第16話 キラキラの思い出



 瞳を通して、エディからの求愛を常に受け取っている僕が、エディへの求愛が足りないと思うのは当然だろう。

 どれだけ求愛しても足りず、エディの瞳のように、僕の瞳もキラキラしていたら、どれだけ良かったのだろうかと考える。



「エディ、僕の求愛はエディに届いてる?」



「届いてるよ。いつも受け取ってるでしょ?どうしたの?不安そうな顔だよ」



「……僕の求愛が足りない。エディを愛してるのに、求愛が足りないから、僕の愛も足りてない。僕にもキラキラがあったら……僕の全部をエディにあげて求愛できるのに」



 最近は求愛もできてないんだ。

 きっとエディも物足りないはずだ。

 僕ばっかり貰っちゃってる。

 今だって、こんなにたくさんのキラキラを貰っちゃった。



「別な場所に行きながら話そうか」



 そうして、海を離れて山へ行き、洞窟を目指して歩きながら、エディは思っている事を話してくれた。



「ルリュにとって、キラキラが求愛になるのは知ってるよ。けれど俺は海という、ルリュにあげられないものを求愛にして、ルリュはそれを当然のように受け取ってくれたよね?」



「んぴゃっ、キラキラの求愛だった。エディの求愛は全部嬉しい」



「でも、それはルリュの手元にはない」



 うん、海はあそこにある。

 でも、僕は嬉しいんだ。

 僕の手元にないものでも嬉しくて、思い出すだけで幸せ。



「ルリュ、俺はね……ルリュとの思い出全てが、キラキラしているんだよ。どんなものでも、そこにルリュがいるだけでキラキラしていて、ルリュとツガイになってからは、常に求愛されているように思える。これは俺だけの秘密だったんだよ。俺だけが受け取れる、ルリュからの求愛だったからね」



「思い出が求愛……海も思い出。キラキラした思い出。エディが僕のキラキラ」



「可愛い事を言ってくれるね。俺がルリュのキラキラなのかい?」



「んぴゃっ!エディの瞳はキラキラ!僕だけの秘密」



 そっか、思い出が求愛になるんだ!エディとの思い出をたくさん作ったら、それはどんなものでもキラキラな思い出で、エディへの求愛になるんだ。



「エディ、僕とたくさん思い出を作ってほしい!エディへの求愛、たくさんたくさん贈りたい。エディが大好き。たくさんのキラキラは、愛してる証なんだ。僕の求愛、届いてる?」



 すると、エディは頬を赤く染め、手で口元を隠すと、僕から目を逸らした後に、目を瞑って深く頷く。



「うん……今届いたよ。ルリュがそんなにも俺を想ってくれている事に、俺はまだまだ気づけてなかった。そんなにもまっすぐに、純粋な気持ちをぶつけられては……はぁ、今までの俺を思い出すと、恥ずかしいよ」



「ぴゃ?キラキラの思い出足りない?大丈夫。僕はキラキラ集めもする。もっとたくさん求愛できるね」



「ッ……可愛すぎるよ、ルリュ」



 エディは僕を抱きしめると、顔中に口づけをしてきて、腰を引き寄せながら僕の舌にエディの舌を絡めてくる。

 だが、ここは庭でもなければ巣の中でもなかったため、エディは瞳の中の熱を抑え、代わりにスリスリと頬擦りをしてくる。



 エディが可愛い!エディのスリスリってたまにあるけど、元が獅子だからかな?たぶん、獅子だよね。

 僕を追いかけてきた時は獅子だったもん。



「ルリュ、そんなに見つめてどうしたの?物足りなかったかい?」



「それもそうだけど、エディは獅子なのかなって考えてた」



「そうだね、俺は間違いなく獅子だよ。それがどうかした?」



「エディのスリスリが、獅子だからなのか気になっただけ」



 僕がエディのことを考えていると分かると、エディは満足気に再び歩きだした。

 エディは僕に合わせてくれるため、手を繋いでゆっくりと歩き、暫くすると洞窟が見えてくる。

 中は暗く、キラキラとは無縁のように思えるが、エディが炎を灯せば、洞窟全体がキラキラと輝いていた。



「ぴゃあ!すごい!」



「くッ……可愛い。ぴゃあって……どうしてそんなにも可愛い反応ができるのか、理解できない」



「エディ?僕、悪い事した?悪い事したなら謝る。ごめんなさい」



「悪い事なんて一つもないよ。ルリュを理解できない、俺の方が悪いかもしれないね。ツガイとして、ルリュの可愛さを理解できるように……ルリュ?」



 エディが自分を責めるため、エディは悪くないと伝える為に、エディに頭をグリグリと押し付けた。



「エディは悪くない!」



「そうかい?それなら、ルリュも悪くはないから、もっと可愛いルリュを見せて」



 そう言って、エディは僕の頭を撫でてくるため、僕はエディの服をひっぱり、エディから離れないようにする。



「んぴゃっ!求愛のキラキラ集めてくる!エディ、僕から離れないでね」



「ふふ、俺が離れたらいけないんだね。分かったよ。ついて行くから、ここでは自由にしておいで」



 そうして、僕はキラキラを拾ってはエディに渡しに行く。 

 そのせいで、僕の手元には全く集まらず、代わりにエディの手が塞がっていたため、それによって漸くキラキラ集めをやめ、苦笑いのエディとともに庭に戻ってきた。

 


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