第15話 キラキラの求愛
エディの趣味の事から、エディへの求愛の為のキラキラ集めを考えていた僕は、周りにいた群れが遠ざかっていくのを不思議に思い、そちらに目を向けようとした。
だがその瞬間、僕の顔はエディによって優しくも、どこか力強く固定されてしまい、エディの笑顔が間近にくる。
「ルリュ?何を考えていたのか教えてくれるよね?」
そこで、僕はエディの趣味について考えていたのだと話し、そこから僕のキラキラ集めも趣味であるという事や、エディへの求愛が足りないという事まで話した。
するとエディは嬉しそうに笑い、僕の頬をムニムニと動かすと、次は顔中に口づけをしてくる。
「ルリュは本当に可愛いね!愛でても愛でても足りないよ」
「んぴゃっ!僕も足りない!求愛が足りないから、集めに行きたい」
「もう全部貰ってしまったからね。あれだけあった宝石が、今では装飾品になっているよ」
今回のベッドもそうだが、エディは僕が求愛の為に贈った宝石を、いろいろな場所に使ってくれている。
特に、僕の服やエディの服についていたりする事が多く、僕はそのキラキラを見るだけで満足していた。
しかし、エディへの求愛は別であり、僕の気持ちを伝えるには、まだまだ足りないのだ。

「これから探しに行こうか?ルリュの知らない場所も連れて行けるよ」
「ッ……いいの?」
「いいよ。これからは一緒にいろんな場所に行こうか。ルリュが約束を守れるのならね」
約束?生き返らせたら駄目なこと?それとも、僕がエディから離れない事かな?
とりあえず求愛の為のキラキラ探しをしたかった僕は、何度も頷いて約束をした。
すると、エディは満足気に笑みを浮かべ、約束の内容を次々と口にしていく。
まず一つ目は、エディから決して離れない事。
二つ目は、人を避ける事。
三つ目は、生き返らせたり炎を使わない事。
四つ目は、エディ以外に可愛い姿を見せない事。
五つ目は、エディに関する事以外を考えない事。
六つ目は……
「六つ目が一番大切だよ。いいかい?よく聞いて」
「んぴゃっ!んぴゃっ!」
僕は何度も頷きながら、前屈みになってエディの顔に近づいた。
すると、なぜかエディは笑いを堪えるように、手で口を隠す。
「六つ目は……俺以外と話さない事だよ」
「んぴゃっ!分かった」
「……なんだろう。少し心配になってきた。本当に理解しているかい?」
「んぴゃっ、んぴゃっ!僕、エディが好き。エディしか見ないから、エディとしか喋らない。あ……でも、キラキラ探しはしたい。ごめんなさい。エディ以外も見ないといけない」
でも、求愛の為には仕方ないんだ。
エディ以外も見ないと、キラキラは探せないし、エディに求愛もできない。
「ふふっ、それは約束に入ってないから大丈夫だよ。少し心配になってくるけれど……大丈夫かい?俺以外の者に騙されたりしたら駄目だよ」
「エディは意地悪するけど、騙したりしないから大丈夫!」
「うん……心配だね。俺がいるから大丈夫ではあるけど、庭の外に出れば何があるか分からないからね。念の為、人がいない場所に行こうか」
そうして、庭の守護を群れに任せた僕は、エディとともに地上へと向かった。
地上のどこへ行くかは知らされていないが、エディと一緒ならどこでもいいと思っていた僕は、地上に降り立った瞬間、水中である事に気づき、咄嗟に不死鳥の姿になってエディの顔に張り付いた。
「ピャッピャッ!」
「ルリュ、落ち着いて。大丈夫だよ。俺の炎がルリュを守っているでしょ?よく見てごらん」
無理だよ!エディ、ここは怖い!僕の翼が自由じゃない!大変だ、大変だ、大変だ!
「ピャッピャッピャッ!」
「ルリュ、大丈夫だよ。怖くない。それよりも周りを見てごらん。ルリュにとっての未知なものがたくさんあるはずだよ」
そう言ったエディによって、僕は元の姿に戻される。
そこで、勇気を出して目を開ければ、エディから教えてもらっていた海の生き物がたくさんいた。
まるで空を泳いでいるように優雅で美しく、僕の翼とはまた違っていて、彼らは自由に空を泳いでいた。
「空を泳いでる」
「ふふ、そうだね。水中から上を見上げれば、そこには空がある。しかし、深く行けば行くほど、青空は見えなくなり、真っ暗闇に夜空のような海が広がるんだよ」
「不思議……みんなは、ここから生まれたの?地上に行くのは、みんな光が好きだから?僕と一緒?キラキラ綺麗……ここから見る空は、キラキラしてる」
「海は命の源だからね。キラキラしていて当然だよ。空からも見てみようか?そうしたら、海はもっとキラキラしている」
僕はエディにしがみつきながら、水中を出て空から海を見た。
するとそこには、ものすごくキラキラした宝石のような海が広がっていたのだ。
「んぴゃあ!キラキラ、綺麗!」
「そうでしょ。命は皆、どんなものでも美しい。キラキラして見える分だけ、命も輝いていて、ここから全てが始まっている。水ノ神ネイストの元へは行かせられないけれど、こうして地上の海には連れて来てあげられる。これが、今回の俺からの求愛。気に入ってくれたかい?」
そう言って微笑む、エディの瞳が一番キラキラしていたことに、僕は気づかないふりをして力強く頷いた。
これは僕だけの秘密で、エディからの求愛は、いつだって僕に向けられているのだと、僕だけが知っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます