第4話 揺れる心 ★
※注意書き
この話には性的描写があります。
露骨な表現は避けておりますが、気になる方はスキップいただけますと幸いです。
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朝日が差し込むオフィスに、美咲は軽やかな足取りで入った。昨夜の飲み会での隼人との会話が、まるで甘い香りのように記憶に残っている。
「おはようございます」
挨拶しながら、美咲は自然と微笑んでいた。
デスクに向かい仕事を始めると、ふと視線を感じた。顔を上げると、隼人と目が合う。二人とも一瞬驚いたように目を逸らし、そして再び視線が絡む。思わず微笑みあった瞬間、美咲は頬が熱くなるのを感じた。
その日の午後の打ち合わせ。美咲が資料を手渡そうとした瞬間、隼人の指と触れ合った。
「あ…」
小さな声が漏れる。電流が走ったような感覚に、美咲は動揺を隠せない。隼人も一瞬硬直したように見えた。
会議が終わり、美咲は深いため息をついた。集中できない自分にいら立ちを覚える。
「佐藤さん、大丈夫ですか?」
隼人の声に、美咲は慌てて笑顔を作った。
「はい、ちょっと疲れただけです」
その日は夜遅くまで残業が続いた。オフィスには美咲と隼人だけが残っていた。
「お疲れさまです」
隼人が美咲にコーヒーを差し出した。
「ありがとうございます」
何気ない会話から、二人の話は仕事を離れ、趣味や夢へと広がっていく。隼人の柔らかな笑顔に、美咲は心が温かくなるのを感じた。
「そろそろ帰りましょうか」
隼人の言葉に、美咲は我に返った。
「あ、はい」
エレベーターに乗り込む二人。狭い空間で、隼人の体温を感じる。心臓の鼓動が早くなる。揺れで体が傾いた瞬間、隼人の腕が美咲を支えた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい…」
顔を上げると、隼人の顔が近い。吸い込まれそうな瞳に、美咲は言葉を失う。
ビルを出ると、雨が降り出していた。
「傘、お持ちですか?」
隼人が尋ねる。
「あ、忘れてしまって…」
「じゃあ、僕の傘で一緒に帰りましょう」
隼人の優しさに、美咲は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
狭い傘の下、二人の体が寄り添う。雨音が、美咲の高鳴る鼓動を隠してくれているようだった。
「お気をつけて」
駅で別れる際、隼人が優しく微笑んだ。
「はい、ありがとうございました」
家に帰り着いた美咲は、濡れた服を脱ぎながら、隼人のことを思い出していた。優しい笑顔、温かな声、そして体温…。
鏡に映る自分の姿を見つめながら、美咲は自分の体が熱くなっているのを感じた。心臓は早鐘のように打ち、頬は紅潮している。
「どうして、こんなに……」
美咲は目を閉じ、隼人の顔を思い浮かべた。唇の感触を想像し、思わずため息が漏れる。指先が自然と首筋をなぞり、鎖骨へと移動する。
「隼人さん……」
かすかなつぶやきと共に、美咲の手は胸元へと滑り落ちた。服の上からでも感じる自身の鼓動と熱。
美咲は目を開け、再び鏡に映る自分を見つめた。恥ずかしさと興奮が入り混じる複雑な表情。
「私、こんなに隼人さんのことを……」
言葉にできない感情が、美咲の中で渦巻いていた。仕事仲間としての理性と、女性としての感情の狭間で揺れる心。
美咲はベッドに横たわり、天井を見つめた。明日、また隼人に会える。その想像だけで、体が熱くなる。
「どうしよう……」
戸惑いと期待が入り混じる中、美咲はゆっくりゆっくり目を閉じた。夢の中でも、きっと隼人のことを考えるのだろう。
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