第20話 地上の巣



 ジィ様、ジィ様、大丈夫?すごい声が聞こえたよ。



「ピャッピャッピャッ」



 エディがジィ様を支えたため、僕はジィ様の肩に移り、飛び跳ねながら大丈夫か確認をする。



「ちょ……ルリュ坊、ルリュ坊……ッ」



「ピャッピャッピャアッ」



「ルリュ、追い打ちをかけてしまっているよ」



「ピャッ!」



 追い打ちじゃないよ!心配してるんだ。

 僕だって、ジィ様が心配。



 僕はジィ様の肩の上で翼を広げた。

 すると、ジィ様を座らせ終えたエディに抱えられてしまい、姿を元に戻された。



「エディ!ジィ様が大変だ!でも、僕はエディの許可がないと何もできない。どうしよう」



「ルリュも、水ノ神ネイストの水に触れても大丈夫そうだね。それなら、ルリュが癒してあげるといいよ。おそらく、俺の炎は水の中に住む者に対しては一時的に癒すだけで、徐々に炎の癒しが消えてしまう。けれど、ルリュの炎は生命そのもの……問題はないはず」



「いいの?エディ、僕がジィ様を助けても、エディは大丈夫?」



「水ノ神ネイストには、悪い事をしたからね。俺達のせいで無理をさせてしまったし、俺の可愛いツガイが追い打ちまでかけてしまった。さすがに、申し訳ないと思ってるよ」



「んぴゃっ!ジィ様を助けて、ごめんなさいする!」



 僕は七色の炎でジィ様を包み、痛そうにしているジィ様を癒す。

 すると、ジィ様は徐々に痛みが消えてきたのか、顔色も良くなり、更に若々しく見えてくる。



「ルリュ坊、ありがとう。だいぶ楽になった」



「だいぶ……まだまだ足りない?」



「いや、足りておる。これ以上の癒しは、水ノ神である儂には良くないというだけじゃ」



 癒しが良くないの?どうして?治るなら治した方がいいよね。



「ルリュ、俺達が水を避けるように、水ノ神ネイストも炎を避けるんだよ。強すぎる炎は、水をなくしてしまう。俺が地上の気温を上げただけで、水が涸れてしまったよね?」



「んぴゃっ!僕のいたオアシスは、水があったから豊かだった。でも、砂漠はカラカラ。僕はいいけど、人は生きるのが難しいって言ってた」



「そうだよ。勿論、気温や炎だけのせいではないけれど、水ノ神の場合はこれ以上炎を与えてしまうと、人の形を保てなくなり、完全な液体になってしまう。そして更に炎を与えれば、姿も見えなくなってしまうんだよ。そこに存在はしていても、見えなくなってしまう」



「ピャッ、それは大変だ!ジィ様、ごめんなさい」



 すぐにジィ様に謝ると、ジィ様は謝罪を受け入れてくれ、巣を作る事を優先してほしいと言ってきた。

 そこで、僕は再び枝選びをするが、ジィ様が仮の巣を作るよう言ってきたため、少しだけ考える。

 すると、エディは巣をここに作ってしまおうと言ってきたのだ。



「ルリュ、ここに巣を作ってしまえば、いつでもここの枝を運べるよ。それならどうだい?ここを中心に、他の巣を仮として作り、少しずつ完成させていこう」



「んぴゃっ、分かった!エディがそれでいいなら、僕もそうする。ちゃんと巣を完成できるなら、僕は満足」



 そうして、僕達が巣作りを始めると、ジィ様は安心した様子で帰って行った。

 エディが木の上に家のようなものを作り、その中に僕が巣作りをする。

 庭にある最初の巣と同じようなもので、それよりも少し小さめではあるが、どんなものでも問題はないらしい。

 生き神である不死鳥の僕と、エリュシオンの選定者である炎ノ神のエディが、巣作りをする事に意味があるようだ。

 


「――ルリュ、そろそろ守護者を決めて庭に帰ろうか。それと、この巣は完成でいいかい?」



「んぴゃっ!完成だけど、ここは材料が多いから、少しずつ手入れする!」



「そうだね。とりあえず、守護者だけは決めてしまおう。呼び出すだけで、ここの守護者になりたい者を、寄越してくれるはずだよ」



 寄越してくれる?もしかして、ウロ先輩も……ううん、ウロ先輩はエディが交渉してたから違うはず。

 それなら、神様達が選んでくれるって事でいいのかな?



 エディが守護者を呼び出すと、すぐに守護者が来てくれる。

 しかし、呼び出し口となる木と木の間の空間に、顔だけがいくつも出てきたのだ。



「ピャッ!エディ、失敗したの?」



「違うよ。ただ、それぞれの神が同時に寄越してしまったようだね。こんなことになるとは思わなかったよ」



 そうなんだ、良かった。

 呼び出しが失敗して、みんなの顔がくっついちゃったのかと思った。



 安心した僕は、エディから離れないようにしながらも、来てくれたみんなに近づいた。

 すると、僕の足元には見慣れた狐が擦り寄ってきたのだ。



「この子、僕の群れにいた子に似てる」



「出てこれたのは、このカーバンクルだけかな」



「カーバンクル?それって、この子の種族名?」



「そうだよ。額に宝石をつける狐の魔物は、カーバンクルと呼ばれていてね。力のあるカーバンクルは、守護者にちょうどいい」



 カーバンクル……宝石の色は、群れにいた子と違うけど、この子の宝石も赤色がキラキラしてて綺麗。



 エディは呼び出し口を閉じると、カーバンクルを守護者に決めた。

 そして意外な事に、カーバンクルは神の使いではなかった。

 そのため、エディは巣の説明をする事になってしまい、疲れ果てて庭に帰ってきたのだ。



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