第3話 歪んだ初恋(sideエディ)



 ルリュを見つけたのは、自分に似た炎を持つ存在が下界に現れてからだ。

 美しい炎を身に纏い、優雅に空を飛ぶ姿は美しく、命の象徴としては相応しかった。

 不死鳥ルリュと名付けた時には、既にルリュに心を奪われ、ルリュの生きる姿が美しいと思うと同時に、ルリュの死を望み、ルリュの自由の翼を使い物にならないよう望んだ。

 ルリュという魔物に恋をしたのはいつだろうと考える度に、一目見た時から恋に落ちてしまったのだと気付かされる。

 そうして、思い返しては繰り返しルリュに恋をし、繰り返せば繰り返すほどルリュを欲した。

 


 元々、エリュシオンという楽園にいた俺は、恋を知らなかった。

 あそこに住む者は皆、争う事もなければ、争いの元となるような事柄に興味はない。

 そのため、恋という最も争いの火種になりそうなものには縁がなく、その楽園から炎ノ神として選ばれた俺は、楽園の理から外れた。

 エリュシオンに住む者達とは違い、地上で生きた経験もない俺にとって、エリュシオンから出てしまえば、神よりも人に近くなるのは当然であった。

 経験を積み重ねていない俺には、何もかもが新鮮であったが、それと同時に酷く寂しかった。

 そんな俺はルリュだけを欲し、ルリュをツガイに望んだ。

 神が望めばどうなるか分かっていながら、地上で生きるルリュを縛りつけてしまったのだ。



 しかし、後悔はない。

 ルリュは俺だけを見てくれ、俺だけを頼ってくれる。

 これほど嬉しいものはないだろう。

 そう思いながらも、日が経つにつれて徐々に強欲になっていく。

 ルリュは、とにかく可愛すぎるのだ。

 俺を試しているのかと思えるほど可愛らしく、甘えたり誘ったりと、必死に求愛をしてくる姿も愛らしい。



「エディ、エディ、もっと」



 口づけをし、ルリュの耳を触れば、ルリュは気持ち良さそうに目を瞑り、俺の手首を甘噛みする。

 ルリュは、発情した場合に甘噛みをしてくる事が多いが、たまに本気で噛んできたりする。

 そんな時は、ルリュを快楽で満たしてあげるが、俺もそろそろ限界であったりはする。

 しかし、ルリュが歩けるようになり、求愛行動をしてくるまでは、手を出さないと決めていた。

 ルリュには、嫌な時に俺を拒めるようにと伝えてあるが、実際に拒まれれば俺は何をするか分からないと、自分でも思っている。



「ルリュ、自分で服を脱いでごらん」



「にゃんで?」



「体を上手く動かせるように、練習しよう。特に、指を動かすのは難しいでしょ?」



 こんなのは、ただの建前。

 本当は、誘ってくれるルリュを見たいから。

 こんな俺を知ったら、ルリュはどんな反応をするだろうか。



 そんな事を思いながらも、ルリュの体に視線をずらすと、ルリュは俺が着せた服を脱ごうとする。

 しかし、ボタンが上手く外せないようで、鳥の鳴き声のように喉を鳴らしながら、重心が前屈みになっていく。

 そして、前屈みになりすぎた結果、コロンと転がり、泣きそうになってしまった。



「んぴゃ……」



 あぁ、可愛い。

 俺無しでは、何もできないルリュが愛おしい。

 地上では、あんなにも自由だったルリュが、俺のせいで不自由になってしまった……どうしようもなく可愛い。



「ごめんね、ルリュ。泣かないで。どこか痛かったかい?」



「ここ……痛い。エディ、にゃおして」



 そう言ったルリュは下半身に手をやり、涙を拭う俺の手を噛んでくる。

 そこで、俺はルリュを押し倒し、ルリュに口づけをして下半身に手を伸ばせば、ルリュは可愛らしい声で鳴き始める。

 涙を流し、手を伸ばして必死に俺を求めてくる姿は、あまりにも可愛く、そして美しかった。

 それから暫く、ルリュを慰めながらも愛でていると、ルリュは気を失ってしまう。

 


 かわいそうに……俺に捕まって、俺のツガイに選ばれて、自由を失った。

 飛べなくしてしまった俺を、ルリュが求める姿は可愛い。

 不自由な場所でも、ルリュは受け入れる。

 そんなルリュだからこそ、俺はルリュの求愛が欲しい。

 ルリュの愛が欲しい。



「愛してるよ、ルリュ。俺に恋をするルリュは、きっと可愛いだろうね。早く……堕ちておいで」



 ルリュを抱えて花畑へと向かい、ルリュを花畑の中心に寝かせる。

 そして口づけをした後、眠るルリュをそのままに、俺はルリュから離れた。

 ルリュが俺を求め、俺を捜す姿を想像するだけで興奮してくる俺は、もはや狂っているのだろう。

 しかし、こればかりはどうしようもないのだ。

 可愛い子ほど虐めたくなり、愛してるからこそ試したくなる。

 人々がするような事を、神である俺がしてしまうのは、それだけ後戻りができないほど、ルリュを愛してしまったからだ。

 誰も俺を止める者などいない。

 ルリュも、いまだ不自由な状態だ。

 だからこそ、今のうちにルリュを俺に依存させ、俺だけがルリュの全てを受け入れ、愛してあげられるのだと、すり込みをする必要があるのだ。



 神々へのお披露目がある、その前に――




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