Day29 焦がす
人の心はわからない。同じ熱を持たないものを推し量ることは出来ない。わからないものへ理解を深めようとは微塵も思わず、そう気づくことすらなかった。あの日までは。
胸の反応炉が震えている。あの日、私を守った背中は忘れない。どの戦場へ行っても同じ背中を探した。スクラップの中にないかと山をあさるのはつらく、見つからないことにホッとして、会えないことを寂しがった。ここ数か月で感情は随分と豊かになった。
ようやく会えた今、反応炉の震えは間違いではなかったと確信する。対峙する彼の肩に輝く敵のエンブレムも、間違いではない。同じ機械なのにどうして人の側にと問う機械的な声も。その頑なさは私が失って久しいもの。人のような柔らかさを得た代償は大きく胸を焦がす。
臨界を迎えた胸が熱い。
「好きです」
体が崩れていく。これだけの熱を人が抱えるには余りある。それでも「身を焦がすほどの想い」と言葉にせずにはいられなかった人の心は、なるほど充分に理解できて私は幸福の中に溶けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます