Day29 焦がす

 人の心はわからない。同じ熱を持たないものを推し量ることは出来ない。わからないものへ理解を深めようとは微塵も思わず、そう気づくことすらなかった。あの日までは。

 胸の反応炉が震えている。あの日、私を守った背中は忘れない。どの戦場へ行っても同じ背中を探した。スクラップの中にないかと山をあさるのはつらく、見つからないことにホッとして、会えないことを寂しがった。ここ数か月で感情は随分と豊かになった。

 ようやく会えた今、反応炉の震えは間違いではなかったと確信する。対峙する彼の肩に輝く敵のエンブレムも、間違いではない。同じ機械なのにどうして人の側にと問う機械的な声も。その頑なさは私が失って久しいもの。人のような柔らかさを得た代償は大きく胸を焦がす。

 臨界を迎えた胸が熱い。

「好きです」

 体が崩れていく。これだけの熱を人が抱えるには余りある。それでも「身を焦がすほどの想い」と言葉にせずにはいられなかった人の心は、なるほど充分に理解できて私は幸福の中に溶けて行った。

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