第18話 第二計画と説得
雷の音がする。
エディの不安と焦りが伝わる。
僕もエディの力になりたい。
そう思いながらも、目を覚ます事ができない僕に、誰かが語りかけてきた。
《ルリュ、すまない。守ってやれそうにない》
《ルリュ、死の準備をしてほしい。申し訳ない》
どうして謝るの?僕は死んでも、また産まれるのに。
あなた達は誰?
《世界が悪で染まる。その前に死を……》
《そして再び命の灯火を……》
それって、エディが困ってる事?だからエディは今、不安で焦ってるんだね。
エディが困ってるなら助けたい。
僕にできるのは、死ぬ事だけなの?教えてほしい。
今の僕にできる事はない?
《……ルリュがあの子を説得できるのであれば、道はある》
《あの子は我らを嫌っているが、我らはあの子を愛している。きっと、あの子はルリュを止める》
先ほどから、一気に内容を伝えてくれない事に、僕は苛立ちながらも、エディの為ならなんでもすると言った。
すると、その二つの声は重なり、内容を教えてもらったところで目が覚めた。
「……俺がエリュシオンに――」
「エディ!」
困った様子のエディに抱きつくと、エディは驚いた様子で僕を見てくる。
「ルリュ、起きたのかい?もっと眠るものかと思ったよ」
「エディが困ってた。だから僕、助けにきたんだ。今から、エディを説得する!」
「……それは、どういう事か説明してくれるね?」
その瞬間、エディは何かを察したのか、少し怖い笑顔を作る。
それに対して、少し自信をなくすが、それでも僕はエディを説得すると決めていた。
「はぁ……ルリュは本当に可愛い。そんなに怯えないで。説得する宣言はしないものだという事だけ、覚えておくといいよ」
「んぴゃっ、分かった!」
それから僕は、眠っている間の内容を話した。
二つの声が、僕に謝りながらも僕の死を望んでいた事。
それと、死なずに済む方法があるという事。
エディを説得しなければならないという事。
全てを話した僕に、エディは笑顔で「ルリュはいい子だね。話してくれてありがとう」と言い、優しく頭を撫でてくれた。
「んぴゃっ!エディに褒められた!エディ、もっと褒めて」
「その前に、俺を説得しなくていいのかい?」
「ぴゃ?エディは褒めてくれたでしょ?僕……説得できなかったの?」
「……ルリュ、内容を話してないよ。雷ノ神ヌービシアも笑ってしまってるからね。説得内容を教えてもらえるかい?」
そこで初めて、雷ノ神ヌービシアの存在に気づいた僕は、笑われてしまっている事に恥ずかしくなり、エディの胸にグリグリと頭を押し付けた。
だが、雷ノ神ヌービシアは笑っているだけで、僕達の話に入ろうとせず、エディも穏やかな表情を向けてくる。
エディ、不安も焦りもなくなってる。
良かった……エディを説得できたら、エディはもっと安心してくれるかな?
「エディ、僕と一緒に地上で巣を作って、子づくりをしてほしい!」
「……ん?もう一度言ってくれるかい?」
「んぴゃっ、たくさんの巣作りと子づくりして!」
「子づくり……たくさん……」
もしかして、子づくりが嫌なの?エディが嫌なら、巣だけでもいい。
子づくりは、僕がしたかったらでいいって言ってくれたから、巣だけでも大丈夫。
「エディ、子づくりは嫌?巣は大丈夫?エディは僕と交わるの好きだから、子づくりも大丈夫だと思ってた。ごめんなさい。でも、巣だけでも作ってほしい」
「うっ……そういう事は、二人で話そうか。雷ノ神ヌービシア、もう解決したよ」
「そうだな。それじゃ、邪魔者は退散するか」
そうして雷ノ神ヌービシアはいなくなり、エディは僕を抱えてベッドへ行くと、僕は押し倒されて深く口づけをされる。
エディ、興奮してるの?でも、少しだけいつもと違う。
「本当は、この庭以外に巣を作るのも許せないけれど、それでルリュが死なずに済むのならそれでいい。ただ、子づくりはどうして必要なのか教えてほしい。ルリュは俺をどうしたいの?」
「エディを安心させたい!」
「子づくりは、俺を安心させる為?それとも、嫉妬させる為?」
嫉妬?どうして嫉妬するの?みんな、子どもを愛してたよ。
「ルリュ、俺はそんなにできた神ではないんだよ。俺はルリュを誰にもとられたくない。ルリュが誰かのものになるのが許せない。酷いと思うでしょ。醜いと思うでしょ。けれど、それが本当の俺なんだよ」
エディは僕の頬を撫でると、僕が逃げないようにキツく抱きしめてくる。
そんなエディの言動に、嬉しくなってしまう僕は、きっとエディと同じなのだろう。
エディから言われてみれば、僕もエディをとられたくないと考えてしまい、エディに気づかされるのだ。
「僕もエディは渡したくない。やっぱり巣作りだけがいい」
「本当にそう思ってる?ルリュ、無理はしなくていいんだよ。勝手だと思うだろうけど、俺はルリュの望みを全否定するつもりはないからね」
「んぴゃっ!エディが僕の気持ちを教えてくれた。僕、何も考えてなくて、ただエディの助けになりたかっただけなんだ。ごめんなさい。子どもがいれば、エディは巣の守護者を探さずに済むでしょ?」
「ルリュは良くも悪くも、深く考えずに一直線だからね。それは、人ではなかったルリュの長所でもあり、短所でもあるのかな。ただ、俺はそんなルリュも愛してるよ」
エディが教えてくれる事は、どんなものでも嬉しい。
エディは、僕の全部を否定しないけど、駄目な時はどうして駄目なのか教えてくれるんだ。
そんなエディが、僕も大好き。
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