-第二章- 総括菅と睡眠間 -

私は本部に到着後、緊張感に包まれながら統括官室へ向かった。廊下を歩く足音が妙に大きく響き、自分の鼓動が耳に届くようだった。扉の前で深呼吸し、覚悟を決めて叩いた。

「どうぞ」厳しい声が中から聞こえた。

私は緊張した面持ちで部屋に入り、背筋を伸ばして挨拶した。「失礼します。第四部隊ファリア・マークローバスと申します」

統括官は机の向こうから鋭い眼差しで私を見つめていた。その目には怒りと、わずかながら好奇心のようなものが混ざっているように感じた。

「来たか。単刀直入に言うが、何故ジェットパックを使った」統括官の声は冷たく、部屋の空気が一瞬で凍りついたようだった。

私は喉の渇きを感じながらも、できるだけ冷静に答えようと努めた。「はい。それは、今がチャンスではないかと判断したためです」

「チャンスか」統括官は眉をひそめた。「なにがチャンスだった」

「それは、あの時に空襲命令が発令されたためです」私は言葉を選びながら説明を続けた。「敵の態勢が整っていない絶好の機会だと考えました」

統括官は椅子に深く腰掛け、しばらく黙考した。その沈黙は永遠のように感じられた。「そうか。敵が焦っていたタイミングを見たのか」iiiii

「はい」私は力強く頷いた。

統括官は深いため息をつき、「お前の処分はなかったことにしよう」と言った。

私は驚きのあまり、思わず聞き返してしまった。「処分ですか」

「退避命令の発令での進軍は処分対象なんだ。だが、いいだろう」統括官の表情が少し和らいだように見えた。

安堵の気持ちと共に、責任の重さを感じた私は、深々と頭を下げた。「ありがとうございます。今後はより慎重に行動いたします」


統括官との緊張した会話を終え、私は自室へと向かった。廊下を歩きながら、今の会話を振り返り、自分の行動の是非について考えを巡らせていた。

自室のドアを開けると、驚きのあまり足を止めてしまった。部屋の様子が一変していたのだ。以前あったはずの質素な家具は姿を消し、代わりに最新式のテレビやベッドが置かれていた。戸惑いながら部屋に足を踏み入れた時、突然ドアをノックする音が聞こえた。

「失礼いたします。大隊長上司の大将軍様よりマークローバス様に贈り物があります」ドアの向こうから声がした。

「はい。ありがとうございます」私は少し躊躇しながらドアを開け、贈り物を受け取った。

箱を開けると、中にはUSBが入っていた。好奇心に駆られ、すぐさまPCに挿して再生した。統括官の声が流れ始めた。


「ファリア・マークローバス、私のことは覚えているのか分からないが、私の本当の話と君の寝ている間、睡眠間の話をしよう」

その言葉に、私は身を乗り出して聞き入った。

「1412年、君は敵軍DeadNightの兵士に殺された。だが、治療担当者が緊急処置を施したんだ。既に君はなくなっているのにも関わらず」

私は息を呑んだ。自分が死んでいたという事実に、現実感が失われていくのを感じた。

「そして、君は緊急医療室に運ばれた。室温をマイナス100度の状態で、コールドスリープの状態にしたんだ、6世紀も」

6世紀もの時が流れていたという事実に、めまいを覚えた。

「だが、いずれ室温を維持する機構は壊れる。いつかは分からないが、」

突然、録音が中断された。別の声が聞こえた。

「ウォブラシー統括官」

「なんだ..... マークローバス宛のメッセージを録音中だったんだが」

「申し上げございません。マークローバス様が起きました」

「そうか、」

「失礼しました」

「いや、報告をありがとう」

そして再び統括官の声に戻った。

「録音を続けよう。いつかは分かった。起きたんだな。お前が寝ていた間、DVC戦争... DeadNight vs. Crewの戦争が13回あった。第20回DVC戦争でCTIQAは崩壊した。もちろん、その間に君の仲間は数えきれないくらい逝ったが... 次に会うときどういう状態か分からない、私は癌を患っているんだ。いつが最期かは分からないが、そうだ。すまない。すまなかった、マークローバス」

録音が終わり、私は呆然としていた。何故謝っているのか分からなかった。睡眠の間の出来事もよく理解できなかったが、何か重大な事実が隠されているような気がした。

考え込んでいる私のもとに、突然大将軍が訪れた。

「マークローバス、久しぶりに外に出たらどうだ。変わっているぞ」大将軍は優しく微笑んだ。

私は感謝の気持ちを込めて答えた。「ありがとうございます。では、大将軍様はどうしますか」

「いや、遠慮しておこう。帝国幹部と話があるんだ」

「そうですか、ではまた会う時まで」

そう言って、私は外に出た。外の世界は、私の記憶とは大きく異なっていた。最初は気づかなかったが、よく見ると地面には弾の跡が残っており、一部の場所は血に染まっていた。ここで激しい戦闘があったのだろう。

少し離れたところに街が見えた。一見しただけでも、70人以上はいるように思えた。その時、後ろから声をかけられた。

「この街は今、8000万人の人がいるんですよ。楽しんでください」

私は驚きながらも、街の中へと足を踏み入れた。市場には新鮮な果物や肉が並び、近代的なスーパーマーケットもあった。技術の進歩を目の当たりにし、改めて長い時が過ぎたことを実感した。

しかし、その平和な光景もつかの間、突如として警報が鳴り響いた。集合命令だ。私は急いで軍の司令集合本部へと向かった。

そこで告げられた命令は、予想以上に危険なものだった。

「ただいまより、潜入命令を行う。潜入先は、帝国の敷地近くにあるDeadNight偵察戦闘部隊の駐屯地だ」

私は深く息を吸い、新たな使命に向けて心を引き締めた。長い眠りから覚めたばかりだが、この世界で自分の役割を果たす時が来たのだと感じた。未知の危険が待ち受けているかもしれないが、


私は覚悟を決めて任務に向かう準備を始めた。

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