それぞれの十字架
てると
それぞれの十字架
「『夕べがあり、朝があった。』-聖書の創世記の世界観だけど、これは最近言ったように、多分、光から断たれる、または日が没していくようなときにも、必ず朝は来るじゃないかというイメージ操作だろうね。例えば、『後先のことを考えている』と自認する人たちの多くが、ただ不安から、仕事がなくなったらどうしようとか、それを避けるためにはどうしようとか、あれこれ考えてるんだね。創造の光を、つまり『光あれ』を信じることは、そんな後先じゃないわけだ。夜には歌があって、星がある。星のない日でも酒はあり、少なくとも神はすぐ近くにおられる。そうして眠れずにいても、やることは勝手にやっているし、その後はやりたいことをやってれば朝は来るんだ。これが本当の『後先』なんじゃないか?」
「イエスは弟子に『それぞれの十字架を負うてこい』と言ったが、どうだろう。イエス自身は反逆罪で十字架にかかった。そういえば芥川龍之介が『ニーチェの反逆はイエスよりもマリアへの反逆だった』と言っていたけど、マリアという名前はどうもミリアムというヘブライ語で「反逆」という意味らしい。反逆への反逆は、つまり二重否定が肯定になるような生きることの肯定だ。だけど、ニーチェは死んだ。復活もない。そのことで言えば「石工」の息子だったソクラテスも、やってたことは産婆術だった。『アスクレピオスに雄鶏を…』、のちにパウロがアテナイに入ったとき、復活を宣べ伝えた彼はあざ笑われた。『三日で神殿を建て直す』と宣言したイエスは、境内で暴れたあとに死に、そして三日目に蘇った。死を殺すことと死ねば死ぬことは容易だけど、徹底して反逆したのちに死ぬことで生きるようになることは、確かにフィロソフィアの知性では意味不明だ。…アテナイに、もうちょっと。」
それぞれの十字架 てると @aichi_the_east
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