第14話 巣の守護者



 僕がエディの目を隠していると、エディは突然笑いだし、僕を抱えて手をずらしてくる。



「ルリュ、忘れたのかい?俺は一度、ルリュの宝石を取りに来たよね」



「ぴゃ……ピャッピャッ!」



 忘れてた!どうしよう、もう見られてる。

 どうしてあの時の僕は、巣を見られてる事に気づかなかったんだ!あの巣を見られてるのに、僕はエディへの求愛に夢中で……恥ずかしい。



 僕は恥ずかしさのあまり、エディの目ではなく自分の顔を両手で隠した。

 しかし、エディは僕の翼のような耳を撫でると、「ルリュらしい巣だった」と、耳打ちしてきたのだ。

 それに対して、僕がエディに噛みついてしまうのも仕方ないだろう。

 


「ピャッピャッ!エディのいじわる」



「それは仕方ない。可愛い子は、構いたくなるものだよ。それが愛しいツガイなら尚更ね」



「ぴゃッ……」



 僕は恥ずかしさのあまり、エディにしがみつき、服を噛みながらも尾羽を揺らしてしまう。

 エディから与えられる愛は、どんなものだろうと嬉しいものなのだ。



 その後、僕達はグリフォンとヒッポグリフの元へ行く。

 二体は僕のことを忘れてしまったのだろうが、僕がここの主であったという事は匂いで分かるようで、僕を歓迎してくれた。

 僕のことを忘れてしまっているのは、正直悲しくも思えたが、それと同時に僕を知っている状態で僕のことを待っていた場合の方が、僕にとっては辛かった。



「ルリュ、この二体を連れて行こうか?言葉も通じるようだし、他の動物も連れて行けばいい」



「連れて行きたいけど、無理はさせたくない」



「彼らは、元々エリュシオンへ来る予定だったからね、特に無理をするような事はないよ。それに、動物達もここにいた者達は魂が綺麗だ。特別何かをする必要はない。ただ神の庭の生き物になるだけだよ」



 でも、住処が変わるのは大変じゃないの?みんなが来たいのなら、僕も来てほしいとは思うけど、やっぱり無理してほしくはないんだ。



「キミ達はどうしたい?ルリュを待っていたんだろう?ルリュと共に、新しい場所を守護するのは、キミ達の望みではないのかい?」



《ルリュ様の居場所を守る。我らの望み》



《我らの役目。ルリュ様のそばにある》



 頭に響く二体の声は、僕よりもしっかりとした答えを出してきた。

 それにより、僕も連れて行く以外の選択肢はなくなり、他の動物達も来たい子達は連れて行く事になった。

 決まった後のエディの行動は早く、全員を庭に送った後、地上にある僕の巣の守護者達を選んでいく。

 僕の巣は、この周辺を豊かにしているようで、この巣が壊されれば全てが枯れてしまうらしい。

 そのため悪用されないよう、強力な魔物を呼び出し、エディが交渉する。



 この魔物は見たことがない。

 大蛇に似てるけど、僕の知る大蛇よりも大きくて、白色の鱗が綺麗だ。



「ルリュ、ウロボロスがここを守ってくれるようだよ。この子なら問題はないから、安心してほしい」



 交渉が終われば、ウロボロスと呼ばれた大蛇は自分の尾を噛み、目を閉じて透明になっていく。



「ウロボロス?初めて聞いた」



「ウロボロスはルリュと同じ聖獣だよ。砂ノ神セトゥルスが聖獣に決めた個体で、聖獣としてはルリュの先輩にあたるかな」



「センパイ……ウロ先輩?」



 ウロ先輩と呼べば、ウロボロスは透明になっていた姿を現し、僕を囲い込むように移動すると、もう一度自分の尾を噛む。



「ウロボロス、ルリュを気に入ったのはいいけれど、ルリュは俺のツガイだからね。はぁ……ルリュ以外と話すのは疲れる。ルリュとだけ話していたい。ルリュ、そろそろ帰ろう」



 エディは僕以外と話すと疲れてしまうらしい。

 基本的には無関心であるエディだが、何に対しても無関心というわけではないため、こうして僕以外と話さざるをえない場合は、疲労を回復する為に僕の羽づくろいをしたり、髪を整えたりと、僕の世話をしたがるのだ。

 それも、エディの庭でゆったりとした時間の中、僕がリラックスしているところを眺めるのを好む。



 そうして僕達は庭へ帰り、まずはエディの疲労が回復するまでゆっくりした。

 それから数日後、僕はエディがベッド作りをしているところを眺めながら、グリフォンとヒッポグリフを含めた群れに囲まれている。

 グリフォンにはリフォン、ヒッポグリフにはグリフと名付け、僕とエディの群れとなった事で、炎を扱えるようになったのだ。

 他の動物達も、群れとして炎への耐性はあるようで、僕が興奮して炎を出してしまっても、問題はないらしい。



「ルリュ、ベッドはこれで完成だよ。他にも何か作ってほしいものはあるかい?」



「作ってほしいもの?今みたいに、魔法を使わないでエディが作ってくれるの?」



「そうだね。これは俺の趣味のようなもの……というか、ルリュが関わるものは俺の手でなんでもしてあげたい」



 そういえば、僕が転生した時も巣を作ってたって言ってた。

 それに、僕の羽根づくろいもそうだけど、癒すのだってエディがやりたいって言ってたし……エディの趣味だったんだ。

 趣味は大事にしないと。

 僕だって、キラキラ集めは自分でしたいもん。

 特にエディへの求愛は全然足りないから、集めに行かないと。



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