはラクダとともに砂となって消えた。
そして僕達はというと、カーバンクルが僕に擦り寄ってこようとするため、僕はエディが不安にならないように、エディの周りをグルグルと回りながら回避していた。
そのため、僕とカーバンクルがエディの周りを走っている状況になり、それにつられるようにして動物達が集まってきたため、その場が賑やかになる。
「ルリュ、もういいよ。カーバンクルは群れに入れて、名も与える。けれど、ここの守護は継続してもらう」
「群れ?カーバンクルが群れに入るの?」
僕が止まれば、カーバンクルは目を瞑って擦り寄ってくる。
いまだに体が大きい状態のため、僕は押しつぶされそうになるが、エディがカーバンクルの額にある宝石に触れれば、カーバンクルは元の大きさに戻った。
「群れに入れないと、毎回巣作りの邪魔をされそうだからね。今もこうして、ルリュに擦り寄っている。俺がそれを不快に思っていると分かっていてやっているところが、更に不快だからね」
「群れに入れたら大丈夫なの?カーバンクルは喋らないから、何を考えてるのか分からない」
「ルリュには伝えていないだけで、俺にはうるさいくらい伝えてくるよ。群れに入れてくれってね」
そうなの?群れに入れてほしいなら、僕にも言ってくれたら良かったのに。
それとも、僕が地上ではエディ以外と話したら駄目だって分かってるのかな?
エディは軽くため息を吐き、群れに入れて名を与えた。
カーバンクルの名はカーク。
僕がリフォンやグリフに名付けをしたように、エディも種族名から抜き取って名付けをしたらしい。
カークは一度、庭へ連れて行ったことで群れの一員となり、地上に戻ってからは守護者として、巣の周辺に住む動物や魔物達を次々と受け入れた。
「カークの群れを作ってるようだね。群れがあれば、守護が更に強くなる。あとは、裏切らなければ問題はないかな」
「裏切り?カークが裏切るの?」
「その可能性があるから、群れにはいれなかったんだよ。現に、カークはルリュに執着を見せている。不死鳥としてのルリュを、道具のように見てきた彼らも、ルリュに執着していたからね。油断はできない」
僕を道具にしたのは、僕を必要としたからでしょ?みんな、困ってたんだ。
仕方ないと思ってたし、僕は頼られて嬉しかった。
でも、エディはそれが許せなかったの?
「それに、カークは俺達が守護者に選ぶまで、当然のように神の使いとして振る舞っていた。わざわざ、危険な呼び出し口を通ってまで来たのだから、疑うなと言う方が無理だよ」
「呼び出し口はそんなに危険なの?」
「危険だよ。あそこは時空が歪むからね。下手したら体がバラバラになって、あらゆる場所に飛ばされてしまう。それを、カークは自身の力だけでどうにかしてしまったのだから、怪しいと思うでしょ?」
それに対して僕は静かに頷き、カークの方をチラリと見た。
すると、カークはこちらをジッと見ていて、僕と目が合うと、わずかに目を細めたのだった。
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