第5話 ツガイ



 エディとともに散歩をした後、僕はエディに連れられて、エディが元々住んでいたという屋敷に来ていた。

 エディは、僕に合わせて住処をつくってくれたようだが、ツガイになる時は屋敷でゆっくりしたいと言ったのだ。

 僕としては、エディの巣に招かれたようで嬉しく、同時にここには住めないのかという寂しさもあった。



「エディ、ここに僕が住んだら駄目?」



「そうだね……ルリュもここの環境に慣れてきたようだし、ここに住んでもらうのも良いかもしれないね。あの住処は、ルリュの為のものだから、好きに使って構わないよ」



「本当?エディと……ずっとここに住んでもいいの?出ていけって言われても、もう出て行かないよ。それでもいいの?」



「むしろ、俺がまずい気がするよ。ここから出したくなくなる」



 そう言って、エディは人が使うようなふかふかな巣に僕を押し倒し、いつもとは違った余裕のない口づけをしてくる。

 それだけで、エディも僕を求めてくれている事が分かり、今までの優しいエディが嘘のように、僕の服を乱し、整わない呼吸で何度も何度も噛みつくような口づけを繰り返す。

 そうしているうちに、僕は何度も達してはエディを求め、エディが口を付けていく場所全てが、敏感に反応した。



「ルリュ……ごめんね。余裕がなくて……格好悪いよね」



「エディはいつも格好いい。エディが欲しい。早く……お願い。僕をツガイにして」



 両手を伸ばし、エディの顔を引き寄せれば、それと同時にエディが僕のナカに侵入してくる。

 圧迫感と快楽は同時に襲ってきて、エディが呼吸を乱しながら僕を見つめて微笑むと、心臓のあたりが苦しくなる。



「ルリュ……愛してる。離さないから、覚悟して」



 エディの声は聞こえるものの、頷くことしかできない僕は、何日もの間エディから解放されず、睡眠を必要としないエディは、狂ってしまったかのように僕を抱き続けた。

 僕が泣いても、エディは僕を愛でるだけで止まる事はなく、泣いている僕にも興奮した様子で、容赦なく快楽を与えてくる。



「ルリュ、ごめんね。加減ができなかった」



「んぴゃ……らいじょぶ」



 声は上手く出ないけど、それでもエディのことは好きで、僕を求めてくれるのは嬉しかったんだ。

 少し加減はしてほしかったけど、それでもツガイになれた事も嬉しいんだ。



 僕はエディの印がついた、自分のお腹を見る。

 僕のお腹にある印は金色の炎であるのに対し、エディの鎖骨にある印は、七色の炎である。

 それにくわえ、僕の噛み痕がくっきりと残ってしまっていて、噛み痕も含めて僕の印になっているようだ。



「疲労を癒そうか?」



「やッ!僕、満足してる。これは僕のもの……奪わにゃいで」



「そんなに可愛い事を言われたら、また狂ったように抱くよ。いいの?」



 うっ……今は勘弁してほしいです。

 嬉しいけど……僕をそうやって、欲情した目で見てくれるのは嬉しいんだ。

 でも……



「今は、ごめんにゃい」



「ふふ、言えてないルリュは可愛いね。仕方ないから許してあげる」



 そう言って、エディは僕の羽づくろいをしてくれ、髪も整えると、いつもとは違う服を着せてくる。

 そして当然のように、エディは僕の足にキラキラ光る輪っかを嵌め、エディの腕にも同じものをつけた。



「キラキラ!」



 綺麗……揺れて光るのもいい。

 エディの炎に似てる色だけど、これってエディが作ったのかな。



「俺の炎を加えた鉱石で作ってみたよ。気に入ってくれたかい?」



「んぴゃっ!キラキラ、これ好き」



「気に入ってくれて良かったよ。ルリュと同じキラキラで求愛をしてみたかったからね。これは俺からの求愛」



 求愛……嬉しい。

 僕に合わせてくれたんだ。



 僕は尾羽を揺らし、エディに抱きついて頭をスリスリする。

 そんな僕の頭や耳を撫でてくれるエディは、僕が目を瞑ると、何度か軽い口づけをしてきて、可愛い可愛いと愛でてくる。

 エディは僕を愛でるのが好きで、僕はエディに愛でられるのが好きだ。

 しかし、エディは僕を愛でた後は、いつも神様の仕事をする。

 どこでどんな仕事をしてるのかは分からないが、神様も暇ではないらしい。



「エディ、この後……仕事?」



「うん、そうだね。でも、俺のせいでルリュは動けないうえに、声が出づらい。そんなルリュを、そのままにしておくと思う?」



 エディには悪いけど……うん、思う。

 エディは僕に意地悪するのが好きでしょ?優しいのは優しいけど、エディは意地悪な時があるんだ。



 僕がエディから目を逸らせば、エディは僕の顔を掴み、無理やりエディの方を向かせられる。

 しかし、それでも目を逸らしていれば、間近で覗き込んできて、低音の声で僕の名前を呼ぶ。



「ルリュ?なんで目を逸らすの?悲しいな」



「そ、そにゃこと……にゃい」



「おかしいな。ついさっきまで、声が出るようになってきていたはずだけど……また舌の使い方を教えようか?ソレは声が出ないと言うより、舌がまわらないだけだよね?」



「ピャッピャッ!」



 ほんの少し抵抗するように鳴いて噛みつけば、エディは嬉しそうに笑う。

 その笑顔は、満たされたような笑顔で、くしゃりと皺の寄る目元は、優しげでありながら、少年のようでもあった。



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