第19話 マイペースな炎達
僕はエディの首に手を回し、首を噛んで好きだと伝えた。
それからは、エディに身を任せる事になり、いつも通り泣かされる事になったが、それ以上に今回はエディの発情が収まらなかった。
僕が気を失えば、エディは珍しく眠り、目が覚めれば僕を求めてくる。
そんなエディについていけず、僕は泣きながらエディにお願いした。
「エディ……もッ、むり。ゆるして」
「俺は怒ってないよ。ただルリュを愛しいと思うだけ」
「ピャッ……エディ、エディ」
僕はエディにしがみつき、エディの名前を呼んで、もう無理だと必死に伝えた。
すると、エディは僕の口を塞ぎ、最後に優しげに微笑むと、漸く解放してくれる。
「そろそろ、巣を作りに行かないといけないね」
「んぴゃっ……」
「子づくり、できなかったね」
「んぴゃ……ぴゃ?」
子づくりはしないって話だったよね?どういう事?
僕はエディを見つめ、理解できずに首を傾げた。
するとエディは、本気の子づくりというものを、今やってみせたのだと言ったのだ。
それにより、更に理解ができなかった僕は、本当は子づくりをしたかったのかと訊いた。
「本当に望まなければ、それが叶う事はないよ。そもそも、俺達は男同士。神として、心から望めば子は成せるけれど、無理だったでしょ?俺はルリュが本当に望んでいたのなら、それに応える努力はしたかったんだよ。だからもし、今回で子が成せたのなら、俺も愛する努力はするつもりだった」
そうだ……僕達、子づくりは無理だった。
それに、僕はどうしても欲しいわけではなかったから、エディを説得しても無理だった。
今頃になって気づいた現実に、僕は恥ずかしくなって布の中に隠れた。
しかし、エディは布ごと僕を抱え、嬉しそうに耳打ちしてくる。
「誘ってくれたルリュは可愛かったよ。それに、泣いてるルリュも可愛かった。けれど、あんなに泣いて甘えてしまうルリュが、親になれるかな?」
「ピャッ、ピャッ!エディのいじわる!」
何も考えていなかった僕が悪いが、それでも揶揄うように僕を愛でてくるエディに、僕は噛みつくしかなかった。
エディは僕を揶揄い、それでいて愛でてくる時が一番楽しそうであり、今も声を出して笑っている。
こんなエディを見れるからこそ、エディのちょっとした意地悪を、本気で嫌だとは思わない。
それから少しして、僕達は巣を作る為に地上へ向かった。
地上のどのあたりに巣が必要であるかは、エディが決めるようで、僕は巣の材料を集める。
しかし、大きい物は運べないため、何を持って行くかと迷いながら進んでいた。
「――ルリュ、決まったかい?」
「ぴゃぁ……決まらない」
僕は好みの木の枝を見つけたのだが、それはいくつもあり、何を持って行くか決められずにいた。
しゃがんでは眺め、立っては眺め、飛んでは眺める。
それでも全く決められずにいると、エディは僕の頭に手を置く。
「ルリュ、俺達の時間感覚は人々とは違うんだよ。それこそ、早めに作らないといけない……とは言え、それに関しては俺もルリュのことは言えないけどね」
「でも、巣作りだよ。エディとの巣作り。ちゃんと決めないと」
「んー……そうだね。よし、ゆっくり選んでいいよ」
エディから笑顔付きの許可が出たため、じっくりと選ぼうとしたその時だった――
突然、僕達の目の前に水ノ神であるジィ様が現れたのだ。
「ピャッピャッ!」
ジィ様とともに、大量の水が現れた事で、慌ててしまった僕は咄嗟に不死鳥の姿になり、エディの肩にとまった。
ジィ様だ!ジィ様がいる!でも、この水の塊はびっくりする。
僕は足に力を入れ、エディの肩をニギニギしながら動くと、エディは僕の足を撫でてくる。
「ルリュ……痛いかもしれない」
「ピャッ……ピャアァ」
ごめんなさい、エディ。
痛かった?でも、ジィ様の水が目の前にあるんだ。
少し怖い……やっぱり、ジィ様の庭に行かなくて正解だった。
「ルリュ坊、驚かせてすまんな。しかし、お主らはあまりにもマイペースすぎる。真ノ神もじゃが、他の代理神も落ち着きがないんじゃよ」
「……腰はどうしたの?」
「腰痛で動けん儂を、皆がここまで寄越したんじゃよ。この腰痛は、どんなに望んでも治らんからのう。治癒できる炎以外ではただの気休めじゃ」
ジィ様は僕達の為に来てくれたの?なら、治してあげないと。
でも、僕は何もしてあげられない。
エディの許可がないと、地上ではどうなるのか僕は何も分からない。
それに、僕はこの姿じゃエディに頼む事すらできない。
僕は、何度かエディの首を甘噛みするが、エディは僕を撫でるだけで、ジィ様と話を進めてしまう。
どうやら、エディが僕以外のことで話を聞くのは、ジィ様に対してだけらしい。
それにより、ジィ様が無理をして来てくれたようだ。
「俺達は早くしてるつもりだよ。崩壊はどのくらい進んでる?」
「そうじゃな。お主らにとっては、早く行動しているつもりじゃろう。じゃがな……他は違う。ルリュ坊は可愛らしく、メトラーも穏やかで良いと思う。それでもな、こればかりは急いでほしいんじゃ。もはや、仮の巣でも良い!」
ジィ様は興奮気味に一歩踏み出すと、若々しい外見に見合わぬ声をあげ、腰を押さえて崩れ落ちてしまった。
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